表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/136

第91話 既婚者が欲しいなら結婚して既婚者にしてしまえばいいというゴリ押し

冬馬が出たのは風都の森の中。目の前には大木がそびえ、その大木の上では鳥人族が楽し気に飛び回っている。


「あー!黒い人だ!」


大声を上げ赤い羽根をばたつかせ飛んできたのはこの前のおバカハーピーだった。


「久しぶりだな。えっとー」

「ナナ!ナナの名前はナナだよ!」

『ジョイマンうるさい』

「40過ぎのオッサンと見た目10代の美少女を一緒にしてはいけない」


抱き着かれたりするなら圧倒的後者の方がいい。

前者でも父親感があって一概には嫌とは言えないが。


「黒い人はなにしに来たの!まさか!ナナをお嫁さんにしに来たの!?」

「ははは。それも面白いが残念ながら道化は女なんだ。すまないな」

「でも耳が長い人は男だって」

「幻惑の魔法だ」

「耳が長い人に魔法かけられるなんて凄ーい!」


なんにでも興味を示すあたり小学生と大差はないように感じる。

そしてその好奇心に付き合っていたらいつまで経っても話が進まない。


「鳥人族の中で一番偉い人に会いたい」

「いいよ!来て!」


ナナに肩を鉤爪で掴まれ上へと運ばれていく。

安定感は皆無なものの楽でいい。


「ここが鳥人族の街だよ!」

「街というよりウッドハウスだな」


大木の上にはいくつもの家が建っていてその大きさも大小様々。

晴れている日は枝の間から日の光が差し込み、なんとも気持ちが良さそうな場所である。


「ハハさまは上だよ!」

「ハハ様?」

「そうだよ!鳥人族皆のお母さん!」


それは比喩なのか現実なのか。

そもそも鳥人族は見た目人間ぽい姿はしているが生まれてくるのは卵からだ。

人間や他種族から男を誘拐し鳥人族は交尾をする。

その母親ということは数百といる鳥人族を生んだことなる。

化物だとか性欲お化けだとかそんなもんじゃ断じてない。もっと恐ろしいものの片鱗だ。


「ハハ様!お客さんを連れて来たよ!」

「お客さんなんて珍しい。それもエルフじゃなくて外の人なんて」

「お初にお目にかかる。怪盗のピエロだ」

「鳥人族の母です。名前はないのでハハとでもお呼びください」


なんと清楚そうでゆったりしている人なのだろうか。

それが冬馬の第一印象だった。緑色の髪を風になびかせゆったりとした服装。その上からでも分かるほどの胸部。

鳥人族の特徴とも言える羽が見当たらず姿だけは人間のようにも見える。


「鳥人族の母というのは本当か」

「正確には違いますよ。鳥人族は子育てをしませんので」

「それで母か」

「理解が早くて助かります。生まれた卵は私の元へと運ばれ、私が変わりに育てるんです。だから鳥人族には親子という概念がない。数日もすれば自分が卵を産んだことなど忘れてしまう。それが鳥頭という言葉の所以です」

「なるほど。ならば母親であるお前は鳥人族ではないというわけだな」

「本当に理解が早い人。20年前に来た人達は動揺していたというのに」


20年前に来た人達。

それは恐らく世界中を回っていた慎也達だろう。恐らくルージュを仲間に入れてまだ間もない時。

大勢で動く慎也と決定的な違いは、冬馬1人ということだろう。

もし今場に叶恵やメアがいたら確実に抗議しただろう。


「20年前といいつつその姿ということは、魔族の類か」

「頭の回転が早いんですね」


まあ、妹からのバックアップあっての情報だからな。

褒められて鼻が高いのは八重のほうだろう。


「それで、ピエロはなんの用があって鳥人族の集落を訪れたのですか?」

「少し既婚者が欲しくてな」

「......人の趣味には口は出しませんが堂々と言うものでもないと思いますよ?」

「誤解だ。深海真珠は知っているか」

「深海真珠でしたか。それならナナはどうですか?ピエロに懐いているようですし。女性同士の結婚もあり得ますよ」

「説明が面倒だから省くが道化は男だ」


冬馬がホースの姿になるとハハは目を大きく見開いた。


「よく襲われませんでしたね」

「変装は得意なんでね」

「男だというならナナが適任ですよ。彼女は好奇心旺盛でなんでも興味を持ちますしなにより扱いやすいですし」

「悪だな」

「いいえ、ナナは卵を産んだことはありません」

「ん?俺が望むのは既婚者だぞ?」

「ナナと結婚すればいいんですよ」


ハハも冬馬も笑顔ではあるがその間には剣呑な雰囲気が漂っている。

冬馬は深海真珠のため引いては水種族からの信頼のために既婚者が欲しく、ハハはナナの結婚相手のためにナナを同行させるように言うという。

目的と意見が真っ向から衝突するという地獄。


「馬鹿か?俺が望むのは既に結婚している奴だ」

「鳥人族を利用するのでしたらこちらの言い分も呑んでいただかないと」

「利用するのではない。いいように使おうとしているだけだ」

「それは立派に利用していると言えます。それとも今この場にいる全員に男がいるとバラしますか?」

「俺を脅すとはいい度胸だ」

「脅しではありません。意見を提示しているだけです。ピエロが外でなにをしているのかは知りませんが譲るつもりはありません。鳥人族を使いたいならそちらが譲歩を」

「......」


冬馬は考えた。

鳥人族以外で既婚者を探すか、知り合いの既婚者に協力を仰ぐか。大人しくナナを連れて行くかを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ