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第89話 既婚者が条件で誰も条件不一致という残念なお知らせ

冬馬が連れてこられたのは海の底。

本来なら陽の光すら届かない深海のはずが今は明るく周囲を見渡すことができる。


「ここが深海だ。何もないだろう?」

「そうですね.....もっとこう華やかな場所だと思ってました」

「それは物語の読みすぎだ。実際深海なんてこんなもんだ」

「だからこそレイア様は地上に上がってしまったんだけどね」


冬馬の目の前には水の中の砂漠が広がっていた。

泳ぐ魚も揺れる海藻も見当たらない。

あるのは一面に広がる砂地。


「水種族はいつもなにをして過ごしてるんですか?」

「何って.....素振りとか?」

「あと本を読んだりね」

「.....楽しいんですか?」

「それしかすることがない。ホースが行きたがっていた深海なんてこんなものだ」

「そうです。深海真珠はどこにありますか?」


冬馬は当初よ目的を思い出した。


「深海真珠はその辺の砂でも掘れば見つかる」

「本当ですか!?」


冬馬が海底の砂を掘り起こすと砂の下から貝が出てきた。


「真珠はその中だ」

「.....開かない.....!」

「ティアも意地悪だな」

「どういうことですか.....」


てこの原理でもビクともしない貝。

到底人間の力だけで動くとは考えにくい。


「それは深海真珠てのは特殊でな今のホースでは開かない」

「じゃあどうすれば?」

「深海真珠は水種族の間では結婚指輪なんかに使われる」

「つまり、既婚者じゃなければ開かないんだよ」

「そんな.....結婚なんてしてませんよ.....」


ホースとしての冬馬はひ弱で1人で戦ってきたという設定だし、怪盗としての冬馬は男ではないという設定。

自分で決めた設定に苦しめられるとはこの時になるまで思ってもなかっただろう。


「ティアさん達は結婚は.....」

「してねぇな」「残念ながら」

「ティアさんは?」

「してると思うか?」

「ですよね」


冬馬が肩を落とすと首元を捕まれ顔をあげると笑顔で怒るティアの顔があった。


「なんだですよねって。喧嘩売ってんのか」

「違いますって!お部屋を見た時に男っ気がなかったので一人暮らしかと!」

「.....そうだよ。まだ男は居ない」


海の中で水中適応を切られたら冬馬は生きていけない。

しかも今いるのは深海、水圧や明るさなど適応されて恩恵を受けている部分を大半を占めている。


「そうだ。水中都市があるんですよね?」

「ん。ああ、そうだな」

「いつか行ってみたいんですよね」

「今からじゃダメなのかい?」

「今ホースが行っても周りの海獣の餌になるだけだ」


ティアの言う通り、水中都市の周りには巨大な深海魚が徘徊している。

海獣と呼ばれる彼らは水種族を狙うことはないが、他の種族ならば積極的に襲ってくる。

巨体な分、速度は遅いが速度が遅いのは侵入者側も同じ。

水種族の恩恵があってようやく突破出来る現状。


「水中最強のポセイドンってどこにいるんですか?」

「さあな。って、まさか会いたいとか言うんじゃないだろな」

「流石に恐れ多いのでそこまでは言いませんけど……」

「深海のどこかにいるって話だけど実際に見た者はいないんだよ」

「ただレイア様が言うってことは実在はするって話だ」

「そうですか……」


冬馬は肩を落とした。


『なにが目的?』

(なにか宝とか持ってないかなと)

『存在自体が宝物でしょ。ギリシャ神話のオリュンポス十二神の一柱なんだから』

(たしかにそれはあるな。是非とも話くらいはしてみたいものだ)

『ポセイドンは海獣の一体だから食べられないようにね』

(いざとなったら陸に戻るさ)


「ホース。そろそろ模擬戦を再開するぞ」

「はい。分かりました」

『……ね……』

(なにか言ったかジョーカー)

『なにも言ってないよ?こっちでもなにも観測してないよ』

(そうか)

『なにかあった?』

(声が聞こえた気がした。多分)

『声?こっちにはそんな波形はなかったけど?そこのビッチとイケメン2人の声しかなかったよ?王都に置いてきた女共は料理屋でまた廃棄物量産してるし』

(そうか……気のせいか)


冬馬が水面に上がるその後ろを一つの影が追いかけていた。

熱源反応も生態反応もさせず八重のナビにも引っかからずティアやライド、イクルにも気配を察知されない影。


『あ……だ……い……』

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