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第8話 女王

『王都に到着したんだ』

「ああ、ジョーカーはちゃんと寝てるのか?」

『寝てるよ。ピエロが寝てる間に』

「ならいいんだが。わざわざ道化に合わせる必要はないんだ」

『ピエロには八重が必要だから』

「それはそうだがな......ま、無理をしてないならいい」

『どこから情報を取るの?』

「まずは聞きたいことがあるから王城に向かってる」

『王城って目の前の?』


冬馬の目の前には見上げるほどに大きくそして真っ白な城があった。


「ああ、魔族を忌み嫌う理由があるはずだ」

『おとぎ話がどうのって言ってなかった?』

「言われた言葉全てが真実だとは限らないって説明したばっかだ」

『勝手に入ったら処刑されるかもよ?』

「この大怪盗ピエロを殺せるならそいつは間違いなく最強だろうよ」


冬馬は八重と話ながら屋根伝いに王城へと向かった。

塀を軽々と飛び越え、脚に微弱な電気を流して城の壁を登った。

窓から城の様子を覘くとなにやら騒がしかった。


「陛下はどこへ行かれたのだ!」「ダメです!お部屋にはいらっしゃいません!」「城の周囲を隙間なく埋めろ!陛下を外に出してはならない!」


『女王が失踪?国の一大事じゃない?』

「いや、失踪というより家出だな。いなくなってからそこまで時間が経ってない」

『どうしてそう思うの』

「女王だぞ?そんな国の宝を安易な環境に置くはずがない厳重に守っていたはずだがいなくなった。焦り具合や警備の指示から察するにいなくなってから30分も経っていないということが分かる」

『どうする?殺す?』

「簡単に女を殺そうとするなって。女王というあらゆる戦況を覆す駒は大事にするに決まってるだろうが。悪いが女王の場所を送ってくれ」

『あまり気が進まないけど......はい』

「ありがとうな。八重」

『冬馬お兄ちゃんはずるい』


冬馬は壁伝いに降りていき裏庭へと降り立った。


「ふむ。ここなら大丈夫そうだ」

『頑張って。殺しても責めないよ』

「殺さないから」


冬馬はメイドに変装すると女王が出てくるのを待った。


「よしよし......ここまでくれば大丈夫」

「陛下!なにをしてなさるのですか!」

「げ!見つかった!」


青髪を腰当りまで伸ばし服装は女王の物とは思えないほど古くくたびれていた。だがそれを無視できるほどに目鼻立ちは整っていて特に緑の瞳は宝石のように暗闇でも輝いていた。

女王は引き返そうとするが冬馬に掴まってしまった。


「放して!女王は嫌なの!本当はお兄様がなるはずだったのに!」

「もう子供ではないんですから我がまま言わないでください!」

「あんた達メイドはいつもそう!アタシの我がままだとかもう過ぎた事とか言うけど!アタシにとっては忘れられないことなの!もうほっておいて!」


女王は女王としての立場を嫌がっていて、本来兄がなる国王となるはずだったのになんらかの理由で妹が女王として業務をこなしている。そして、メイドや執事の言葉はかなり冷たい。

これだけ情報が今の会話から見て取れる。つけ入る隙も大きい。


「その話、詳しく聞かせろ」

「誰よあんた」


冬馬は変装を解きいつもの黒い外套姿へと戻った。


「怪盗ピエロ。そう覚えてくれればいい」

「怪盗......アタシを殺しに来たの」

「まさか。少し聞きたいことがあるだけだ」

「聞いたら殺す気ね。いいわ、本当のことは話さないから」

「だから殺さないってのに......」


確かにいきなり現れた不審者を信じろという方が無理な話だ。


『ピエロ、近くにメイドが迫ってる。このままじゃ見つかる』

「分かった」

「ちょっと何を」

「いいから静かにしてろ。見つかるぞ」


女王を秘密の抜け道へと戻し冬馬はゲートで王城の壁を出した。


「陛下!どこにいらっしゃいますか!」「聞こえたら返事をしてくださいませ!」


メイドが行ったことを確認すると冬馬はゲートを閉じた。


「やっぱり殺す気なんだ。だからメイドを遠ざけて......」

「殺すならメイドに変装してる時に殺すだろうが。わざわざ変装を解いてから殺す必要はないだろ」

「ま、いいわ。怪盗ピエロといったかしら?ピエロがアタシになんのよう?」

「魔族を忌み嫌う理由を知りたい」

「ピエロは魔族なの?」

「いや人間だ。旅の途中、魔族と知り合ったが害のある奴らだとは思わなかった。なぜそこまで危険視する」

「アタシ達人間では魔族には勝てないから。とでもいえばいいのかしら?ピエロも魔族の方が魔法適性が優れているのは知っているわね?」

「ああ」

「もし王都で魔族の反乱が起きたら誰も勝てないの。魔族の魔法は特別な魔法。人間では太刀打ちできない」

「なら他の奴らと協力を......」

「それでも結果は同じこと。エルフやドワーフ、獣人と手を取り合った所で魔族は止まらない。なら魔族は王都や主要都市には入れず隔離すれば可能性は下がる」


女王の話を聞き冬馬は溜息をついた。


「そういうお手本みたいなことを聞きたいんじゃない。女王の本心を聞きにきただけだ」

「魔族は滅びればいい。それがアタシの本心よ」

「噓をつくなら目線を固定して指で腕を叩くのもやめて置け。すぐにバレる」

「だからこがアタシの......」

「道化に噓は通じない」

「......そうね。正直魔族を憎んではいないわ」


女王は観念したのか本心を語った。


「憎んでないならなぜ魔族を出入り禁止にする」

「さっき話したことが理由。でもアタシは正直反対」

「ならば撤廃すればいい。女王だろう?」

「確かに撤廃するのは簡単。でも最初に被害に合うのはアタシじゃなくて城下町の人達なの。アタシが狙われてるのに他の人達が傷つくのは嫌」


どうやら女王は優しい心の持ち主のようだ。


「そうか。いいことを聞けた」

「そう。最初に挑発すれば殺されると思ったのに。本当に殺す気がないのね」

「最初にも言っただろ。殺す気はないと」

「魔族を恨まない人間なんて初めて出会ったわ」

「道化も同じだ。いや、道化の他にもう1人いるな。魔族を憎んでいない者が」

「どんな人。会ってみたい」

「今度予定が合えば連れてくるとしよう」


冬馬はゲートを潜った。。

女王の足元にはスプレー缶のようなものが転がっており中から煙が噴射された。


「煙?まだか毒!?......てわけでもなさそう?」

「何事ですか!」

「やば!」

「陛下!見つけましたよ!もう逃がしませんから!」


女王は煙に気がついたメイドに見つかり大人しく部屋へ戻った。

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