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第87話 テンション上がって技名つけてそれが後々黒歴史となるのです

「ホース。なに朝から玄関先で騒いでるんだ」

「素振りしてたら熱くなってしまって......起こしてしまったならすいません」

「いや。朝早く起きて訓練とは昔からの習慣なのであろう」

「まあ、そうですね」

「今日は私の知人に頼んで海での模擬戦をする、準備しておけ」

「はい」


朝食を終わらせると冬馬は一度王都の家へと飛んだ。


「あ、ご主人。早いおかえりっすね」

「いや。一時的に帰って来ただけだ。メア達は」

「メアさん達なら王城に行かれましたよ」

「そうか。なら伝言を頼む」

「わかったすよ。なんて伝えればいいですか?」

「しばらく帰れないと伝えてくれればそれでいい」

「なんでっすか?」

「準備が出来ていなくてな。準備が出来次第戻ってくる。5日ほどで帰れると思う」

「分かったっす」

「頼んだ」


もしメア達がいればパル以上の追求が待っていただろう。

連絡手段はないしゲートなしにカリブに来るまで少なくとも4日はかかる。

その頃には既に冬馬は水中都市にいる。

冬馬がカリブに戻りホースへと着替えティアの家の前まで走った。


『おはよう。今どういう状況?』

「今から水中模擬戦だ。後はログを見てくれ」

『了解』

「遅い!なにをしている!」

「すいません!遅れました!」

「まあ、いい。今から『水中適応』の魔法を付与するが、調子には乗るなよ。付与したとしても私達水種族の方が速い」

「分かってます。元より勝てるなんて思ってませんから」

「うむ」


ティアが冬馬の手に触れるとそこから薄い膜のようなものが広がった。

触れることは出来ず視覚として認識は出来るが触覚として認識できない。


「ほら、飛び込め」

「はい」


冬馬は躊躇なく飛び込むと『水中適応』の真価を見ることになる。


「息が出来る。潮にも流されない。視界も良好!」

「私達水種族だけが付与できる魔法だ。どんなに高位の魔法使いだろうと使うことは出来ない」

「凄いです!自然と身に着けようとして川で溺れかけた時のこと思い出しました」

「なにを無駄なことをしてるんだ。魔法が自然と身に付くわけないだろう」

「そうですよね」

「それより、集中しろ。模擬戦は始まっている」

『後ろから高速に近づく生物反応』


冬馬は刀を後ろに振ると鈍い金属音とともに後ろに吹き飛ばされた。


「足に集中しろ。地面を蹴るイメージだ」


グルグルと回る足元に硬いなにかが出来体を固定することに成功するがそれを見透かしたかのように攻撃が繰り返される。

グルグルと回る視界の中、相手の姿は確認出来ず八重の指示通りに攻撃をいなすしかない。


『地面に足ついたら刀を振りながら蹴って』

「了解」


冬馬は足場を作ると足場を蹴ると同時に刀で払った。


「ぐっ!」

「見切った!」


水中で鈍くなる金属音。

冬馬の目の前には三叉槍を構える水蛇族の姿があった。


『後ろから熱源反応。魔法の反応である可能性』

「っく!」


冬馬は刀を払うと後ろに下がった。

普通の人は立体移動なんてしないが、冬馬は違った。

『結界魔法』という能力を存分に使い、暗殺最強、真紅の暗殺者を翻弄した。

水中での呼吸と視界確保さえできればあとはいつも通り。


「一刀流、鷹飛び」


急降下からの切り裂きは単純な腕力だけではなく、蹴った勢いも加わり威力は絶大となる。


「私達水種族は水中では移動速度が上昇するだけではなく、回復効果までつく。早急に決着をつけないと一方的に削られるだけだぞ」

「分かりました!」


鷹飛びにより一名負傷し復帰まで時間がかかる。

その間に残りの1人と決着をつける必要がある。だが、冬馬の視界内には姿はなかった。


『真下!』

「危ないって!」


真下からの奇襲に間一髪躱すが、もし八重がいなかったら冬馬は今頃串刺しになっていただろう。

飛んできたのは三叉槍。

槍は意思を持っているかのように冬馬の跡を追いかけた。


「もう1人は!いた!」


冬馬から見てましたに弓に槍をつがえる水蛇族の姿が見えた。

足に思いっきり力を入れて急降下。『水中適応』により水圧も水流も無効化されるため息が出来る無重力空間。

力を入れたら入れた分だけ威力が上がる空間。

弓から槍が放たれるがジグザグと不規則に動く冬馬にはかすりもしない。


「兵長斬り!」


冬馬は身体を横向きに回転させると再び放たれる槍を切り裂き射手へと切りかかる。

だが相手は水種族。素早く躱され掠りすらしない。

そうこうしているうちに最初の1人が復活。


再び、2対1へと戻ってしまった。

1人は近接、1人は遠距離からの魔法及び弓槍による攻撃。

電極はしばらく使えないほどの帯電状態。


「ティアさん!離れていてください!」

「なにをする気だ」

「放電です!」

「なに言って......」


ティアの言葉を無視して冬馬は構えに入る。と同時に水蛇族が距離を詰める。


「一刀流奥義、雷熱」


冬馬の中に溜まった電気は放電しながら熱を帯びるが水中のため熱はすぐさまに冷やされてしまう。

だがそれでも構わなかった。

目的は放電される電気。そのままでも自然と放電するが、全身に力を入れることで自然放電とは比にならないほどの電流を生む。

不純物が一切含まれていない真水は電気を通さないが、ここは海。

冬馬から発せられた電気は水中を暴れまわり好き勝手に動き回る。


「一刀流奥義、雷熱の鉤爪」


電気を放電しながら冬馬は急降下。

熱を帯びる身体からは水蒸気が昇りまともに狙いが定められない状態。

下手に動けば電流の餌食、立ち止まれば冬馬の刀の餌食。

というバットエンドルート。


だが人間に溜められる電気にも限りがある。

冬馬は水蛇族に到着する前に意識を飛ばしてしまった。


「ティア!この子どうすんだ!気、失ってんぞ」

「よく頑張ったよ。僕ら水蛇族が苦戦するなんてね」

「あー。取り敢えず私の家に連れ帰る。起きて大丈夫そうなら水中での特訓するからついて来てくれ。ただし、家には入るなよ」

「分かったよ」「彼が心配だからね。行くよ」


『全く。中二病発症した挙句テンション上がって意識飛ばすとか八重わっかんない。今までそんな技名とかつけてこなかったくせに』


聞こえていない冬馬の耳元で八重は呆れからくる溜息をついた。

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