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第84話 冬馬は怪盗から弱々しい冒険少年へとジョブチェンジした▼

「あふ~!」

「家具もそのままらしいので助かりますね」

「これ、結構いい素材使われてますよ。それにこの生地の留め方、ドワーフの職人が作ってます」

「専門職を最大限生かした家具か。買ったらいくらになるんだろうな」

「王都だと金貨30枚ほどっすね」


約300万ほどの家具という恐ろしい単語。


「家も買ったしカリブに戻るぞ......と言いたいところだが、道化にも準備がある。2日後にカリブに戻る。それまでに準備をしておけ」

「また置いてけぼりですか?」

「可能性を追求するだけだ」

「つまりどういうことっすか?」

「可能性の検証。時空魔法の実験?」

「分かりやすく言えば」

「いいけど、アタシ達の誰かが呼んだらすぐに来てよ」

「出来るだけな」


そういうと冬馬はゲートを広げ水都へと飛んだ。


『で、なんの検証からするの?』

「水中戦の練習だ」


冬馬は本来の性別。男の姿になると水着に着替えた。


『肌白』

「八重も変わらんだろうに」

『日焼け止め塗らないと痛いよ?』

「分かってる」


日本より数十段文明が遅れているこの世界に日焼け止めなんて便利なものはない。

あるのはアロエなど軟膏の素材となる植物から採取される液状のなにか。

冬馬はそれを体に塗りたくり海へと入る。

膝、胸、頭と徐々に浸かっていきついには全身が海に沈んだ。

潮の流れがあり、当然呼吸は出来ない。


ゲートで出せるのは地面まで。

足元に広げた所で重力はないしゲート先に水が大量に流れ込むだけ。

つまり、人間単体では水中では無力ということを指していた。


『おかしいね』

「ああ、呼吸が出来るか潮の流れを無視できると思ったんだがな」

『人間の人魚、水蛇と人間の結婚が有り得るのにどうしてだろう』

「可能性があるとしたら水蛇、または人魚となんらかの条件を満たすことで付与されるのかもしれないな」

『浦島太郎の亀と同じね』

「そういうこと」


だが現状、情報がなく検証も出来ない。

情報を集めるために冬馬が訪れたのはカリブにそびえる水城。


「バルトラ」

「む。おお、メアの執事が我になに用だ」

「水中都市に行きたい」

「行くのは構わないが、どうやっていくつもりだ?水蛇族や人魚の力を借りずに」

「行く方法を聞きに来ただけだ。その口ぶりから察するに、水種族の力が必要だと?」

「ああ。彼ら、彼女らとそれなりの信頼関係を築ければ案内してくれる。料金を払えば連れて行ってくれるかもしれないが、水中で魔法を解かれたらこちらはなにも出来ないからな溺死して身ぐるみを剥がれる可能性がある」

「強行突破は可能か」

「無理だな。昔にやったが水圧やら水流やらで一定の深さからは我でも近づくことすら出来なかった」

『見た目に劣らずやんちゃだったんだ。生身で深海に潜るとか正気の沙汰じゃない』

「まあ、人間の世界記録が200メートルだ。それなら百獣の王がそれを越えても違和感ないだろ」


ただ冬馬的には途方に暮れていた。

信頼関係を築くなど冬馬がいままで必要ないとして切り捨てて来たことだった。

信頼が出来ないなら殺せばいいという過激な発想を持つ冬馬からすれば面倒なことこの上なかった。

しかもゲートによる強行突破は不可能。水圧や水流など自然が相手ともなれば、現代兵器は役に立たない。


「そもそも水種族とどうやって知り合えばいい」

「それはアレだ。ギルドで冒険者登録をし一緒に旅をしていくうちにだな」

「お前さっき水中で殺される云々言ってただろ」

「正式な依頼ともなれば下手に殺されないさ。受ける仕事によっては相方が死んだら報酬なしという仕事もあるからな」

「......仕方ない。やるか」

「頑張れ。そうだ。丁度いい、我も気になっていたことを聞こう」

「1つだけだ」

「なぜ男が女の恰好をしている」

「道化は元々女だ」

「気配で分かる」

「......男の姿だと色々面倒ごとが起こるからだ。道化を除けば全員女、そんな中に男がいてみろ。やっかみを受けるのは目に見えているし女の姿をしていれば大抵の馬鹿は油断する」

「メア達は知っているのか」

「知らない。道化だ出せる情報をここまで。安心しろ、女王他女には手を出さない」


南條叶恵という刑事がいる間は冬馬は女の姿で過ごすしかない。

例え男の姿になるとしてもそれは変装。本来の黒髪黒目の青年になることはないだろう。

冬馬はゲートでギルドまで飛ぶと冒険者の服装に着替えた。


『その初心者丸出しの装備はなに』

「チェストプレートに籠手、帯剣ようのベルトだがおかしいか?」

『なんか。弱々しい』

「弱くていいんだ。弱々しい男の子を演じるべきときなんだ」

『おねショタ狙ってんじゃねぇよ』

「八重さん怖ーい」


冬馬の姿は茶髪に真ん丸とした目が特徴の少年。多く見積もっても15歳辺り。

装備も貧弱そのもの。


「あ、あの!すいません!」

「どうした坊や」

「えっと......装備の素材に深海真珠が必要で。その仕事を見つけに来ました!」

「深海真珠だと水種族との共闘になるが、共闘経験は」

「ないです!」

「そうか......ならこっちで登録してある中でも教えることが出来る人物を紹介しよう」

「ありがとうございます!」


冬馬は健気にお辞儀した。

待つこと10分。木製の車いすのようなものに乗った女の人が冬馬に声をかけた。

黒髪で目つきはかなりキツイ印象。

黒いローブのようなものを羽織っており足元にはヒレのようなものも見えた。


「貴様か。私に教えを乞いたいというのは」

「はい!ホース・ウィンターです!」

『あははははは!名前もうちょいどうにかならなかったの!お腹痛い!あはははは!ウィンター()ホース()!』


黙れ愚妹。


「ティアだ。ホース、帯剣しているがどれほど扱える。私に切りかかって来い」

「え、でも......」

「いいから早く!」

「は、はい!」


冬馬は剣を両手で構えるとその場から飛び上がりティアに向かって切りつけた。

ティアは車いすのような乗り物で地上を自由には動けない。

動けない相手に向かっては最有効だのはずなのだ。


「貴様、私を馬鹿にしているのか」

「いえ!滅相もない!」

「なら真面目にやれ!もし今のが本気とか言ったら海に沈めるぞ」

『まさか異世界で海に沈めるなんて聞けるとは思わなかった』

「い、今のが本気です」

「おい。私は降りる。こんな奴を海に連れて行ってもすぐに死ぬ。海は陸と勝手が違うんだ」

「そう言わずに。上級者しか受け付けないだとほとんど仕事ないぞ」

「ならコイツを魚の餌にでもすればいいのか」

「ひねくれものめ。ま、今回はティアしかいないから頼んだ」


ギルドのオッサンはそれだけ言うと冬馬とティアを残し仕事へ戻ってしまった。

スタスタと歩くオッサンの後ろ姿を恨めしく見ているかと思うといきなり鋭い眼光を冬馬に向けた。

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