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第79話 姿を隠す敵とかどうやって相手しろというんだ。

獣国の王都、【カリブ】に向かう為に馬車を走らせる。

デコボコした道を馬車の車輪が通り、その度に馬車の籠が揺れる。

辺りは気持ちがいいほどの大平原に地平線ギリギリの所には海が見える。空は快晴。涼し気なそよ風が冬馬の外套の裾を揺らした。


『ここ最近激務だったからね。眠らされる前に休んでおくといいよ』

「ああ、実に気持ちがいい。なんと旅日和なのだろうか」


『宝』を求め奔走するのもいいが、こうして何を盗もうか考えながらゆっくりと旅をするのも異世界旅の醍醐味と言えるだろう。

カリブは王国の王都とは違い、海沿いにある。港町から真っ直ぐ海沿いに北上していけばカリブに着くことが出来る。

八重情報によれば獣国の王都は水上にあるという。


『ま、人魚とかもいるらしいからその為に遷都しただけだと思う』

「逆に言えば、人魚のためだけに遷都するとは、あの豪快王の考えることは分からないな」

『遷都するのにどれだけの労力が必要か。自宅警備員からすると寒気がするよ』


人だけ動けばいいという問題でもない遷都は莫大な費用と労力を消費する。

国の全ての人の生活を変えると言っても過言ではない事を決断できる王は王として相応しいだろう。


「優柔不断な王様じゃなくてよかったな」

『変態娘に襲われてそう』


妹と会話をしながら馬車を進ませると分かれ道が現れた。


『左は海に出る道、右は森を突っ切る道。右の道は生活路っぽくて馬車が通るには向いてないけど広さはあるから通れないことはないよ』

「どちらが王都に速くつく」

『時間はそこまで変わらない。でも盗賊とかに襲われたらそれだけ時間がかかる』

「ならば左の道だ。アシュ。海に出る」

「分かった」


馬を左の道へ向かせすぐに海岸付近の街道に出ることが出来た。


「潮風凄いな」

「潮の匂いがしますね」

「目が痛いっすよ~」


たしかに潮風が目に入ると結構痛い。目を擦ってもやわらがないんだから耐えるか風が当たらない場所に移動するしかない。

ま、狭い馬車内ではそこまで大差はないと思うが。


「ピエロ。情報が欲しいって言ってたけどなんの情報が欲しいの?」

「勿論『宝』だ」

「まだなにか欲しいんすか?」

「当然」

「新しい駒とか?」

「駒は欲しいことには欲しいが特に意味がない人員としてだな。単なる人手だ」

「それならいらないんじゃない?役割ないと気負いしちゃうかもしれないし」


確かに、周りが仕事をしていている時に自分だけなんにもなかったら不安になる人も多いだろう。

冬馬は自分の仕事だけをこなすタイプなので周りがどれだけ忙しそうに働いていても仕事を終わらせて定時で帰るタイプなためあまりメアが言う意味が分からなかった。


「そんなもんか?」

「ピエロは自分の仕事だけ終わらせてさっさとくつろいでそう」

「当然だ。なぜ人の仕事までやらなきゃいけないのか。忙しそうに動くということは自分の能力を分かっていない証拠だ。許容量を超えているということだ」


勿論、それをやりがいとするなら多いに結構。だがそれを人にまで押し付けるのは間違っている。

共有できる友を見つけられたら企業一素晴らしい社畜の出来上がりだ。


「兎に角、役割が出来るまでは新しい駒の加入は禁止にするわ」

「なんの権限があって言っている」

「駒としての配慮ですよ。役割がないのは可愛そうですから」

「......欲しい駒があれば奪うまでよ」

「まったく......」

「大丈夫だよ、もし役割がなくてもメアが作ればいいんだよ」

「そうっすよ、駒として先輩なんっすから」

「そうね......役割がない子が入って来たらそうしましょうか」


さっきも言ったが特にこれといって欲しい駒はない。

攻撃はパルと叶恵がいるし防御はメアが、補助はアシュ。と駒だけでも一通り戦えるようにはなっている。

それでも欲しいというならば、八重が情報を盗れない制限された区画から情報を盗る役割くらいだ。

必須というわけではない。


「駒の他にも欲しい宝はある」

「例えば?」

「魔法的な力のない宝石でもそれが宝であれば一度は見て置きたい。それだけだ」

「獣国はそういう装飾品とかの文化がないから当てに出来ないわよ?」

「獣国は地下帝国と違って、装飾というよりは自身を強化するための魔道具として使うっすよ」

「ならばその魔道具とやらも見てみようではないか」


どんな状況でも魔道具や装飾品は大事。

ガ性なくて泣きを見ることになっても笑えないからな。


そんなのんびりと旅をする冬馬達にゆっくりと近づく船が一隻。


『気を付けて。黄色だから警戒してるよ』

「了解」


冬馬が海に目を向けると一隻のボロボロの漁船が不時着していた。

だが人の姿は見えず馬車の上から辺りを探ると街道のど真ん中で倒れている人がいた。


「大丈夫ですか?」


叶恵が馬車から折り声をかけた。

だが気を失っているのか返答がない。


「ピエロ。返事がありません」

「ああ、気を失っているんだろう。そして、気を失わせた元凶が近くにいる」


さっきから近くを索敵しても人影どころか動物の影すら見えない。

姿は見えないがそこにはいる。

八重から送られる生体反応には海上に多く黄色点が存在している。

だが海をいくら見ても広い大海原が続くばかり。


「きゃあ!」


冬馬が海を注視している隙に叶恵が空中浮遊を覚えていた。


「なにをしている」

「分からないんです!なんか、手首と足首に巻き付いている感覚が付きまとっていて......」

「アシュ。魔封じの付与をこの弾に頼む」

「分かった」


アシュに付与してもらった弾丸を海目掛けて発砲。

するとバリン!というガラスのようなものが割れる音と共に巨大な船が姿を現した。


「蜥蜴族がよく使うカモフラージュよ。だけど!見えている鎖に掴まるほど平和ボケしてないのよ!」

「うわわ!無数に飛んできましたよ!」

「勢いが足りないわよ!」

「頼もし~」


向かう鎖を自慢の防御で防ぐメアは得意気に胸を張った。

だが王以外が慢心すると大抵碌な事がない。


「なっ!放して!」


後ろから姿を隠して近づいた蜥蜴族に捕まってしまった。


「透明が厄介だ。攻撃しようにも正確な場所が分からない」

「ピエロ。逃げて?」

「駒を捨てろと?」

「違う。また拾って?」


相手が透明化し、叶恵とメアが人質となり叶恵を救出に向かったパルも戦闘不能。

メアの防御とパルの攻撃なしに透明化した敵を相手するのは分が悪すぎる。


「待っていろ。すぐに盗り返しに行こう」

「うん」


冬馬がゲートで避けると変わりにアシュが捕まった。

敵の数は陸に10人、船の上に30人はいる。

総勢40人。冬馬1人でどうにかなる数ではあるが、人質がいる現状はスピードを求める必要がある。

数では劣るが精鋭を連れて来よう。


冬馬はゲートを火都につなげると馬車を残し姿を消した。

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