第69話 世界最大級の親子の遊び
お知らせ。
pixivにてこの小説が完結した次に投稿する小説のプロトタイプを投稿しています。
プロトタイプなので1話が短かったり、内容がまとまっているわけではありませんが「ふーん。こんなん書くんだ」程度に思って貰えれば幸いです。
小説のタイトルは
『保健室から始まる恋というのもいいと思う。』
です。
作者名が
『チョコ』
ではなく
『PIERROT』
になっています。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=12519358
もし「暇だし読むよ」という方がいらっしゃいましたらよろしくお願いいたします。
獣国の港街の上空で2人の怪盗が追いかけっこをしていた。
1人が逃げるだけに対し、もう1人は殺意マシマシで銃を乱射しそれをゲートを使って弾幕を張っていた。
「逃がすかクソ親父が!」
「当たってないぞー」
「殺す!」
今度は銃弾だけじゃなく剣やら水やらが出て来た。
「ちょっと!もっと父親には優しく!」
「だったら父親らしいことしてみろよ!」
「家族を増やしたじゃないか!」
「母さんに謝れ!」
家族を増やしても母親が違うという面倒なことをしてくれたら誰でも素直に喜べない。
喜ぶどころかかなり気まずい。
「ちょっと!本当に当たるって!」
「こっちは当てる気でいるんだよ!」
慎也が屋敷に近づけば近づくほど弾幕は濃くなり中々屋敷に近づけないでいた。
もし慎也が時空魔法を使えなかったら今頃この世にはいないだろう。
それくらい激しい攻撃だった。
「冬馬!お父さんを舐めないことだ!魔法がある世界で通常攻撃は通じない!」
慎也も黙っているだけではない。
冬馬の攻撃を攻撃で相殺し、メアが得意とする防御も軽々とやってのけた。
「どうだ!魔力が少ない冬馬にはこの防御を突破することなんてできなかろう!」
それが冬馬の対抗心に火をつけた。
たしかに冬馬は魔力が少なく、自分でまともに魔法を使うことが出来ない。
だが冬馬には時空魔法の上位互換である結界魔法がある。結界魔法も例によって使い方によってはかなり化ける。
「ならば見せてやる。俺の最高火力を!」
冬馬は自分の父親に向けて魔族の一撃を放った。
メアを盗むときに受けたルイの一撃を。
「ちょっとー!そんなの聞いてないんですけど!」
「まだだ」
冬馬はそれを自分のゲートで飲み込み、結界魔法として吐き出した。
真紅の暗殺者曰く、世界と世界を結ぶ魔法だと言う。ならば世界規模の魔法にすることも可能だと言える。
世界規模の魔法なんて放ったらこの辺り一帯どころかこの世界がどうなるか分からない。
だから冬馬は自分の魔力で魔法威力をのみ込み、減衰させ放った。
元は世界規模の魔法。そんなものが魔法の防御で防げるわけもなくまた、時空魔法という低レベル魔法では飲み込むことが出来ない。
「チート使わないでくださーい!審判!ヘルプミー!」
「あの世で神にヘルプしてもらえクソ親父が!」
冬馬が放った一撃は慎也の防御壁を一撃と粉砕し慎也を屋敷の方へと吹き飛ばした。
吹き飛ばしたの2回中央の応接室。
「きゃあ!なんですか!」
「や、やあお嬢さん......また会ったね......」
「狐さん!」
「危ないからこっちに来ない方がいい!」
「え?」
叶恵が立ち止まった瞬間、またしても外から高速でなにかが慎也に突っ込んだ。
壁が破壊され、土煙が舞った。
そんな土煙の中でも人影は確認できた。
黒い外套にピエロ面。
慎也に突っ込んだのは叶恵がよく知る人物だった。
「ピエロ!なぜ狐さんと戦っているんですか!?」
「その狐が道化の敵だからだ」
「そんな狐さんはいい人です!」
「ほ、ほら。お嬢さんもこう言ってるしいい加減止めないか、とう......ふごっ!」
冬馬は慎也を蹴り上げるとその心臓に剣を突き刺した。
「あ」
「死なないか」
「まあ時空魔法使えるしー?次あった時は美少女パーティ同士の対決だ!それまで童貞捨て......」
「とっとと失せろ」
なんでこう正体がバレるようなことを言うのだろうか。
「あのピエロ?ピエロは狐さんと知り合いなのですか?」
「知らん。あんな化け狐など知らん」
死んでもあれが自分の父親とは認めたくない冬馬だった。
「化け狐のことはいいから帰るぞ」
「でも写真が」
「これのことか」
冬馬が持つのは古びて色が抜け落ちた写真。
「いつの間に盗ったんですか?」
「ちょっと揉み合った時にな、抜き取った」
正確には慎也がパーティに入れてくれと冬馬の肩を掴んだ時である。
「ジャックへの説明は後回し、今はアシュ達と合流する」
「分かりました」
冬馬はゲートを開くと置いてきたアシュ達の元へと戻った。
「あ、戻って来た」
「なんだ」
「凄い空中戦だった!僕もあんな風に戦いたい」
「補助だけでも工夫さえすれば可能性はある、一番の課題は浮き続けることだ」
「戦ってたのってあの狐面の人っすか?」
「そうだ」
「強かったすか」
「基本的には弱いが生命力はトップレベルで強い」
魔族の一撃を強化した攻撃を受けたのにもかかわらず美少女パーティを作るなどと言い放つ元気はあったのだ。
致命傷どころかかすり傷も負っていないだろう。
「この前休んだばかりなのにもう疲れた」
「珍しいすね、ご主人が疲れたなんて言うって」
「疲れもする。化け狐め」
塔の上の出来事は誰も知らない、知っているのは冬馬と慎也と八重の犬神家の人間だけである。
「写真は盗り返せた?」
「ああ、この通り」
「ならよかったじゃないっすか。獣国の国王と一戦交えなくて済んだんですから」
「まだバルトラと殺し合いをした方が幾分か楽だ」
「どんだけあの狐面、強いのよ」
ああ、強いとも。生命力という意味ではなく、冬馬より先に怪盗を始め冬馬より先にこの世界に来ている。つまり、冬馬より戦いを知っているのだ。
本人は飄々としているが、冬馬と慎也が本気でやりあったら世界が滅ぶかもしれない。
それくらい慎也は強い。
「次会ったら絶対に殺す」
「ピエロが殺意を見せるなんて、ライバルって感じ?」
「あ?」
「なんでもないわよ」
いくら温厚な冬馬でもあの遊び人と一緒にされるのは嫌なようだ。