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第63話 美女に添い寝されるなら催眠術で眠ってもいいかもしれない。

獣国の港町で宿をとった冬馬は誰もいない部屋で横になっていた。

口では休む暇はないと言いつつ体は限界を迎えていた。


「情けないな.....怪盗ともあろう物が」

『怪盗も人間だもの仕方ないよ』


疲れた冬馬に寄り添うのは日本から冬馬をサポートする八重だけである。


『ココ最近、働きすぎ。情報収集に事後処理に女どもの食費とか稼いでるんだもん。企業ならブラックすぎて労働組合が黙ってないレベル』

「仕方ない事だ。道化が望んで作った環境だ。それに、食い扶持を稼ぐと言ってもメアはリーネから多少の援助はされてるしパルは鍛冶師としてしっかり弾丸の供給をしている。してないのは叶恵だけだ」

『あのロリもしてない』


確かにアシュもしてないがアシュにも仕事がある。が、本人が仕事と認知していないだけの話。


「アシュは道化を癒すという大役が.....」

『じゃあ聞くね。八重とあのロリどっちが大事?』

「どっちも大『どっちかと言ったら?』」


疲れて寝ている人に対してする会話ではない。


「八重に決まってる」


こうでも言わないと鼓膜が死ぬ。


『そっかーやっぱりそうだよねー』


ルンルンだった八重は画面に映る青点が冬馬に接近している事に気が付き声音を戻した。


『お花畑刑事が接近中』

「了解」

「ピエロ?居ますか?」

「なんだ。準備に向かったんじゃなかったのか」

「そうなんですけど.....ピエロの事が少し気になって.....戻ってきました」


こうも仲間らしいことを言われるとこいつが刑事で敵だということを忘れそうだ。


「気にすることは無い。道化はこの通りだ」

「でも様子が.....道化の心配より自分の心配をしろ。相手は国王。着いて来るからにはしっかりと仕事しろ」

「それは分かってますけど、ピエロが.....船に乗った時からフラフラしてますし攻撃受けたのだって疲れてるからですよね」

「そんな訳ないだろう」

「分かるんですよ。感覚の話になりますけど。誰がどの程度疲れてるかとかどうすれば良くなるとかそういった事が分かるんです.....分かるんですよ.....」


そう言いながら叶恵は目に涙を溜めた。


「ピエロが疲れているのは私達の為に動いてるからですよね?」

「そうかもしれないな。駒さえ無ければここまで動くこともなかっただろう。だがそれがどうした」

「え?」

「疲れていようとなんだろうとここは異世界だ。休んでいる暇なんてないのはお前も分かっているだろ」


何もかもの知識がない場所で生活するということはそういう事だ。

もし冬馬か叶恵にチートレベルの才能だったり能力があれば楽することも可能だろう。

だが、現実は使い方次第で化ける冬馬のゲート。

現最強格の叶恵の魔法(ただし本人の知識不足でまともに使えない)という微妙なライン。

何処ぞのかずまさんよりは苦しくないものの決して楽出来る訳じゃない。

誰かが動かなければ楽は出来ない。その結果、一番情報を持ち柔軟に動ける冬馬が動いたというだけの話。


「分かったならメア達の所に戻れ。今日を逃したらあと1日しかないんだ。道化は情報を集めてくる」

「ダメです」


ゲートを開こうとした冬馬は違和感を覚えた。いつもなら簡単に開くゲートが開かないのだ。

それどころか魔法の類が使えなくなっていた。


『厄介だね。その周囲一帯は魔法を封じられてるよ。あの刑事の無意識な魔法でね』

「ここまで厄介とは」


叶恵の尋常じゃない魔力量がもたらす影響は凄まじい。

叶恵が強く願ったり考えたりするだけで現実となる。水都での魔人戦のように灼熱の地を一瞬にして極寒の地にすることだって可能なのだ。

故に、叶恵が魔法を使って欲しくないと強く願えば周囲一帯は魔法禁止エリアへと早替わり。


「ダメです。しっかり休んでください。今冬馬が倒れたらこの準備も無駄になるんです」

「離せ。情報がなければ道化も動けない」

「ダメです。寝ててください」

『催眠術の類。大人しく変装して寝るしかないよ』

「クソが」


叶恵の魔法により冬馬はベットへと倒れ込んだ。


「やっぱり疲れてるんじゃないですか」

『無意識な催眠術こわ』


叶恵は冬馬が寝ているベットに腰をかけると冬馬と添い寝する形でベットへと横になった。

黒い外套に身を包み唯一肌が見えるのは首筋だけで顔には覆うほどのピエロ面が付いている。


叶恵はピエロの面を外し側の机に置いた。

同性の叶恵ですら見惚れるほどの美女。長いまつ毛に絹糸のように輝く金髪は女という証明するには十分であり誰も疑いはしないだろう。

叶恵が冬馬の頭に手を置くとゆっくりと金髪を撫でた。


「可愛いのになんで隠すんでしょうか……照れ屋なのでしょうか」


変装だから普段はピエロ面をしているのだが今の叶恵の頭ではそこまで行き着けないらしい。

ひとしきり撫でた叶恵は今度は冬馬の頭を自分の胸元まで引き寄せ抱きしめた。その光景は母のようであり冬馬が男の姿であれば恋人のようにも見える。


気持ち良さそうに熟睡する冬馬の横で叶恵もまた目を閉じ夢の世界へと旅立って言った。

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