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第61話 「バカ!本当にバカ!墓場に連れてくるなら分断なんてされるんじゃないわよ!バカピエロ!」

大剣ゾンビが通り過ぎたのを確認したアシュは震えるメアの腕を引っ張り走った。


「ちょっと!走って大丈夫なの!?」

「大丈夫なはず。パルが引き付けてくれる!」


チラリと後ろを見ればパルがゾンビの大剣を押さえつけているところだった。


「大丈夫っす!強化なくてもこれくらいなら自分1人でいけるっすよ!」

「僕達が離れたら突き飛ばしてパルも追いかけて!」

「分かったっす!」


アシュが走り出口を探した。

いくつかの角を曲がり、ようやく出口を発見した。


「次が14階層……地上まではまだ遠いわね」

「でも行くしか……っ!」


アシュはメアを後ろに突き飛ばすと空いていた腕を強化して防御をとった。

ガギンッ!という鈍い音と共にアシュはメアのところまで吹き飛ばされた。


「なんで……パルが相手したはずなのに」


アシュの目の前には大剣を振り下ろしたゾンビがいた。


「アシュさん!そいつはさっきのはとは別個体っす!持ってるのはドワーフの職人が仕立てた一級品!下手に受けると死んじゃうっすよ!」

「アシュ!大丈夫!?」

「大丈夫……腕が痺れるだけだから……」


アシュの腕は強化のお陰で痺れるだけで済んでいるが少しでも強化が遅れていたら今アシュの腕は無くなっている。

その事実がアシュの気持ちを削いでいった。


「侵入者を発見した。すぐさま排除する」

「アシュ!逃げなきゃ!死んじゃうから!」


メアがアシュの腕を懸命に引っ張るがアシュの足は怯えて動かない。

強化をすれば数発は防げるだろうが、腕が使い物にならなくなるのはライトの魔法で鈍く照らされる大剣を見れば明らかだった。


「王の墓場に入ったことを悔め」


振り下ろされる大剣を腕ではなく魔法で受けた。


「バカ!本当にバカ!墓場に連れてくるなら分断なんてされるんじゃないわよ!バカピエロ!」

「抗うか愚か者め」


ゾンビはメアを押し潰さんと力をかける。

元々が強いのかそれともこの場の特殊な効果なのかゾンビの力は強くメアは持ち堪えるのでギリギリだった。

その時だ。

バァン!という轟音と共にゾンビは後ろに吹き飛んだ。


「駒の分際で主人に向かってバカとは……危うく撃ち殺すところだったぞ。メア」


アシュとメアが振り返るともう馴染み深くなった道化の面の人物があった。


「遅い!女王を放置するなんていい度胸じゃない!」

「道化をバカ呼ばわりとはいい度胸だな」

「そんなこと言ってる場合じゃないっすよ!前!前!」


冬馬の後ろからパルが慌てて指を指すとゾンビが首がない状態で起き上がっていた。


「侵入者が……王の墓場を荒らすなど……許される行為ではない!」

「腐った死体がなにを言う。大人しく成仏しろ」

「えいっ!」


またしても冬馬の後ろから叶恵がなにかをゾンビに投げつけた。

叶恵が投げつけたナニかは粉状のもので冬馬の前にいるアシュやメアにも降りかかった。


「なにこれ」

「しょっぱい」

「塩?」


日本では元来から塩には清める効果があるとされている。

不吉なものに対して塩を巻いたり、部屋の隅に盛り塩をしたりと使い方は様々だが塩ということに変わりはない。

だがしかしだ。

清めに使われる塩はそれ自体も清められてなければいけない。

だから家にある食塩をリビング巻いたところで母親に怒られるのがせいぜい。効果はない。

そもそも、塩で清められるかどうかも怪しいのだ。


だがそれは日本でのお話。

ここは異世界。かの有名なマリーアントワネットも言っている。


「清めた塩がないならその場で作ればいいじゃない」と。


「貴様!一体……なにをした!」

「塩を振りかけただけだ。魔法を込めた散弾をな」


叶恵の魔力を持ってすれば塩に浄化系の魔法を付与することも容易い。

ゾンビは散々苦しんだ挙句灰となっって消えていった。


「さて、帰るとしよう」

「え、宝は?」

「どうやら先客がいたようで宝はないようだ」

「なにそれ……ただアタシ達が怖がっただけじゃない」

「まあ、強いて言うならメアの泣き顔がお宝だな」

「こんの……変態!泥棒!ピエロ!」

「ははは!なんとでも言え。道化に罵詈雑言は効かぬわ!」


冬馬はその場にゲートを出すと叶恵達を先に入れると一旦ゲートを閉じた。


「襲わないのか。守護兵」


冬馬の後ろにはパルが突き飛ばしたゾンビが剣を背負い立っていた。

だが戦意は見られずただ突っ立っているだけである。


「……宝は消えた。守るものはない」

「さっきの奴は問答無用で道化の駒を襲ったが?」

「なにを宝とするかは人それぞれ。我は真なる宝を宝とした」

「なるほど。お前が生きていたら一緒に酒でも飲み合う良い仲になれただろうよ」

「我は宝が戻ってくるのを骸のまま待ち続けるのみ」


冬馬はニヤリと笑うとゾンビに向けて言った。


「ならばこの怪盗ピエロがお前の依頼を受けよう。報酬は……そうだな……お前が宝と思わない宝だ」

「……よかろう」

「話が早い。では、1週間以内にお届けしよう」


ゾンビはコクリと頷くと二本の剣をカチャカチャとならし巡回を再開した。

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