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第60話 どうすればいいか分からなくなった時は、自分が尊敬する人物ならどうするか考えよう。

(今何階層?)

(今は......15層すね)

(あ、そういえば。ピエロと入れ違いになったらどうするの?ピエロは最短で次の階への階段を見つけるだろけどアタシ達は闇雲に歩いてようやく見つけるわよね?)

(大丈夫。ピエロは人の位置が分かるらしいから)

(うん。洞窟行った時に暗闇からの奇襲も防いでた)


猫の獣人など人によっては殺気に鋭敏な人もいる。

殺気を向けられただけで相手の場所が分かったり攻撃の瞬間が分かったりするのだ。

だがそれは自分に向けられた気配に対してであり、第三者に向けられたものは分からない。

だからアメリアはジジが向ける冬馬への殺気が分からなかったのである。


(そうだといいけど。でも向こうには叶恵がいるものね。万が一にも死んじゃうなんてことないわよね)

(僕が死ぬまで生きてくれるとピエロは言った)

(まあ、エルフの血が混ざってるなら純血の人間より生きるとは思うけど......何千年生きる魔族についていけるかしらね)

(ご主人ならあの手この手でやりそうっすよね)


「たしかに」と根拠もないのに納得するのは冬馬と長くいたからなのかそれとも根拠なき確信があるのかのどちらかである。


見つけた階段を上がり、敵の様子を探る。


「敵の気配がない?」

「ないってことあるの?」

「自然界ではあるけど人工物の中であるっていうのは......少し不自然」

「もしかしたらご主人が掃討したのかもしれないっすね」

「でも戦闘後らしき痕跡はないしアシュの気配にもピエロの気配はないんでしょ?」

「ない」


戦闘跡がないのに敵がいないという不可解な現象の理由をメア達はすぐに知ることになる。

チラリとアシュが路地を覗くと先ほど下の階層にいた大剣装備のゾンビの姿があった。


「侵入者......排除する。排除する!」

(なんかさっきと言ってること違くない?)

(知能を持ち始めてる?」

(大変すよ!早くご主人に知らせないと!)

(どうやってよ!)

(二人とも落ち着いて。ピエロならこういう時どうするか考えて)


怪盗と言えどピエロ単体なら非力なのでとる行動は限られそれらはメア達にも出来るものである可能性が高い。

なにをするかで頭を悩ませるメアとパルだがパっとは思い浮かばなかった。


(ピエロなら探りつつ攻撃なら攻撃、逃走なら逃走する。つまり、相手を探って逃げる)

(そうね。未知数の敵は逃げるに限るわ)

(分かりました。慎重に行きましょう)


アシュが確認しゆっくり忍び足で背後を通過する様はメタルギ〇ソリッド。出来れば段ボールを被りながらやって欲しいレベルのステルスミッションを遂行しようとしている。


なんとか大剣ゾンビの階層は突破したものの次の階層にも同じようなゾンビが一体徘徊するだけだった。

その次の階も、その次も階もだ。


(どうなってるの!どの階層でもアイツがいるんだけど!)

(自分たちに恨みでもあるんですかね)

(あってもおかしくない。僕たちは墓荒しとやってることは同じだから)

(なにも盗ってないわよ!)

(盗ってなくても人の墓に入ってる時点で十分墓荒しだよ)


だが大剣ゾンビがなぜ各階層にいてメア達を追いかけるようにして階層を更新してくるのかそれが分からないことにはピエロとの合流は不可能に近かった。

というのも、


「どこだ!気配は感じているぞ!女の匂いがする!」


15階層の時より知能が上がっており音を出さなくても気配で探されるという状況。

今は階段にいるため管轄外だが一歩フロアに踏み出せばたちまち襲い掛かってくること間違いなしだった。


(でもここを突破しないことにはピエロには会えないわよ)

(それはそうっすけど......どうやって突破するつもりっすか?)

(それはあれよ、気合?)

(気合で突貫して一生ピエロに会えなくなってもいいの?)

(それは嫌よ)

(ならもう少し安全な道を考えて)


このまま階段でじっとしているのも手ではあるが、絶対に安全とは限らない。

いつかは見つかって殺されるかもしれない。

各々使える特技が違うのだからバラバラに動くのは危険である。

かと言って3人で動けば見つかる確率が倍増し生存は著しく低くなる。


どれを選ぼうと絶望的なのは変わらなかった。

故にアシュは考えた。

自分が尊敬する怪盗ならばどういった行動をするか。

ゲートを使わない場合の冬馬の行動をアシュは脳内で考えた。


無理だ。僕の力じゃ無理だ。


体格も戦場での経験も武装すらも違うアシュに出来ることなんて限られていた。

そう、限られているだけである。


「メアは僕の後ろに付いてきて。パルはメアの後ろにいて次相手が通り過ぎたら音を出してその槌で受けて。強化は僕がする」

「でも相手が強かったらどうするの?少なくともパルは無事じゃ済まないわよ?」

「それはここにいても一緒のこと。僕らがここを突破するにはこうするしかない」


アシュはドワーフの鍛治能力に賭けたのだ。

パルが一撃で殺されればメアのガードなどないも同然。盾ごとメアを切り裂くだろう。

そう考えたが故の作戦だった。


「それじゃあ、行くよ!」

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