第5話 初戦闘
翌日。
「いつまで寝てんだよ」
「うぎゃ!......もっと優しく起こしてくださいよ......」
「うるさい。出発するぞ」
「ふぁ......分かりました」
半ば寝ぼけている叶恵を連れ冬馬は村を出た。
「ジョーカー。王都まではどのくらいだ」
『歩きだと4日ほどのかかる』
「流石ファンタジーな世界......一つの集落からの道のりがえらく長いな」
『仕方ない。途中馬車が通るから乗せてもらうっていう方法もある』
「通ればいいな」
冬馬達が森を歩いていると木々がなくなり見渡す限りの草原に出た。
その足元には二輪車が通った痕もあった。
「この道を歩いていれば出会えるかもしれないな」
「その前にピエロ」
「なんだ」
「この甘い匂いはなんでしょう......果物のような甘い匂いです」
「かすかにするが......風があるせいでよく分からないな」
「こっちの方向です!」
ピエロの手を取ると叶恵は匂いのする方向へ走りだした。
「待て待て!なにか罠だったらどうする」
「甘い匂いがするってどんな罠ですか」
「食人植物の罠とか、植物に限らず敵となるナニかの行動かもしれない」
「考えすぎですよー。こんな平和な草原でそんなこと......」
冬馬が指を指すとその先には羊のような生物が狼のような生物を捕食している場面だった。
「平和な草原はどこだ」
「キッ!弱肉強食の世界なんて自然界では当たり前の摂理です!。目の前で行われた所でそれは平和そのものなんです!」
「なら今ここで道化が人を殺しても同じことが言えるわけか」
「言えませんから!強盗の次は殺人ですか!どれだけ罪を重ねれば気が済むんですか!」
「死ぬまでに全ての罪を犯して死にたい」
「そんな凶悪犯精神は捨ててください」
「捨てるのはまた今度にして甘い匂いの正体が分かった。向かうぞ」
冬馬は叶恵の手を振りほどくと足についている電極のスイッチを入れ走り出した。
「ちょっと待ってください!速すぎます!」
「無理に追いつく必要はない。その場にいればいい。まあ、あの羊の集団がさっきから涎を垂らしながらこっちを見てるがな」
冬馬はそれだけ言うと一気に叶恵と距離を取った。
「ジョーカー。反応は」
『近い。数は7人。うち2人を5人が囲んでいるような配置』
「盗賊か」
『その可能性が高い。様子を見る?』
「ああ、その方がいいだろう」
冬馬は脚に力を入れると木の上へと飛び上がった。
『目標上に到着』
「やってんな」
冬馬の下では老人とフードを目深にかぶった人を盗賊たちが囲んでいた。
「ここはおれ達のテリトリー!税を払ってもらう」
「そんな......余分なお金なんて持ってないです」
「余分じゃなくていいんだよ。金さえ奪えればな。さあ、金を出せ。ついでに馬車と荷物も置いていけ」
「それじゃあ商売が!」
「商売?必要ないだろう?ここで死ぬんだから。憲兵に報告されても厄介だからな」
剣を振り上げ老人へと迫る盗賊。ローブの人は怖いのかおじいさんに張り付いたまま動こうとしない。
「盗賊ってボロボロの服にサーベルのイメージだが結構いい装備してんだな」
『そんなのいらすとやさんの盗賊だけ。この道を占拠してたなら冒険者も通るだろうし寝込みを襲うことだって出来る』
「だから装備がバラバラなのか。バラバラで得するのはスキル機能があるモン〇ンだけだってのに」
『どうするの?』
「情報が優先だ」
『了解』
普通の冒険者なら木から降りて戦うんだろうが冬馬は違った。
親指と人差し指だけ伸ばしあとの指は曲げた。
多くの人が小学生の頃に「ばぁん!」とか言ってやったあの手だ。
更にゲートを開くと指を突っ込んだ。
「ばぁん」
冬馬の指先から火の玉が高速で発射された。
いくつもの火の玉が盗賊たちを襲った。
「敵襲だ!どこにいる!」
『我は森の神なり。我が領域を荒らす不届きものに裁きを下す』
「か、神」
「狼狽えんな!どうせハッタリだ。踊らされるな!」
「どうやら相手の将はかなり勇猛なようだ。早急に殺す必要があるな」
「そこか!」
盗賊の頭が剣を振ると斬撃が飛んできた。
「めんどくさい攻撃だな。範囲が広い上に当たり判定がある。デバックはしっかりしてほしいもんだ」
『デバック作業頑張って』
「道化は残機が増える配管工と違って増えもしないし減ったらそこでGAMEOVERなんだが?」
「お前ら!あの木を攻撃しろ!敵はそこだ!」
頭の命令により剣を振ると振った分だけ刃が飛んでくる。
普通なら驚異的な数の暴力だが今の冬馬に数の暴力は相性が悪い。
「無駄なことを」
飛んできた斬撃はゲートへと吸い込まれていった。
「返すぞ。こんな物騒なものは」
再びゲートを開くと先ほど入った斬撃が盗賊たちを襲った。
「なっ!」
頭はいい装備に剣を盾にしたために生き残ったが他4人は自らが放った斬撃によって命を落とした。
「さて、残るはお前1人だ」
「なんだとテメェは!時空魔法の使い手がなんでこんな王都から離れた場所にいるんだよ!」
「お前には関係ない。さて、死ぬ前に聞かなきゃいけない事がある。残りの仲間はどこだ、武装は、人数は」
「そんなの言うわけ......」
「そうか。なら死ね」
冬馬がゲートを出すと斬撃が頭の首を撥ねた。