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第47話 光さんも煙さんもいない男達が夢見る楽園

ゲートへと飛び込んだ冬馬達は宿屋へと飛んだ。


「ピエロ!どうしました!?砂だらけですけど」

「なに、崩落でもしたの?」

「したというよりさせた」

「え、洞窟を?どうやって?そんな大魔法放ったら余波がこっちまで来そうだけど?」

「特殊な方法でな。企業秘密だ。それよりアシュ、風呂に入れ。砂だらけじゃ気持ちが悪いだろ」

「ピエロと入る」


アシュのような美少女と一緒に風呂に入れるのは男冥利に尽きるが、流石にまずい。

耳元で憤慨する本物ロリとかな。


「道化は後で......」

「砂だらけの状態でガルバの工房に言ったら怒られるわよ」

「そうですよ。宿屋の人にも迷惑になりますから。アシュちゃんと2人キリが恥ずかしいなら私も入りますから」

「アタシもついでに浴びようかしら」


突発的なお風呂イベント。

女に変装した冬馬は脱衣所で悩んでいた。

逃走するか、楽園へ行くか。


男としての冬馬と怪盗としての冬馬が心の中で戦争を繰り広げていた。

男冬馬は「はよ行け」といい、怪盗冬馬は「バレるから逃げろ」と言う。

メリットとデメリットははっきりしている。ハッキリしているが故に足が動かない。

そもそも、怪盗の面を剥いだ冬馬は一般的な日本人。話し相手は妹がほとんどで他の女性となんて話すことはしない。

話しても怪盗という仮面を被り、変装までしている。


端的に言えば、コミュ障で陰キャ全開の素の冬馬になっているのだ。


「ねぇ、なにしてるの。早く入らないと時間すぎるわよ」

「分かってる。道化の服は特注品で脱ぐのに時間がかかるんだ」

「海ではあれだけ自慢げに脱いだくせに」


浴室から顔だけだしたメアがジト目で見て来た。


「なんだ」

「相変わらず大きいわね。なにしたらそんなに大きくなるのよ」

「男に揉んでもらうんだ......冗談だからそんな軽蔑の眼差しを向けるな」

「あーあ。ピエロが男だったら完全にご褒美だったのに。残念ね」

「そうだな」


ここまで来たら後戻りはできない。

バレずに楽園を満喫するか、バレて牢獄という地獄で過ごすことになるか。

1つ深呼吸をすると、浴室へと繋がる扉に手をかけ、楽園への扉を開けた。


「遅ーい!なにしてるのよ」

「ん、ピエロ。来ましたか?」

「ピエロ。はやく」


浴槽に浸かるメア、髪を洗う叶恵、冬馬の手を引っ張ったアシュ。

全員が生まれたままの一糸まとわぬ姿でいた。アニメやゲーム世界の光さんや煙さんが存在しない場。

現実の風呂なのだから当然なのだが、男ならば一度は夢見る世界が目の前に広がっていた。


「ピエロ。僕の髪、洗って」

「自分で洗えばいいだろ」

「アシュちゃん。頭から砂を被ったみたいで一回洗った程度じゃ砂が取り切れないんですよ」

「髪は乙女の武器だから。しっかり手入れしないとダメよ」

「まったく。崩落させるんじゃなかった」


アシュの髪は八重の髪と違って短い。

八重が小学校3年生になるときまで髪を洗っていた冬馬からすれば短髪を洗うことなんて造作もないことなのだ。


「慣れてますね」

「怪盗として当然」

「アタシも洗ってもらおうかしら」

「砂被ってない奴は自分で洗え」

「ケチ」


ケチじゃねぇよ。

こちとら理性ギリギリでやってんだよ。

アシュもペッタンとは言えそこは女の子。アシュが背中を冬馬に預ければ淡い胸がコンニチワ。


アシュの大きさならまだ保っていられる。がしかし、隣で髪を洗うお花畑刑事は完全にアウトの域。

変装込みなら冬馬の方が大きいが元の姿だったら叶恵が一番大きい。

男の理性を簡単に破壊するその果実は無自覚に冬馬の理性を破壊しにかかる。


「どうだ。アシュ、かゆいところとかあるか」

「ないよ。ピエロの指、細いから気持ちいい」

「そうか。それはよかった」

「綺麗な手なのに勿体ないわよ。いつも手袋してるじゃない」

「指紋を残さないため、なのと刃物類から守るためだ」

「手袋も防刃なんですか?」

「ああ、万が一接近された時のためにな」


アシュの頭のシャンプーを流すとアシュは頭を振って水気を切ると湯舟へと向かった。


「今ので凄い疲れた」

「ピエロも早く入らないと風邪ひくわよ」

「分かってる」

「あ、そうだ。アタシが洗ってあげる」

「自分で洗える」

「ピエロだって髪に砂がついてるんだからよく洗わないとダメでしょう?」


湯舟から上がったメアはひたひたと冬馬に近づいてきた。

長い青髪を後ろで団子にし水が滴る首筋は年相応な色香がある。今まで女王としてやって来たからか華奢な肩、湯舟のせいで見えなかった胸もいまならバッチリ見ることが出来る。


「ほら、座って。緊張してるの?」

「ああ、人の髪を洗ったことない女王の洗い方だからな。爪で引っ掻かれて血だらけになるのではと緊張している。アシュ、回復魔法を使う羽目になるから準備だけしておいてくれ」

「分かった」

「血まみれが希望なら頭皮という頭皮を剥いであげましょうか?」


ニッコリと笑うメアの手には明らかに力が入っていた。


「貴重な髪だ。女の武器を取らないでくれ」

「そう。なら大人しく。アタシに任せて」


メアはシャンプーを手に取ると優しく髪を揉むように洗い始めた。


「どう。結構上手いでしょ」

「ああ、女王のことだから全部従者にやらせてるのだとばかり。てか、実際そうだったもんな」

「そうだったわね、ピエロはメイドに変装してたんだったわね」


女王というだけあり、メアの風呂は全て従者がやる。

髪の手入れから体のケアまでなにからなにまでだ。


「アタシだって、ピエロと旅するのに勉強してるの。浴室で待ってても誰もやってくれないし手伝ってもくれない。ボタン付きの服を着るのは今でも苦手よ」

「今からでも帰ればなにもしなくてもいい生活に戻れるんだぞ」

「嫌。アタシが満足するまでは帰らない。ピエロだって帰す気はないくせに」


当たり前だ。貴重な駒をなぜ捨てるような真似をするのか。

金か駒かと聞かれたら迷わず駒と言う。それくらい駒は重要だ。


「それにしても綺麗な金髪。エルフには多いらしいけど人間では希少よ?」

「道化の家系にエルフがいたんだろう。何親等か数えたくもないが」


勿論噓である。

代々、犬神家では結婚は日本人のみと言われている。冬馬の家、犬神家は由緒ある家柄。異端だったのは冬馬の父、真也だけだった。


「なにもかもが羨ましい。綺麗な髪も、大きな胸も細いお腹周りも全部!」

「ちょ、なにを!」


メアは後ろから抱き着くと冬馬の胸を揉みしだいた。


「アタシだってボディラインには自信があったのに!」

「知るか!とっとと離れろ!」

「嫌!もう少しだけ研究したいの!」

「叶恵のでやれ!」

「いいじゃない。叶恵のは毎日揉んでるから!」


だからと言って俺の胸を揉むな。偽物だからなにも感じないが背中ではメアの胸がピッタリとくっついてるのが感じるんだよ。

ぐりぐりと押し付けられるスライムのような胸と胸の上にある突起状のなにか。

メアもまた、無意識に冬馬の理性を破壊しにかかっている。


メアに胸を揉まれること数十分。やっと解放された冬馬は湯舟には入らず楽園を後にした。

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