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第44話 本物ロリVS偽物ロリ。なお、勝負というよりは一方が勝手に対抗心を抱いでいる模様

「ピエロ。大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃないように見えるか」

「見えないですけど.....相手は凄腕の暗殺者らしいじゃないですか。心配にもなります」

「駒が余計な心配をするな。道化が負けることなんて万に一つも有り得ない」

「その慢心が負けを生むのよ」


冬馬は仮面の中で笑うとこう言った。


「慢心せずしてなにが大怪盗か。怪盗ならば敵を欺く術くらい用意してるものよ」

『ギル様かっけー』

「あのー……」

「パル。どうした」

「お願いがあったのを忘れてたっすよ」

「お願い?」

「はい。正確には依頼すね」


パルはもじもじしながら言った。


「火薬をとって来て欲しいんすよ」

「今までどうしてた」

「冒険者達に頼んでたんすけど、かなり割高なんすよ。いい人だと安くしてくれるんですけど、悪い人だと相場の5倍くらいに値段で売り付けられるっすよ。火薬は火起こしで使われたりするっすけど、それを使い果たしたらもう火薬が手元にないっす」

「分かった。取ってこよう」

「私も行きます!」

「ああ、ダメっすよ」

「なんでよ」


メアが敵意を向けてもパルは平然としていた。


「火薬があるのは洞窟の奥底っす。洞窟って言ってもダンジョンみたいなもので奥に行けば行くほど危険すから」

「魔法があれば大丈夫よ」

「魔法が効かない敵もいますし階層によっては逃げるしかないと思うっすから」

「僕は補助魔法だから問題ない」

「そうだな。アシュの強化は欲しいな。危険な洞窟なら尚更に」


冬馬がアシュの頭を撫でるとアシュは頭を手に擦り付けた。


「気をつけなさいよ。危険になったら無理せずにゲートで帰還すること!アシュに変なことしないこと!いい!?」

「わかってるから」

「おみあげってありますか?」

「ない」


「全員落ち着け。道化が帰るまで宿屋にいろ。道化からは以上だ」


それだけ言うと冬馬はアシュを抱えると屋根づたいに洞窟へと向かった。

パルの工房から洞窟までは目と鼻の先。

強化されてない冬馬でも5分で着くことが出来た。


「アシュ。道化の側を離れるな。あと、道化が危険と判断した場合すぐに宿屋へと飛ばす」

「うん。わかった」


アシュは冬馬の外套の袖をギュッと小さな手で握った。


『お兄ちゃん?死ね』

「シンプルだな。怒るなって。アシュがいないと道化は死ぬんだぞ」

『分かってる。でも理解と承認は別物』

「知ってる。だが今はナビゲートに集中してくれ。既にこっちでも気配がひしひしと伝わってくる」

『正解。目の前の縦穴の深さは3メートルと低いけど降りた瞬間にモンスターに襲われる』

「あまり使いたくはないが」

「それなに?」


冬馬が手にする球状の物体に興味津々なアシュ。

まあ、この世界にはないものだし、初めてのはずだから興味があるのは分かる。


「これか?手榴弾って武器だ。耳を塞いで少し離れるんだ。危ないから」

「分かった」


アシュがフードで耳を塞いだのを確認すると冬馬はピンを抜いて縦穴へと投げた。

数秒後にバガーン!という大爆発の音と共に砂煙が視界を覆い尽くした。



「びっくりした……」

「これでびっくりしてちゃ道化の駒としてやっていくのは無理だな」

「大丈夫。ただ驚いただけ」

「よし、じゃあ降りるぞ」


崩落するかもと思ったが意外と丈夫に作られているらしい。

よくよく見ると地面と壁の素材が微妙に違う。表面には砂が被っているが少し掘ると黒い壁が出てくる。


「この匂い、石炭か」

「せきたん?」

「化学燃料……よく燃える石だ」

『正確には植物が完全に腐る前に地中に埋もれ地熱や地圧を受けて変質した鉱石のことだよ。しっかり教えないと可哀想だよ』

「前知識がない状態で言っても理解出来ないだろうが」


ナチュラルにアシュをいじめようとするな。


「石炭はなにに使うの?」

「火を使うものならなんでも。魔力量が少ない人はこれを使えば数時間は火が保てる。まあ、二酸化炭素やら硫黄酸化物とかいう有害物質が多いから換気は必須だがな。パルの工房で燃やしたら死ぬ」

「危険物」

「扱い方次第だ。さて、奥に行くぞ」

「うん」


再び冬馬の袖を掴んだアシュは少しだけ満足そうな顔をした。

満足そうなアシュとは反対に耳元の本物ロリは不満そうにガリガリと氷を食べていた。


2階層は鉱山などで見られる通路式になっていて標識や誰かが掘った跡なども見られた。

1階層とは違ってランプも吊るされていてガラス瓶の中では光る丸いものがふよふよと動いていた。


「明るいのは助かる。暗視を使わずに済む」

「索敵は任せて。2階層にはほとんどいない。いてもこっちが近くと巣穴に逃げちゃう」

『そんな索敵しか出来ないなんて所詮は偽物のロリ。八重ならもっと正確にどんなモンスターがいて特性から攻撃手段まで欲しい情報は取り出せるもん』

「天然の索敵とPCが張り合うなよ……どっちも道化からすればありがたいから」

「ピエロ……」


最近アシュが甘え上手になってきました。

そして八重がそれに対して殺意を剥き出しにするまでがセット。


「あのなジョーカー。アシュに索敵ができてもジョーカーにしか出来ないことがある」

『なに』

「道のナビゲートだ。音の反響からしていくつにも道が分かれてる。迷った挙句外に出られませんじゃ意味がない。ゲートがあるから外に出られないってのはないとは思うが、先に進めないのも無意味だ。道のナビゲートだけはジョーカーの特権だ」

『そうかー。やっぱりお兄ちゃんには八重が必要かー。そうかー』


単純な妹で本当よかった。


『二階層の分かれ道は全部右に行けば通り抜けられるよ。火薬は奥底だからこの階層はスルーしても問題ない』

「助かる」


火薬を求めて冬馬達は洞窟の奥底へと足を進めた。


『でもさ、火薬って他の薬品だったり物質との化合物だよね?自然生成なんておかしくない?』

「匠が火薬を落とす世界があるんだから、この世界もきっとそうなんだ。そうに決まってる」

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