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第28話 水都へ

「ピエロ。どこに向かってるんですか?」

「水都、カリンだ」

「あら。水都に行くの?水着持ってくればよかった」

「水着?海があるんですか?」

「ええ、水都は海に面した領地で魚が名産品ね」


叶恵は今から食べることに夢中になっていてメアは海で遊ぶことを既に決めているようだった。


「メア、水都に魔族は入れるのか?」

「入れるわよ。水都は海に面してるだけあって王国の入り口なの。だから魔族もいるし獣人もいるし多くの種族が入り乱れた場所。王都より魔族嫌悪は少ないわ。でもなんで?」

「良かったな。アシュ。フードを取って生活できるぞ」


冬馬はアシュの頭を優しくなでた。


「ありがとう」

「え、その子魔族なの?」

「気づいてなかったのか」

「ええ、ただ女王であるアタシを見て恥ずかしからかぶってるものだとばかり思ってたわ」


生まれた時から王族のメアは謙遜を知らない。

自分が一番だと思い胸を張る。メアが謙遜したときはそれは嫌味でも皮肉でもなく心からの言葉なのだ。


「水都は比較的温暖な気候で王都より気温は高いし日光も高いからピエロの恰好だと暑いと思うわよ?」

「氷魔法ってのは便利でな。内側から冷やすことが出来るんだ」

「ピエロだけずるいですよ」

「叶恵も魔力量は多いんだから練習すれば使えるはずよ」


後ろできゃいきゃいと16歳と26歳がはしゃいでいるのを横目に冬馬はアシュの隣に座った。


「調子は戻ったか」

「まだ少し悲しい。でも泣かない」

「そうか。いい事だが我慢は絶対にするな。我慢した挙句いざとなった時に使えないとか駒として失格だ。なにかしたいこと、欲しいものがあればすぐに言え」

「どうしてそこまでしてくれるの?僕はピエロの駒だよ?仲間じゃないんだよ?」


アシュの問いに冬馬は仮面の中で笑った。

アシュの疑問は当然であり答えは簡単だったからだ。


「駒っていうのは道化にとって大事なものなんだ。そして、アシュは駒であって奴隷ではない。魔族だろうと獣人だろうと誰だろうと道化の駒である以上、平等に扱う」

「でも叶恵はなんでも出来る。僕は補助しか出来ない」

「それは違うなアシュ。万能はたしかにいつでも使える駒だがだから使いどころが難しいんだ。そんな面倒な駒よりアシュのような役割が決まってる駒の方が使いやすい。これはアシュも覚えておけ」

「うん。分かった。我慢しない、万能は使いどころが重要」

「そうだ。その意気だ」


『おいロリコン』


冬馬がアシュの頭を撫でていると酷く冷たい声が耳に響いた。


「どうしたジョーカー。嫉妬か?......悪かったって。ハウリングはよせ」

『なんで、なんで60歳のロリババアに構うの?14歳の現役JCじゃダメなの?』

「メンヘラ女にだけはなるな」

『ヤンデレになる?』

「今まで通りの八重さんでお願いします」

『なんで水都にしたの?まさか本当に水着が見たかったからとかじゃないよね?』

「違う。旅の最初は温暖な場所に行きたかったからだ。それに水都は王国の玄関口と言われ他種族が多く存在する街だ。折角異世界に来たんだ。しっかり見て置こう。そう思った故のやつだ」

『ふーん。理由はそれでいいけど間違っても海で水着見て興奮してその場でレッツパーティーは止めてね』


妹よ。兄をなんだと思ってるんだ。


「そこまで獣じゃない」

『どうだか』

「なにが獣なんですか?」


冬馬と八重が話しているとメアと遊んでいた叶恵が馬車前に顔を覗かせた。


「なんでもないから後ろでじっとしてろ」

「暇なんですー。なにか暇つぶしになることないですか?」

『ジンギスカンの作り方送っておくね』


暇つぶしにシープを焼けと?

多分使わないだろうけどありがとよ。


「なんで水都に行こうと思ったんですか?あ、まさか水着が見たかったんですね〜?そうですね?」

「30近い女とか男子高校生でも食わないだろ。道化は興味ない」

「またまた〜」

「あと10歳若返ってから言え。水都の目的は普通に他種族を見るためだ」


この世界で旅をするにあたって1番注意すべき問題は他種族とのギャップ。

魔族が魔法に優れているように他の種族もなにかしらの種族的な能力があるかもしれない。それがあるのとないのでは戦闘に大きく関わる。

もしエルフなどが能力を封じる魔法を使ってきたら冬馬は戦えない。そうなった時に同じ種族の仲間がいないと苦戦するのは目に見えている。

魔法分野だけで考えていた駒の構成も物理分野にも視野を広げる必要がありそうだった。


「ピエロは他種族と触れ合ったことないかしら?」

「ああ、ない。生まれの村は人間しか居なかったからな。この歳まで他種族を見たこともなかった」

「そう。じゃあ、アシュにでも教えて貰いなさいな」


急に話を振られビクリと肩を揺らすアシュ。アシュはまだ女王であるメアを警戒している節がある。


「アシュ。メアは安全だ。初見は高圧的だが慣れればただの強がりだ。自分の内にある弱い心を見透かされないようにするためのな」

「弱い心ってなによ!アタシは女王!気高くあるべきなのよ」

「城を抜け出して女王なんてやりたくないとほざいていたのは何処の誰だ」

「あら、なんの話をしているのかしら?ここ最近の激務で忘れてしまったわ」


都合のいい脳みそだこと。

ま、メアは少し高圧的で近寄りがたい方がいい。

近寄りがたい雰囲気を出して貰えれば一緒にいる脳が足りない頭お花畑刑事の護衛程度にはなるだろう。

刑事が女王の守られる図の完成。


「水都が見えたよ」


アシュの指差す先には水がキラキラと光っていた。

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