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第25話 処刑開始

広場の周辺は物珍しさと魔族への弾圧により熱気が集まっていた。


「一体なんの騒ぎだい!」


広場の騒ぎを聞きつけたオスカーが処刑場へと立った。


「オスカー様、王都に魔族の侵入を許しました!」

「なんだって!魔族は捕らえたのか!」

「はい。既に磔刑に処しております」

「なぜすぐに処刑しない!街の人に被害があったらどうするつもりなんだ!」

「し、しかし邪魔が入りまして......」

「邪魔?」


オスカーの先には楽しそうに談笑する叶恵達と無言で力なく俯くアシュの姿があった。


「アマゾネ殿にイザベラ殿ではないか。なぜここに?」

「そこの衛兵がこの子を処刑しようとしたからさね」

「そうよ。酷いんだから!」


女性2人の勢いでオスカーはたじろいだ。


「まず落ち着いて。繋がれている彼女は魔族でもその仲間でもないんですね?」

「そうよ!早く解いてあげて!」

「しかしオスカー様!この者は魔族のことを庇ったのです!」

「魔族を庇った?それは......魔族の仲間だということではないのか?」

「オスカー様!この子はとてもいい子です。王都に来てから騒ぎは起こしてませんし攻撃の意志はありません!」


オスカーは天秤にかけた。

・敵意がないアシュを解放するか。

・街の人の安全を取るか。


この2択ではオスカーの判断はすぐに決まった。


「魔族とその仲間を処刑せよ!これは公爵家次期当主、オスカー・クラディウスの判決である!」


オスカーが声高らかに宣言すると同時に叶恵は絶望を覚えた。

公爵。実際に会ったことはないが字面だけなら叶恵も知っている。

爵位の内最上位の位。そして、公爵家に指示が出来るのは王国内でただ1人。王族のみなのだ。

その公爵家の決定となればアマゾネもイザベラもこれ以上の弁護は出来なかった。

2人とも権力に屈したのだ。


「待ってください!この子はイイ子で......!」

「どれだけイイ子でも魔族である以上。そして、王都に入った以上は処刑にしなければいけないんだ」


オスカーはさっきの毅然とした態度から柔らかく喜怒哀楽が仕事しているオスカーへとなっていた。


「魔族は魔法が得意なんだ。だから武器を持っていなくても魔法で攻撃出来る。入り口を使わずに入るにはあの城壁を飛び越える必要がある。なにかしらの攻撃手段がある証拠なんだ。公爵家として国民の安全を守る義務があるんだ。恨むなら僕を恨んでくれ」


オスカーの悲しそうな表情に叶恵はなにも言えなかった。

抵抗しようにも腕は鎖で繋がれ身動きが取れない。シープも魔法による拘束で同じく身動きが取れない。

完全に詰みだった。


「処刑始め!」


その一声で会場は湧き歓声に包まれた。


「ごめんね。アシュちゃん......私じゃ、ダメみたい」


アシュはゆっくりと叶恵の方を向いた。


「そんなことない。まだ強い駒が残ってる」


アシュは大きく息を吸い込むと大声で叫んだ。


「ピエロ!僕を助けて!僕は攻撃は出来ないけど補助なら出来る!魔族の魔力をピエロにあげる!」

「魔族如きが!」


アシュが勢いよく下を向いた拍子にフードが取れ、黒髪の中に埋まる小さな角が見えた。

アシュの頭に斧が振り下ろされアシュは絶命した......はずだった。


「うぎゃああああ!」


だが斧が振り下ろされた先は衛兵の肩口だった。


「甘い。魔力だけじゃなく。アシュ、お前を寄越せ」


いつの間にかアシュの前にはピエロ面の冬馬が立っていた。


「うん。あげる。ピエロが望むもの全て!」

「ならば駒として使ってやろう。光栄に思え」


笑ったピエロ面がアシュに近づきアシュも笑った。


「そしてそこの馬鹿」

「馬鹿ってなんですか!近くにいるなら助けてくれてもいいじゃないですか!」

「駒の分際で主を困らせるな。犬でももう少し利口だぞ」

「犬以下ってことですか」

「違うな。犬『未満』だ」


冬馬の登場により叶恵の顔にも再び笑顔が戻った。


「オスカー・クラディウス。貴様は何故この魔族を殺そうとする?」

「国民を守るため」

「そうか。ならばなぜ叶恵も殺そうとした」

「魔族と繋がりあるものは殺さなければまた同じようなことが起きる」

「ふむ。流石は超が付くほどの善人様だ。道化とは考えが違う」


衆人環視の中、冬馬は飄々と振舞った。

今の冬馬には誰も攻撃が出来ない。なぜなら、どうやったらアシュの頭に振り下ろされた斧を振り下ろした本人に返すことが出来るのか不明だから。


「それより衛生兵を呼んだ方がいいと思うが?この衛兵、死ぬぞ」

「っく。衛生兵!」


冬馬の側に転がる片腕の取れた兵士を衛生兵が魔法で癒し、取れた腕をくっつけていく。


「アシュ。お前も同じようなことが出来るのか」

「出来る。魔族ならもっと少ない時間と魔力でくっつけられる」

「そうか。道化は満たされている。こんなにも有能な駒が手に入ったのだからな」

「逃げ切れると思っているのか」

「そうとも、なんなら女王陛下も貰って行こうか」

「それはダメだ!あ、いや......」

『リア充死ね』


出て来たと思ったら暴言吐くの止めてね怖いから。


「女王陛下を攫ったら死刑は免れないぞ!」

「オスカー。貴様はなにを見ていた。道化に攻撃は通じない」

「ならば試してみるか。もし君が勝てたら魔族は見逃そう。メアには僕から言って置く。もし君が負けたら魔族とその彼女は処刑させて貰う」

「いいだろう。勝負と行こう」


処刑台の上で大剣を手にしたオスカーと構えも取らずに腕を下げた状態でだた立っていた。


「構えを取らないのか」

「構え?ああ、そうだな。対オスカー用の構えを取ろう」


冬馬がピエロ面と外套を脱ぎ去って現れたのは現女王、メアだった。


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