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第20話 メアの息抜き?3

「貴方、アタシの側付きの……」

「側についたのは最近だろうが」


メイドはメイド姿のまま眉間にシワを寄せた。


「ピエロってなんでも変装しますね」

「ピエロ?え、ずっと?」

「気がつかなかったか」


さっきとは変わってメイドの態度は大きい物になっていた。

腰に手を当て重心を片足に預けた。

とても主人を前にしたメイドの仕草ではない。まあ、主人にも死ねとか辛辣な言葉をかけるメイドもいないこともないが。


「いつから?いつからなの?」

「道化が裏庭でメアと会ってからだ」

「なんで?なんでメイド姿なの?」

「城の中をこの姿でうろついてたら不審者すぎるだろ?メイド姿なら誰も怪しまない」

「ピエロは王城でなにしてたんですか?」

「宝探し」


その言葉を聞いてメアはハッとなった。


「もしかしてアタシが宝だって言ったメイドも……?」

「ご明察。道化だ」


メアは腕をクロスして後ずさると叶恵の後ろに隠れた。


「やっぱりピエロもアタシを狙ってるのね!国王の座を自分の物にして国を乗っ取る気でしょ!」

「バカか」

「ば……か!」

「前にも言わなかったか?国王なんて面倒な役職誰がするか。怪盗は怪盗だ」

「ピエロはそういうことする人じゃないですよ。やっていても不思議ではありませんが」

「道化のイメージを勝手に定着させるな」


ミニスカートのメイドが冒険者2人という構図はなんともミスマッチ

白を基調としたメイド服は暗い路地裏では目立つし王城に仕えるメイドが冒険者と知り合いなのも妙な話である。


「で、なぜお前らがここにいる。宿屋で大人しくしておけ」

「アタシが連れ出したの。気分転換にね」

「お昼も食べましたし楽しいですよ」

「観光の感想は聞いてない。騎士団がいるから宿屋に戻れ」

「嫌よ。王国で最高の権力を持ってるアタシが誰かに従うわけないでしょう?」

「お前……」

「まずお前じゃないし。メアだし」


冬馬はため息をつくしかなかった。


「メア、今自分が置かれてる状況は分かっているのか」

「さあ。全て急展開しすぎて理解出来てないわ」

「なら敢えて言う。もし今見つかれば事情説明や当時の状況、襲撃者の詳細などなど口頭、書類上で説明する羽目になるんだぞ」

「うへ……」


メアのみならず誰であろうと始末書を書くのは嫌だろう。

一回で済めばいいがコピー機なんてない世界、全て手書きな上送る場所によって書き方、話すことを変えなければいけない。

考えただけでも禿げそうな重労働。それを不安定な精神状態でやれというのは少し酷である。


「それが嫌なら全力で逃げろ」

「逃げるなんて嫌よ」

「だったら別方面を見てろ」

「ぐぬぬ……色んな場所を見てみたいのに……」

「我慢しろ。逃げないのは構わないが我慢は覚えろ」


メアは少し考えた後ため息をついた。


「分かったわ。違う方向を見てるわ」

「そうしろ」


メアは肩をすくめると叶恵の手を繋いだ。


「メア!?」

「叶恵とデートするわ。ピエロの駒を借りるわね」

「好きにしろ。道化はやることが山積みなんでな」

「それじゃあ、宿屋の前まで移動してくれるかしら?」

「わかった」


冬馬はゲートをメアの足元に広げるとそのまま宿屋へと飛ばした。


「おい、冒険者達は……どうだった?」

「彼女たちは違いました」

「なぜこんな路地で話すんだ」

「相手は女性の冒険者ですから。男の人に聞かれたくない事もあるんですよ」

「そんな物なのか……」

「ええ、そんなものですよ」


メイドはにこやかな笑顔を向けると次の人に聞き込みに行った。


「ピエロの魔法って便利ね」

「そうですね。私にも使えたらいいんですが」

「無理ね。どんなに魔力が無限に近くても時空魔法は特別なの」

「そうでしょうけど……もし使えたらもっとピエロに頼って貰ってたんじゃないかなーって思ったり」

「例え持ってたとしてもこき使われるのが目に見えるわ」


叶恵を駒としてしか見ていない冬馬が取る行動はかなり限られるしあまりいい物ではないだろう。


「ま、ピエロなら叶恵の力は借りずに自分の侵入スキルでどうにかするとは思うけど」

「たしかにそうですね」

「いい能力を持っていたところで使いこなせなければ意味がないしその能力を狙って近く人だっているわよ」

「力を持つっていうのも考えものですね」

「でしょ?あまり力を持ってもいいものじゃないわよ」


女王という強い力を持ったメアの言葉には説得力があった。


「あ……」


叶恵の前に現れたヨレた布の塊。否、小さすぎてそう見えただけだ。

フードから見える顔には見覚えがあった。


「アシュちゃん!」

「……久しぶり」

「誰?」

「行商人のバルさんとこのお孫さんです」

「へー。小さいわね」

「まだ10歳ですから」」


10歳というのは冬馬が作った仮の年齢だ。

魔族は人より成長が遅くその分長生きなので実際はもっと上である。


「冒険者の……あの時はお世話になりました」

「こちら行商人のバルさんです」

「叶恵の冒険者仲間のメアよ」

「おお、女王陛下と同じ名前とは、縁起がいいですな」

「ま、まあね」

「次はいつ出発ですか?」

「そうですな……5日後というところですか。まだ品物が充実してないので」

「またどこかで会ったら乗せてください」

「その時は護衛お願いします」

「まかせてください。頑張ります。主にピエロが」


アシュが叶恵に近寄ると叶恵の裾を引っ張った。


「ピエロは?」

「ピエロは今仕事中です。あ、でも騎士団と一緒なので近寄ってはダメです」

「そう……」


アシュは冬馬が側にいないとわかると肩を落とした。

冬馬とアシュが一緒にいた時間はかなり短い。それでもアシュは冬馬に懐いていたのだ。


「夜私たちの部屋に来れば会えますよ?」

「夜は……眠い」

「その歳ならそうでしょうね」

「もし起きてしまったら来てください。私は寝てると思いますが……」


冬馬も夜は寝るが気配があれば起きる。

雑に気配が散らかる叶恵とは違いアシュは気配の出し方を分かっていて殺気を出せば冬馬を起こすことは出来るだろう。


「うん。起きたら」

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