第終話 エピローグ
完結です。
「終わったの?」
「ああ。この戦い、道化たちの勝利だ!」
『うおおおおお!』
兵士達は武器を捨てその場で抱き合った。
種族の差など今のこの瞬間だけは無視できる。
それと同時に本陣メンバーにも疲れが見え始めた。
「終わったんですね......」
「姫様。お疲れ様でした。ごゆっくりお休みください」
「あっけなかったの。血を流すようなこともなかったしの」
「死んだのは怪盗だけであったな!」
『煽られてるよ』
「今はその煽りに答える気力もない」
「くるる」
「シープちゃん。お疲れ様!」
元の肩乗りサイズへと戻ったシープは叶恵の胸に飛び込み。擦り寄った。
「一番力仕事してるものね」
「僕はピエロが生きてればいいから」
「そういえばご主人不老不死になったんすよね?」
「ああ、そうだな。これでアシュより長生きだ」
「うん!」
アシュは顔を赤く染めると冬馬に抱き着いた。
この場は一旦解散となり、祝杯はまた後日あげることになった。
『それで、やりたいことってなに?結構血圧上がってるけど』
「これをこうするじゃろ?」
『いつものゲートじゃん』
「後ろを見てみろよ」
『え?』
八重が後ろを向くと数か月の間声しか聴いてなかった兄の姿があった。
「あ、あ、ああああ!」
「能力強化の意味。分かったろ」
「帰ってこれるようになったんだね!お兄ちゃん!」
「生声は久しぶりだ。本来は最強になるレベルの指輪なんだろうが、異世界人の道化はこういうことが出来るらしい。興味本位でやってみたが意外といけるもんだな」
「ううぅううう!」
「さて、向こうの晩餐の前にやることを済ませよう」
冬馬はパソコンで文書を打ち込んだ。
『南條叶恵の命は道化が預かっている。返して欲しくば道化を捕まえてみよ』
という挑発文を。
「俺はまた戻る」
「なんで?」
「やることが残ってる。ぜひ八重にも見て欲しいことだ」
「分かった。すぐに帰ってきてね?」
「ちゃんと帰ってくるって」
冬馬はゲートで戻ると宵闇を探した。
「なんだ。お父さんに用事か?」
「ああ、少しついて来て欲しい場所があってな」
「どこだ?」
「行けば分かる」
冬馬は宵闇事ゲートで移動した。
移動した先は王城、リーネの部屋だった。
「冬馬ちゃん?なんのつもり?お父さん困ってる」
「その困った顔が見たかった。ほら、数十年ぶりの再会だろ。喜べよ」
数十年ぶりと言ってもリーネは慎也のことを死んだと思っていて女手一つでメアを育て上げたのだ。
かくいう慎也は子育てとか面倒で姿を消しただけである。
「どうして......急にいなくなったりしたんですか!」
「仕事がな......」
噓である。
「仕事の都合上、死んだ扱いにした方が楽だったんだよ」
噓である。
「嘘つけ。異世界に来てまで子育てしたくないって言って逃げただけだぞ」
「息子の酷い裏切りにお父さん悲しいよ!」
本当である。
慎也はせっかく誤魔化せそうだったのに冬馬には真実をばらされ涙目である。
「生きているならいいです。メアのように誰かを許せる女王になればよかったと後悔していたところだったので」
「あ、もう一つリーネに土産だ」
「これは......駒?」
「ああ、チェスの駒だ。それを持って魔力を流すとコレがどこにいようとリーネのいる場所に移動してくる優れもの。深海真珠で作った特注品。献上品といったところか」
「そんなものリーネに渡すわけにはっ!痛った!電気?」
「ドワーフの職人を舐めるな。所有者以外が触れた場合電気が流れる。電気が流れた状況じゃエルフですら魔法封じや解除は出来ないからな」
「ありがとうございます。怪盗ピエロ。最高の頂き物をいただいてしまいました」
「娘を危険な目に遭わせてしまった詫びと献上品だ。それじゃあ道化はこれで」
冬馬がゲートに消える直前、実の父親に向かって親指で首切りをした冬馬はにこやかに消えて行った。
『なにあれ。生で見たかった』
「あれほどまでに煽りがいのある相手も中々いない」
煽りというのは相手が自業自得であるほど面白い。
相手は言い返すことが出来ず大人しくしてることしかできず一方的に殴れるから。
「そろそろ帰ろう......ただいま」
「おかえりピエロ。どこ行ってたの?探したよ?」
『選べ、そのニセモノロリを取るか、鼓膜と共に脳をぐちゃぐちゃにされるか。血縁者のよしみで選ばせてあげる』
「待て八重。道化には八重しかいない」
「ピエロ。大好き」
「アシュ......」
「ギルティ」
アシュの無自覚な追撃により冬馬の耳には大音量のノイズが流れ込んだ。
『聞こえてるなら聞くけどこれからどうするの?』
「そうさな......まだ宝ありそうだしこっちにいる。たまに帰るからそんなしょげるなよ」
『絶対だからね』
「何度でも言おう、怪盗ピエロは永久に不滅だと」
この度も無事完結させることが出来ました。
それもこれもみな様のお陰です。ありがとうございます。
さて、次回作のお話をば。
次回作はラブコメになるかと思います。
今現在、pixivにて公開されている小説の本まとめになります。
もし「先に気になる!」という方がいましたら、pixivにて『保健室から始まる恋というのもいいかもしれない』と調べれば出てくると思います。多分。
それではここまで読んでくださった皆様に最大の感謝を。
ありがとうございました!