第128話 情報交換と作戦会議を平行でやるんだよ!あくしろよ!
「さて、情報交換をしよう」
「いいんですか?私達に情報を渡して」
「いいに決まってるだろ。なんなら一番情報を握って居なきゃいけない人物だ。それとも裏切るご予定でも?」
「いえ、ピエロはそういう場に私達は連れて行かなかったので」
「それもお主を守るためじゃろうて。怪盗亡きいま、同席を拒む者はおらんよ」
叶恵が一同の顔を見ても否定的な顔は1つもなかった。
「それじゃあ始めるぞ。俺とバルトラは神本体に攻撃を試みた。結果から言うと物理的な攻撃は絶望的と考えてくれ」
「近づいた瞬間に触手の集中砲火を食らってな。防御するのが手一杯だ」
「だからこちらに触手が伸びてこなかったんですね」
「ああ、触手一本はバルトラの一撃に匹敵する。ただ強化はされてないようで、強化込みのバルトラの攻撃では余裕で弾けた」
「じゃがこのデカ物と同じ威力の拳などお前たち以外に誰が出来るというのじゃ」
「魔法攻撃は吸収され物理攻撃は到達前に撃ち落されるのが関の山。そんなの倒しようがないじゃない」
「1つだけあるっすよ」
「ほうなんだね」
パルは叶恵が持つ銃を指さした。
「この武器は魔法に頼らず、火薬だけで攻撃するっす。速度もあるのでタイミングさえ見極めればダメージは与えられると思うっすよ」
「その使い方なら俺も知っているが、飛距離はどうなんだ」
「ご主人に聞いた限りでは叶恵さんが持っているタイプで300メートル。ご主人が使う予定だった武器で1キロっすね」
「1キロじゃ触手に狙われるぞ」
「宵闇たちで引きつけたらどう?」
「出来なくはないが一回攻撃したら狙われるだろうな」
「注意を分散させて攻撃というのは出来ないのかや?」
「出来なくはないが、なんせあの触手の数だ。それなりの人手がいる」
人手は確保できても攻撃手段がないというジレンマ。
銃を使おうにもスナイパーライフルを扱えるのが宵闇だけであり、拳銃だとしても叶恵と宵闇だけというジリ貧状態。
「頭を悩ませるのはまた後だ。そっちの情報を聞かせてくれ」
ニュークは怪盗ピエロのニセモノを相手したこと、ニューク自身とサラが瀕死になったこと。
叶恵の協力でニセモノを倒したことを話した。
「ほう。怪盗ピエロのニセモノか。手合わせしたいものだ」
「宵闇がおらずとも妾達だけでなんとかなる相手じゃったわ!」
「瀕死になった魔族が何言ってやがる」
「そっちも大けがじゃったろうに!」
いがみ合う2人をバルトラとルージュが引き剥がした。
「一度退けたのはいいけどまた来たら太刀打ちできない」
「そうですね。私もかなり消費しましたし、ニュークは魔力的にも体力的にも消費しますからね」
「妾はメアがそばにいれば急速回復じゃよ?」
「いやアタシもそれなりに消費しているから」
「私はそこまで消費してないですね」
「流石神の魔力量。この使い魔もさぞ溜め込んでいることだろうよ」
宵闇がシープに触ろうとした瞬間にシープは鋭い牙を剥き出しにしてうなった。
「なってませんね。下からすくうように持ってあげるんです。そうすればこのように大人しいですよ」
「下からすくおうが上から覆うようにしようが変わらんと思うぞ」
「俺もそう思う」
動物に好かれるのは森で暮らすエルフの特徴であり神獣と神霊で通じ合うという部分も少なからずある。
「兎に角、怪盗ピエロの襲撃に注意しなければいけないことと神の触手をどうにかしないと滅亡まで指咥えて待つことになるぞ」
「私の魔法でどうにかなりませんか?同じ神の魔力なら封じられるんじゃないかと」
「それも考えたんだが、ニュークに聞きたいことがある」
「なんじゃ」
「魔方陣を破る時、一撃で破れたか」
「鬼神の力を以てしても一撃では無理じゃった」
「なら結論は不可能だ。怪盗ピエロがどういう結論を出して挑んでいたのかは分からんが、ニュークの鬼神というのはニュクスだ。夜を司る神であり鬼神の始祖。ニュクスで破れないということはその上、混沌を司る『カオス』そのものだ。エイミがどこに位置するかによるが、どうだルージュ」
「エイミは原初に近くはありますが原初ではありません。エイミは元々は強大な神ではなかったのです」
それは冬馬ですら知らない情報だった。
「エイミの神性は慈愛と静寂。つまり愛されれば愛されるほど神性を強くなる一方なのです。人々の争いが絶えなかった時代にエイミは信仰されました。戦争を沈める静寂の神として。そこから強大な力を持ったのです」
「そんな歴史が」
「それは怪盗ピエロは知ってるのか」
「いえ、聞かれなかったので話してません」
「なら勝機は十分にある。この世界にいる人間にエイミを信仰するように仕向ければいい。神が顕現した今、世界各国は不安に包まれている。救世主が現れたとなれば信仰する。この世界の住人はそういうもんだ」
今や法国全土でエイミは信仰されいる。がしかし、法国だけでは足りないほどに相手が強すぎた。
「明日避難所に行くか」
「避難はたしかオスカーがやってるはずよ」
「僕になにか用事かな」
「帰ってたのね」
「今帰った所だよ。僕も戦闘に回してくれればいいのにピエロは生きてたら殴りたいね」
「死体でよければ殴ってくるがいい」
「殴ったら一生口利かないから」
「僕は遠慮しておこうかな。それより避難所の場所だけど。急ごしらえだけど広場に建てたよ。自身の家がある人は家に籠って貰ってるよ」
「なら案内しろ」
「分かったよ。案内するよ」
戦闘での疲れもあるが今人類陣営に休んでいる時間はない。
「よし向かうか」
オスカーの案内で避難所へと移動した。