表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/136

第122話 お父さんが異世界で最強で厨二病再発してるってどんな気持ち?

宵闇はひとしきり暴れた後、冬馬のもとへと下がってきた。

だが最初に反応したのは冬馬ではなく、別の人物だった。


「宵闇さん。お久しぶりです」


ルージュだった。

ルージュはにこやかに微笑むんだ。


「宵闇ではないか!心強い!」

「生きていたじゃな。とうに死んでいると思っておったわ」

「酷いなー。ちゃんと生きてるってのに」


どうやら各王と宵闇は仲がいいらしい。

ニュークだけは目も合わせずにそっぽを向いたが。


「宵闇としては初めましてだ。怪盗」

「初めましてか……言い得て妙だな。ここは大人しく初めましてと言っておこう。宵闇」


お互いに面をしているため素顔はわからないが、八重から送られてくる情報を見れば宵闇の素性も丸裸。


『お父さんが異世界で最強で厨二病再発してるってどんな気持ち?』

「殺したいくらい生恥」

『よかった。意見一致して』


誰しも、父親が転生した先で最強として活動していたら目を覆いたくなるものだ。

それは怪盗ピエロでも例外ではなく、頭痛に悩まされていた。


「さて最強、やることはわかってるな」

「勿論。掃討でもすればいいか」

「ああ。そうだな。援護は任せろ」


宵闇が敵陣へと飛び込み、バルトラと合わせると双璧となった。

斬り刻まれるか吹き飛ばされるかの二択。そしてその両方が即死級というどこぞのダークソウルも真っ青の鬼難易度。

神によって召喚された眷属は次々に倒れた。

がしかし、その勢いが収まることはなかった。


「メリー!偵察結果は」

「森の中、魔法陣あり。そこから湧いてる」

「了解。アシュ。魔法陣の破壊にはなにが必要だ」

「それなりの魔力だけ。でもこの猛進の中どうやって近づくの?」

「ははは!道化を誰だと思っている!この先は道化が初めてたどり着いた村。近道なら既に用意してある」


冬馬はニュークを連れ、森の中へと入っていった。


「魔法陣の位置は」

「ここからやや北西よりの場所に一つ、南東の方向に一つじゃな」

「ほぼ真逆か」

「怖気付いたかの?」

「まさか。ここまで来て怖気づくほど柔ではない」


冬馬とニュークは森の中を疾駆すると赤く光る魔法陣が見えた。


「破壊するから離れておれ」


冬馬が数歩離れるとニュークは構えをとった。


「神代に奉る。我は鬼。鬼神なり。万物を破壊し喰らう者。名はニュクス。神々を殺した鬼なり!鬼神正拳突き!」


ニュークが前に拳を突き出せば空間にビキビキと亀裂が生じた。


「ぐぬぬ。ニュクスの力を持ってしても一撃は不可能か」

『ニュクスとかティターン十二神より格上だよ。現世では夜を司る神として有名だし、神々の原初カオスから生まれた5神の内の1神。間違いなく強い』

「その力でも破れないってことは」

『相手は同格の神かそれとも原初の神か』


どちらにしろ厄介な相手ということに変わりはない。


「怪盗の匂いを嗅ぎ付けたようじゃな」

「そんな臭うか?」

「人間独特な匂いじゃ。香ばしい匂いなんじゃろうな」

「好かれるなら宝に好かれたいものだ」


あまりここで時間を潰されるのは好ましくない。

今、この瞬間にも神がルージュや叶恵を狙っているのだ。

早急に帰る必要がある。


「ニューク。道化を強化しろ」

「なにをする気じゃ。魔獣が集まってきてるのじゃぞ」

「だから手短に済ませるんだ」

「どうなっても妾は知らんぞ」

「その方がありがたい」


冬馬は強化された拳をゲートに向かって殴りつけた。

いくら魔族の王の強化ありと言っても所詮は人間。鬼神には遠く及ばない。

ではどうするか。


「単純に手数を増やせばいい」


要領はパルの剣撃を飲み込み再利用するのと同じ。

飲み込まれた拳は数十発分となって壁に叩きつけられる。

だがそれを魔獣達が大人しく見てるはずもなかった。


「あとは割れるまで待つだけだ!魔獣達を蹴散らす」

「肉は妾が貰うぞよ」

「なら欲しい分だけ自分で狩るんだな」


冬馬は懐から銃を取り出すと引き金を引いた。

森に響く銃声と硝煙の匂い。

冬馬が元々持つ銃と叶恵から没収したリボルバーの二丁持ちという最強装備。


「死ぬなよ」

「それは怪盗も同じであろう」

「怪盗は死を恐れない」


犬歯を剥き出しにし敵意は持っているが不意な攻撃を恐れて周りをグルグルと回るだけ。

だが銃とゲートを持つ冬馬からしたら格好の的である。


「止まっていたらただの的。射的は大の得意なんだ」


ゲートに銃を入れ発砲すれば、前後横と縦横無尽に飛び回る弾丸の完成。

予知能力でもない限り回避は絶望的。

銃声がした時には既に弾丸が眉間を貫いている。

動体視力を強化された冬馬に死角などない。次々と魔獣の眉間を弾丸が貫いていった。


バリン!


「怪盗!割れたぞよ!」

「なら帰還する。舌噛み切りたくなきゃ口閉じとけ」


冬馬はニュークを抱えうると上空へと逃避した。


「もう一つはどうする気じゃ。また妾が強化して殴るのかえ」

「いや、鬼神でヒビしか入らないのならもうやることは一つだ」


冬馬はもう一つの魔法陣の上にゲートを開くと黒い影を落とした。


「あれ?冬馬ちゃん!?」

「その魔法陣割るまで帰ってくな」

「やーい。妾の嫁を寝とるからじゃ」


ニュークの発言が気になったが触らぬ鬼神には祟りなしという日本に古来から伝わることわざを思い出し冬馬は口にチャックした。


『お父さんの嫁さんがリーネ。リーネの娘がメア。寝取られたから娘に鞍変えを……』

「それ以上言うと死ぬど」


わからない人のためにもう一度。

触らぬ神に祟りなしという言葉はしっかりと覚えておくように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ