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第118話 最終兵器準備

家に帰った冬馬はその足でパルの部屋へと向かった。


「パル。道化だ。開けるぞ」

「どうぞっすよ」


声がして開けてみてもパルの姿は見当たらない。

それもそのはず、パルがいるのは自宅ではなくパルの工房なのだから。


「ご主人が前に使ってた兵器の修復完了したっすよ」

「悪いな。仕事だけさせて」

「いいすよ。自分は元々専属の鍛冶師ってことで同行してたんっすから」


パルの仕事は戦闘後の武具の手入れが主だった。

自身の大剣は勿論、叶恵の剣や冬馬の刀まで鍛冶という範囲内の物は全てパルが管理と修復を行っていた。


「この武器、大分高火力っすけど本来の使用用途はなんなんすか」


パルから渡された銃。冬馬の父、慎也との一戦で使ったスナイパーライフル。


「本来は狩猟が目的だ。これは単発式だろ?これを改良して連射式にしたライフルが人間や物体に向けられてたんだ」

「銃でも十分な威力なのにそれより上を求めたんすか?」

「飛距離が全然違うし攻撃面を強化すれば相手は防御面を強化するといったように。いたちごっこだったんだ」


パルの疑問はごもっとも。

ボウガンが最新鋭のこの世界で銃はオーバースペック。

未知の武器の先を求める気持ちをパルは理解出来なかった。


「ま、この世界に銃が来るのはもう数百年先だ。メアが望めばその限りではないが」

「平和主義者のメアさんに限ってそんなことはないっすよ。試し撃ちしていきますか?」

「ああ、本番で使えないとなったら困るからな」


パルの技術ではスコープなんてものは作れない。だが冬馬にはピエロ面という暗視機能や生体反応感知機能など多種多様の機能を搭載したものがある。

ピエロ面越しに構えればスコープなど必要ない。

故に、正確無比な弾道が完成する。


「ふむ......リコイルが激しいな」

『現代のと比べたら粗悪品も粗悪品だから仕方ないよ。ライフリングもないし構造も火縄銃の亜種みたいなもんだし』

「言ってやるな。未知の文明の武器を作れるだけでも素晴らしい技術なんだ。それに、今の状況で贅沢は言ってられないだろ」

「ご主人。どうっすか」

「問題ない。弾の量産にかかってくれ」

「了解っす。あ、属性を付与した弾丸の発注について少しいいっすか」

「ああ、構わん」


冬馬が見せられたのは弾丸の種類と効果が書かれた紙だった。


「この爆破系や炎系は同じ火薬なんで問題ないんすけど、氷とか雷とかが難しいんすよ」

「なにが難しい。付与か」

「効果というか、威力というか......申し訳ないっす。自分もなにが分からないのか分かってないっす」

「そうか。なら一から考えようか」


冬馬は近くにあったペンを持つと紙に書き起こしていった。


「分かると言っていた爆破系から行くが、これらはそのまま着弾と共に爆破。先端にでも衝撃感知魔法でもつけて先端が潰れたら爆破という効果でいい。炎もまた同じで発砲と同時に燃えるんでも着弾から燃えるんでもどちらでも構わない。ここまで解釈の違いは大丈夫か」

「大丈夫っす。あ、でも爆破系は着弾と同時に爆破か発砲から秒数で爆破のどちらがいいっすかね」

「それはどちらでも構わない。どちらにしろ、目標に届かなければ意味がない。この拳銃で射程距離、届く範囲は300メートルほど。このライフルでも1キロが限界だから楽な方で構わない」

「じゃあ、着弾と同時に爆破にしとくっすよ」

「頼む。次に、分からないと言っていた氷と雷についてだが、氷は着弾後に効果がある魔法を、雷は発砲と同時に効果を発揮するようにしてくれればいい。氷はこのライフルの弾丸に、雷は出来ればどちらの弾丸にもだ。出来るか」

「出来るっすよ。ただ魔法はあまり得意じゃないんで、時間がかかるかもっす」

「これは最終兵器だから最悪間に合わなくてもいい。ただ無理はするな。パルには道化のパーティの補助役を守るという大役があるのだからな」


実際に神と対峙した時に冬馬は恐らく叶恵達の側にはいられない。

そこで問題となってくるのが誰が叶恵やアシュを守るのかという問題。

メアの防御は魔力によるもので魔力が切れたり、魔力を奪われたらなに出来なくなってしまう。

そうなったら残るは魔力というリソースを必要としない攻撃による防御だけだ。


「ゆっくりでいい。出来るのを気長に待っている」

「はいっす。出来るだけ早くお届けするっすよ」


パルの工房から出た冬馬は自室としている部屋に向かった。


叶恵達が各々自分好みに装飾してる中、冬馬の部屋は殺風景だった。

置いてあるのはベットと机と椅子だけ。

観葉植物やおしゃれな置物も置いていない。

深夜帰りのサラリーマンでももっと人が住んでいる感が出せるだろう。


「疲れる」

『少し休んで。心拍数が不安定』

「鍵はかけた。今日くらいはゆっくり過ごそう。少し働きすぎた......」


言い終わる前に冬馬は夢の中へと旅立っていった。

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