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第117話 友好関係構築完了!

「それで、人間側はこれでよいだろうが魔族側はどうする。まさか人間と同じように王達でゴリ押しする気ではあるまいな」

「魔族は一個人の意思が強いからな......反発が生まれるだろうな」

「それならもっと簡単だ。友好の証として物を貢げばいい。魔都を一度訪問した時に寂しさを感じた。枯れ果てた大地では育つ作物にも限度があるんだろう」

「だがそれは逆に溝を生むのではないか?」

「物資が厳しい中、友好関係を築いたという相手側からの物資なら喜んで使わないか?」


と、冬馬は言うが冬馬なら裏があるのではと疑うだろう。


「それなら、ニューク様とメア様に出て貰ってから渡すというのはどうですかな」

「レジレスの言う通りね、アタシとニュークは渡す物資を集めるわ。一応国庫にも蓄えはあるから多少持ち出しても大丈夫だけど」

「くれぐれも馬鹿な真似をして死なんようにな」


ニュークは尖った八重歯を見せて二っと笑った。


「道化は死なん。人を騙すのが怪盗であり、死することが怪盗ではない」


冬馬が魔都に飛ぶと兵士の詰め所へと向かった。


「ニューク様いかがなさいましたか」


ニュークの変装をして。


「うむ。皆に知らせがある。至急広場に集めて欲しいのじゃ」

「......ニューク様。お身体の調子が悪いので?」

「なぜそのような事を聞く」

「いえ、感じられる魔力が少なく思われるのです」

「馬鹿もん。王たる妾の魔力を駄々流れ状態でここまで来いというのか。皆恐縮してしまうわ」

「そのような事に気がつかず申し訳ありません。至急、民を集めます」

「うむ」


兵士詰め所の中にいる仲間と共に招集に向かうと冬馬はゲートを開いた。


「見事な変装じゃの。姿から声や口調までそっくりじゃ」

「これが道化の変装術。変化の魔法ではないからエルフの魔法にも魔族の魔力察知にも引っかからない非情に便利な技術だ」

「一応国庫には着いたからいつでもいいわよ」

「了解した。広場についたら出てもらう。その準備をしておいてくれ」

「わかったわ」


冬馬がゲートを閉じると屋根伝いに広場へと向かった。


『なんで変態に変装したの』

「王の姿なら怪しまれないし楽だからな」

『もっと効率いい方法があるのに』

「あるか?」

『いつもみたく広場で宣言すればいい。既に完了した事柄なら宣言するのは簡単なはず』

「それじゃあ反発を買うだけだ。魔族に集団心理なんてものは効かない。例え1人でも俺に殴りかかってくるさ」

『本音は?』

「折角用意したニュークに変装したかった」


何度目か分からないノイズが冬馬の耳を襲う。


「怒るなって。やってしまったものは仕方ないことなんだ」

『昔は効率厨だったくせに』

「今でも十分効率厨だろ。友好関係なんてメアの代全てつぎ込んでやるような事なんだから。そろそろ広場だから切るぞ」


八重との通信を終え、冬馬は広場へと立った。


「皆の者!よく集まった!そして集めた兵士諸君はご苦労じゃった!して、なぜこのように集まって貰ったかと言うとじゃな、この度妾は人間と友好関係構築に成功した!これにより王国との物流を再開し今の苦しい生活とはおさらば出来るじゃろう!その証拠に!女王メアから贈り物がある!」


冬馬は後ろへと下がり、視界から消えた所で本物のニュークとメアを出した。

元の姿へと戻った冬馬はゲートを広げ、大量物資を出した。


「ここにある物全てメアからの贈り物じゃ!今この場で誓おう!妾達魔族は再びかつての栄光を取り戻すと!」


ニュークが力強く宣言すると民衆からは歓声が上がった。

それだけでニュークの王としての器が見て取れる。


「流石の器だ」

「そうね。アタシじゃ絶対にあそこまで統治は出来ないわね」

「王都と比べたら魔都なんて一区画ほどしかない。狭い分、綿密に統治が出来たんだろうよ」


だがその統治が行き届かない程に魔都は疲弊していた、

食べ物は碌に育たず、その日暮らしがやっとな程に。


「アタシ達は配るけどピエロはどうする」

「パルの元へと行かなければならないが、すぐに離れるのわけにもいかない」

「なんじゃ、妾の守りに不安でもあると申すか」

「万が一に備えてだ。道化は昔からそういう怪盗だ」


本当に緊急でない限り、冬馬は準備は怠らない。

例え完全でなくでも最善の状態で臨むのが冬馬のやり方である。


メアとニュークが食料やら衣服やらを配り始め冬馬は後ろでなにがあってもいいように控えていた。


「何が目的だ」


後ろから聞こえた冷たい声。

殺気はなく気配もない。あるのは声とそこにいるという生体反応のみ。


「なんの話だ」

「お前だろ。この友好関係を指示したのは」

「待て待て。話が全く見えない。道化が無理矢理させたとでも言うのか?お前たちの王は人間ごときの小細工に引っかかったとでも言うのか?」

「目的を言え」


有無を言わせぬ口調。怒りを含んだ声ではあるが決して殺意があるわけではない。

それゆえにニュークは気がついていない。


「そんなに聞きたきゃ、直接聞けばいいだろうに。渡すついでに聞けば答えてくれるだろうよ」

「お前がいる時に正直に話すわけないだろ」

「なら道化は消えるとしよう。これで聞けるだろ。そもそも、人間の力で魔族の王を殺せるとも思わない。返り討ちに合うのがせいぜいだ」


冬馬は肩を竦めるとそのままゲートへと姿を消し、冬馬の背後の気配もいつの間にか消えていた。


「どこでバレたんだろうな」

『気配だよ。魔族は魔力に敏感で察知力は種族の中でトップクラス。変装がバレた。変装で無理矢理場を用意したばかりに疑問に思った魔族が接近してきたって感じだよ』

「素直にニュークを出していれば良かったか。ま、障害にならなければいいが」


冬馬は一仕事終え、家へと帰った。

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