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第109話 性別不明の子供が出来ました

冬馬が家に帰りリビングのソファに寝そべるとびしょびしょに濡れたタオルが乗せられた。

そんなことをする人物は1人しかいない。


「ピエロ様」


アシュよりも幼い声で呼ばれ顔だけ横を向けると冬馬と同じ高さに視線を合わせた子供がいた。


「綺麗になったな。黒髪はこうでなくちゃな」

『変態』

「許せ妹よ。現実逃避には必要なことなんだ。ところで、名前は」


冬馬が聞いても子供は首をかしげるばかり。


「その子、孤児だから名前なんてないわよ」

「僕もバルに付けてもらった名前だから」

「そうか。便宜上あった方がいいだろなにがいい」

「......分かんない」

「まだ言葉を教えたばかりだから名前が思いつかないのよ」

「そいつは困った」


冬馬は18から怪盗業に手を染めており恋愛なんてしてこなかった人間である。

恋人はおろか結婚なんていうのは数次元先のこと。

そんな男に子供の名前なんて思いつくわけもなかった。


「メアとアシュが決めろ。道化は少し休む」

「そんなわけにはいかないでしょう」

「この子はピエロが拾ってきた子。世話しないとダメ」

「疲れてるんだ」

「これがメアさんが言っていた『疲れてるを理由に家事をしない夫』の図っすよね」

「ええ、疲れてるのはこっちだって一緒なのにねー」

「待つのも疲れますもんね」


遠まわしに刺してくるな。

出来れば本当に頭を使いたくないんだが。


「そうだな......こいつの性別ってなんだ」

「ない」

「は?」

「ない」


性別がない?

そんなことがあり得るのか?


「一部の魔族は性別を持たない。淫魔とか性に関わる種族が血族にいれば話は別だけど」

「こいつの血族にはいなかったと」

「そういうことっすね」

「そうなると名前がな......男でも女でもない普遍的な名前」


日本の名前にも男女問わずつけられる名前はいくつかある。

そもそも冬馬は異世界の名前の法則だとか意味だとかは知らない。


「そうだな......メリーなんてどうだ」

「意味は?」

「今見た目的に女として見られることが多いだろう。どうせ怪盗を始めたら偽名を使うからいいんだ」

「それはピエロに限っての話でしょ」

「だが名前を2つ以上持っていて不便はない。仕事を複数持つ時に気持ちを入れ替える面って意味でも重要だ」

「ありがとう」

「敬語も教えなきゃだな」

「ピエロは使わないのに?」

「変装する時に使えないと変装する人物が限られるからな。あって困る知識じゃない」

「メリーもピエロ側に落ちてしまうのね」


それも育て方次第。

冬馬の場合、叶恵がいたため軌道修正が出来なかったし冬馬自身するつもりもなかった。

だが、メリー本人が望むのなら義賊という選択肢もありなのだ。


「ま、それはメリー次第だな」

「ピエロ様」


メリーは少し戸惑ったような顔をしながらも冬馬にすりよった。

アシュのような甘えた感じを出さずに完全に体重を預けることはしない。


「違和感」

「アシュも最初はこんなだっただろ」

「もっと自然だった」

「さいで」


冬馬はメリーの頭を撫でた。

その光景はまさに親子。

黒髪ということで日本人らしさが出てるし言葉が拙いのが幼さを助長させる。

見知らぬ場所に見知らぬ人が周りにいて緊張しているのか冬馬に罵詈雑言を飛ばした威勢はない。


「ご主人はなぜこの子を連れて来たんっすか?連れて来た時はかなりボロボロだと聞いてましたが」

「現実逃避のための駒だ」

「意味わかんない。急にいなくなったりしてる理由と合わせれば説明が出来るんじゃなくって?」

「そうだな。他人事ではないし伝えておくか」


冬馬は海上の魔力結集とルージュ達と出した推測を話した。


「神が出ようとしてるって突飛過ぎない?」

「道化が観測出来たのは最近だ。猶予はあまりない。一応対抗策はとってあるが効果があるか分からない」

「珍しいっすよね。ご主人がそんな不確定なことをするなんて」

「初めてのことだと思う」

「正直、道化ですら情報が手元にない状態だ。各種族の王と考察して出た答えを照らし合わせて重なった部分を言っているに過ぎない」

「戦うつもりなの?」

「さっきも言ったが神の目的はエイミ、つまりは叶恵自身だ。そもそもエイミを殺した神が大人しく帰るとは思えない」


エイミを狙ってなにをするのか知らないが駒を奪うとはいい度胸だ。


「で、その現実逃避でメリーを連れて来たと」

「ああ、道化の技術を他人に教えるのは簡単ではないが時間が掛かるからこそいいと言うものもある」

「連れてくるのは構わないけど、ちゃんと面倒みなさいよ?出かけてくるから1週間頼んだとか言ったら怒るから」

「分かってる。これからよろしくなメリー」

「うん。お願いします」


まだまだ語彙は成長の余地ありだが日に日に成長する子を見る父親の気分になった冬馬だった。

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