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第10話 夜話

メイドにピエロ捜索を依頼してから2日が経った日の夜。


「申し訳ございません。今メイドともども探してはおりますが白黒の道化の面の発見には至っていません」

「そう......仕方ないわよ。旅人っぽかったしもう王都から出ているかもしれないもの」


メアは半ば諦めていた。

メイドが退室するとベランダに出て満月が昇る夜空を見上げた。

日本の都会とは違いいくつもの星が輝く空だった。


「ピエロ......どこに行ったのよ」

「道化の名を呼ぶのは誰であろうか」


道化の名前を耳にしたメアは振り返った。

そこにいたのはにっこり笑顔のピエロ面をした冬馬だった。


「こんな夜更けに道化になにようか」

「あんたと話しがしたかったの」

「話?」

「昼間の会話、聞いてたでしょ?」

「なんのことだか」

「誤魔化しても無駄。今のあんたと同じ気配が応接室にあったから」

「それより要件を言え。道化は忙しい」


冬馬はあからさまに話題を逸らした。


「魔族を王都に入れたいんだけどどう思う?」

「無理だと思う」

「やっぱりそうなのかな......」

「そうだろう?も言っていた通り危険すぎる」

「やっぱりいたんじゃない」

「うるさい。いたからなんだ」

「開き直る気?お母様の頃だったら死刑よ?」

「道化に死刑が通用するものか。魔法だろうが刃だろうがすべて飲み込むまで」


冬馬は面の中で不敵に笑った。


「善の魔族だけ王都に入れることはできない?」

「知らん。道化が考えることじゃない」

「協力しなさいよ。あんたのせいでここにいるんだから」

「は?」

「抜け道に煙撒いたでしょ。そのせいでメイドに見つかったんだから」

「抜け出す活発王女が悪い」



「うるさいわね......」とメアはをそっぽを向いた。


「善の魔族だけを入れるのは不可能だ。多少なり悪の魔族も入ってしまう」

「じゃあどうしたら......」

「悪の魔族を根絶やしにすればいい。武器をつきつけ抵抗したら悪、しなかったら善。それが一番効率的な選別方法だ」

「それじゃあ和解するより溝を生むだけじゃない」

「そうだ。和解ではなく支配をするんだ。今現状で出来るのはそれくらいだ」


冬馬はメアに現実を突きつけた。


「アタシが望む王国は誰もが笑い合い幸せに暮らせる国よ」

「無理だ。少なくとも誰かが魔族に変わるほどの悪役になる必要がある」

「ならアタシが……」

「魔族の悪を背負うということは王族殺しの罪も背負うということだ」

「それは……」


冬馬の言葉を聞きメアは躊躇した。


「メアが魔族の罪を背負うのは構わないが兄殺しの罪も背負うことになるんだぞ」

「それでも……」


それでもいいと言えるならとっくに政策を施行しているか。


「他に手があるとすれば兄殺しの犯人を探して殺すことだ。そうすれば民衆の納得を少しは得られるだろう」

「そんな……広い国の中からどうやって魔族を探すというの?」

「知らん。そこは道化の管轄外だ」


ただ冬馬には1つ手があった。

王城でメアの話を聞いている時に偶々耳に入った情報。

メアの会話を聞きながらだったため半分ずつしか聞いてない。


「ジョーカー。録音は出来ているか」

『バッチリ。流すね』


八重の合図と共に録音された声が流れ出した。


『ウェル……どうな……る』

『もんだ……なく……誰にも……ない』


音が籠っているのか、相手が地下なのかよく聞こえない。


「……ま、頑張れ」

「ちょっと!教えなさい!女王の命令よ!」

「道化は命令には従わない。例え誰であっても従わない」

「女王の命令よ?王国で暮らせなくなるのよ?」

「だからどうした。邪魔なら殺すだけだ」


冬馬は冷たく言い放った。

あまりにも声が冷たすぎてメアが座り込んでしまうほどだった。


「どうするかはお前次第だ。また道化に用があれば呼ぶがいい」


冬馬はベランダから飛び降りるとそのままゲートへと入っていった。


「陛下!如何なさいましたか!」

「大丈夫よ……少し驚いただけだから」

「あの道化面は何者なんですか」

「アタシにも分からないけど。目は見えなかったけど凄く冷たかった」

「冷たかった?」

「うん。怖かった」

「危ない真似はおやめください」


メイドの制止にメアは首を振った。


「やめるわけにはいかないの。どれだけピエロが危険だとしても魔族との和解の為にはピエロの力が必要なの」

「ですが……」

「大丈夫。ピエロは言動に気をつければ安全だから」

「どうしてそんなことが言えるのですか」

「夜にアタシと2人っきりよ?誘拐したり殺したりなんでも出来た。のにピエロはなにもしなかった。アタシには興味がない証拠じゃない」


メアの前向きな考えにメイドは目頭を押さえた。


「分かりました。陛下がそうおっしゃるならお好きになさってください」

「ええ、そうするわ」

「ですが、今宵は遅いのでお休みください。明日の公務に支障が出てしまいます」


メイドはメアをベットに運ぶとお辞儀をして退室した。


「全く。世話にかかる女王だ」

『 ああいう博愛主義者はどの世界でもいる』

「さあて、どうするかな」

『録音の主を探す?』

「いや、その前にオスカーの情報だ」

『オスカー・クラディウス。生まれは王都、女王とは幼馴染であり婚約者。死ねばいい。それでプライベートは孤児院を経営していたり貧困の村に自ら出向き農業の技術を教えたり家屋の修復方法を教えたりしている。まあ、分かりやすくいうと善人しかも超がつく程の』

「だが超がつくほどの善人には必ずと言っていいほど裏がある。予定が決まったな」


冬馬が不敵な笑みを浮かべゲートをくぐると宿屋の部屋に向かった。

宿屋のベットでは叶恵とシープが毛布に包まり寝ていた。


「怪盗がすぐ側にいるというのに」

『襲えば?』

「バカ言え、興味もない女を食えるか」

『興味があったら食べる?』

「食べる」


突如として冬馬の耳につけたイヤホンからハウリングの音が聞こえた。


「痛っ!なにすんだよ」

『食いしん坊を止めなきゃいけないから』

「冗談だろうが」


冬馬はベットに身を横たえる。


「明日はオスカーの調査だ」

『わかった。おやすみ』

「おやすみ」


八重との通信が切れると冬馬は眠りをついた。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  ちゃんと女王になるべき存在らしく、悩んでいるところは実に良いですねぇ! 年相応らしく、どこかの行き遅れた女性とはえらい違いです。 [気になる点]  うーん、この。  まず気になったところ…
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