1.今まではあり得なかったこと。
番外編、開幕(*‘ω‘ *)
ノベマさんのコンテストにも応募しました。
そちらでも完結したので、応援よろしくお願いいたします!!
「赤羽さん、好きです!! 付き合ってくださいっ!!」
「あの、ごめんなさい!!」
意を決して告白した上級生に、ミレイは申し訳なさそうに頭を下げる。
これで今月に入って5回目だった。野球部のキャプテンやエース、他にも女子人気の高い男子から想いを告げられたが、彼女は一貫して同じ答え。
理由は言わずもがな。
ミコトという想い人がいるからだ。
様々な苦難を乗り越えて、ミレイと彼は結ばれた。
もちろん学校では内緒の話であるため、このような事態になっているわけで。ミレイは悲しげに立ち去る男子生徒の背中を見て、しゅんと眉尻を下げるのだった。
「気にする必要はないですわ」
「あ、御堂さん。もしかして、見てたんですか?」
そんな少女に対して、凛とした声をかけたのは御堂アカネ。
校内で唯一ミレイの素性を知る彼女は、どうにも覇気がない相手に対して大きなため息をついた。
「貴女には、もっと想うべき人がいるでしょう?」
「それは分かっているのですけど、どうしても……」
「本当に、優しいというか、甘いというか。そんなことで、彼のことを支えられるのかしら?」
共に死線を潜り抜けた親友であり、恋敵。
そんなアカネだからこそ、口にできる言葉でもあっただろう。
ミレイもそのことを重々承知しており、やや自嘲気味に笑いながら頬を掻いた。
「えへへ……。ごめんなさい」
「まったく、頼りないですわね。そんな感じだと、わたくしが――」
思わず謝罪する少女。
するとアカネは、またため息をついてからミレイの耳元でこう囁いた。
「ミコトのこと、もらってしまいますわよ?」――と。
それを聞いた瞬間、さすがのミレイも背筋がピンと伸びた。
そして、とてつもなく真剣な表情と声色で叫ぶ。
「そ、それは絶対にダメですっ!!」
それこそ、校内に響き渡るような声で。
周囲にいた生徒が、何事かと振り返る様子を見てミレイはハッとした。
「う、うぅぅ……! 御堂さんのいじわるぅ……!」
次いで顔を真っ赤に。
それを手で覆い隠して、打って変わって消え入るように言うのだった。
アカネはそんなミレイを見て、しばし顎に手を当てて考え込む。そして、このように訊ねるのだった。
「ところで最近、あまり彼と話していないのではなくて?」
それというのもミコトとミレイ、そしてアレンが身を寄せる御堂邸宅でのこと。アレンのことはひとまず置いておくとして、アカネは恋仲の二人が言葉を交わしている機会が少ないと感じていた。
アカネの問いかけにミレイはしばし黙り込む。
覆っていた手を戻してから、ようやく彼女はこう口にするのだった。
「……だって、ミコトくんは勉強で忙しそうですし」――と。
それを聞いて、アカネも納得した。
ミコトは先の事件が終焉した後、ミレイと新たな学生生活を送るため『御堂大学』の受験を決めたのである。しかしながら、そこは全国有数の偏差値を誇っており、現状のミコトでは到底合格など不可能だった。
もっとも、アカネの家が運営している私立大学である。
彼女の口利きであれば、裏口入学も可能だった。しかしミコトはそれを拒否し、御堂大学に見合った学力を身につける、と宣言。
結果として彼は、日夜遅くまで勉学に励むことになった。
「まさか、その邪魔をしてはならないと?」
「……うん」
「おバカ……」
事態を把握し、アカネはがっくりと肩を落とす。
本当にこの二人は変なところで真っすぐというか、もどかしいというか。互いが互いのことを考えているのに、それですれ違っていては意味がない。
いまや財閥のトップになった少女は、何度目か分からないため息をつくのだった。そして、しょんぼりとするミレイの顔を真っすぐに見て言う。
「そんな気遣いができるなら、彼の息抜きになってあげなさい」
「息抜き……?」
それにミレイは首を傾げた。
察しが悪い彼女に、アカネは肩を竦めて続けた。
「もうすぐ、クリスマスでしょう? たまには二人で遊んできなさい」――と。
そう言われてミレイは、ようやくこの季節の行事を思い出した。
マフィアのボス、その娘として命を狙われ続けた少女にとっては縁遠かったイベント。誰もが心を落ち着けて神に祈りを捧げる生誕祭。
曰く、日本では恋人同士が愛を語り合う日だということだった。
「少しでも、息抜きに…………そっか! ありがとう、御堂さん!!」
ミレイはアカネの提案に胸を躍らせる。
そして感謝を伝えて、元気よく走り去るのだった。
「まったく、本当に世話が焼けますわね……」
そんな恋敵を見送って。
アカネは、少しだけ笑みを浮かべるのだった。
※ノベマのコンテストに応募しました。リンクは貼れませんが、もしよろしければそちらでも応援よろしくお願いいたします。
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