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3.ミレイとの成就






「あぁ、お帰り。――ミレイ」

「ただいまです、ミコトくん」


 俺が御堂邸の中庭でくつろいでいると、ミレイがやってきた。

 どうやら今日も平穏無事な学生生活を送ったらしい。


「ミコトくんがいなくなって、みんな寂しがってますよ?」

「いやいや。俺はボッチだし、誰もそんな――」

「田中くんとか」

「田中……」


 俺の腰かけるベンチ――その隣に座りながら、彼女はくすりと微笑んだ。

 だが、ふっと息をついてから寂しげな表情になる。

 そして、こちらの顔を覗き込みながら言った。


「もちろん、あの場でミコトくんに救われたみんなが感謝していました。いつでも帰ってきていいって、帰ってきてほしいって、みんなが言ってます」――と。


 それを聞いて、俺もさすがにぐっとくる。

 しかしもう戻れないのだ。俺が戻れば、ミレイの素性がバレる。

 彼女が平穏な学生生活を送れないことの方が、俺にはもっと辛かった。だから「大丈夫だよ」と、そう笑顔を作ってミレイの頭を優しく撫でる。


 俺はきっと、こうなる運命だったのだから。

 ミレイと出会って、ダースやアレンと出会って、後悔などしていない。


「それに、もしかしたら御堂大学に行けるかもしれないからな!」

「え、本当ですか!?」


 そう言うと少女はパっと表情を明るくした。


「それなら私、御堂大学を受験します! そしてまた、ミコトくんと同じ学校に通いたいです!!」

「ははは、ミレイは自分のやりたいことを優先していいのに……」


 そして、胸の前でぐっと拳を握って意気込む。

 そんな彼女に、俺は思わずそんな返答をしてしまった。すると、


「むぅ……!」

「へ……?」


 途端にミレイは膨れっ面になり、どこか納得いかない目で俺を見つめる。

 何がなんだかわからない俺は呆然としてしまった。そうなるとまた、少女は幼い態度を取るのである。そんでもって、


「やっぱり、ミコトくんは鈍感さんです!」


 よく意味の分からない言葉をぶつけてくるのだった。


「鈍感さんって、そんな――」

「どーんーかーんーさーんー!」

「痛い、痛いって!?」


 鈍感さんなる称号を撤回してもらおうとするが、ポカポカと叩かれてしまう。

 そんな力を込めてはいないだろう。だが戯れるようなそれでも、痛いものは痛かった。なにこの状況、ホントに……。


「本当に、鈍感さん……」

「……ミレイ?」


 しかし、それもじきに終わりを迎えて。

 ミレイは俺の胸に顔を埋めて、ポツリとそう言うのだった。



「早くしないと、他の誰かのところ――行っちゃいますよ?」

「え……、それって?」



 そこまで告げられて、俺はようやく理解する。

 しかし、どこかで迷いが生じてしまった。本当にいいのか――と。



「ミコト、くん……?」



 熱のこもった視線を向けてくるミレイ。

 俺の名を口にする息遣いも、胸の鼓動も良く分かった。



「あの時の返事、今しても良いですか?」



 ふっと、胸が温かくなる。

 あぁ、ここまできたら目を背けるわけにはいかないな。



 俺は覚悟を決めて、彼女に真正面に向き合った。

 すると、ミレイも一つ頷いて……。






「大好きです。ミコトくん……」






 夕日の差し込む中庭で。

 俺とミレイの影は、ゆっくりと重なった。




 


次回、もちょっとだけ。

もう一人の『家族』のワンシーンを入れて、終了です。

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