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2.アカネとの対話






「御堂大学に入りたい、ですって?」

「いいや、俺はそこまでじゃないんだけど。アレンがアカネに頼めってうるさくてさ。それで実際のところどうなんだ。入ろうと思えば、入れるのか?」

「無理、ということはありませんが……」


 アカネの部屋を訪ねて、アレンからの提案を説明する。

 彼女の自室は意外にもテディベアや小物が並ぶ、非常に女の子らしいところだった。ただ一点、天蓋付きのベッドは少女らしさの欠片もなかったが。

 そんなベッドに腰かけて、アカネは考え込む。

 俺はその隣に座り、彼女の答えを静かに待つことにした。


「そうですわね。条件を出すとしましょう」

「条件……?」


 そうしていると、不意に少女はそう口にする。

 俺はどういうことか分からず、首を傾げることになった。が――。



「おわっぷ!?」



 その時である。

 俺はアカネにベッドへと押し倒された。

 そのまま馬乗りになった少女は、口元にどこか熱っぽい笑みを浮かべる。


「あのー、アカネさん? これはどういう――」

「条件ですわ。ミコト、貴方はわたくしの物になりなさい?」

「…………なんですと?」


 そして、そんなことを仰った。

 そこで俺の思考は凍り付き、身動きを取れなくなってしまう。


「抵抗しないのでしたら、続けますけれど?」

「いや、それは困るな……」


 ボンヤリとしていると、アカネはそう言った。

 苦笑しつつ何とかそう返すと、彼女は少し残念そうにこう口にする。


「まぁ、いいですわ。でも、わたくしの物になる、というのは絶対条件ですわよ。具体的に言えば、そう――家にいる間は、専属の執事になっていただきます」


 そして、出てきた言葉は意外なもの。

 俺はあまりに想定外のそれに、思わず間の抜けた声を上げた。


「……へ、執事?」

「そうですわよ。なにか不服がありますの?」

「いや、そうでなくて……」


 そこでついつい、頬を掻きながらこう言ってしまう。



「てっきり、今みたいな相手をしろ、的なのかと」――と。



 瞬間、部屋の中には沈黙が生まれた。

 アカネは目を丸くして、今の俺たちの体勢やらなにやらを確認。

 そして、瞬きを何度も繰り返した後に、顔を真っ赤にして――。




「ふ、不潔ですわ――――――――――っ!!」

「べぷらっ!?」




 ――ベチコーン!!

 俺の頬を全力で引っ叩いた。

 視界に星がいくつも、ちかちかと……。


「ふふふふ、不潔です! ななな、なにを仰っているのかしら!?」

「いや、流れからして……」

「ふえぇっ!?」


 こちらの指摘に、アカネはさらに怖気づいたような声を発する。

 先ほどまでの威勢はどこへやら。



「と、とりあえず!! ――ミコトは大学へ通う四年間は、わたくしの執事になるのですわ! いいですわね!?」


 涙目になりながら、そんなことを言うのだった。


「分かったよ、ありがとうな」

「わ、分かったなら良いのですわ!」


 答えると彼女は俺を解放する。

 起き上がり、再び並んでベッドに腰かける形になった。

 少しの間を置いてから俺はふと、アカネに対しての疑問を口にする。


「そういえば、どうして俺にそんなによくしてくれるんだ?」――と。


 それは、かねてよりの謎だった。

 初めて会ったのは、つい先日のはず。それだというのに、アカネは命懸けで俺の考えた作戦にも参加してくれた。どうして、彼女はそこまでして――。


「良いのですわ。貴方が、憶えていなくても」

「え……?」


 考えていると、アカネは小さな声でそう漏らした。

 そして、呆ける俺に向かって明るい笑みを浮かべてこう言うのだ。



「わたくしは、恩に報いているだけですわよ?」――と。





 そこには、どこか寂しげな色も浮かんでいた。



 


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