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2.回り始めた歯車







『ミコト。アレンが家を出ましたわ』

「そうか、了解」


 俺は1人、今はもぬけの殻となった闇医者のいた部屋にいる。

 御堂邸からさほど距離のない、そして人気のないここにアレンを呼び出したのだ。アカネとダースにはそのことを確認してもらっている。

 都合上、スマホで連絡を取り合えるのはアカネだけ。

 彼女は緊張した声色で、俺にこう言った。


『でも、本当にアレンが? なにを根拠に、そう言っていますの』

「それは、これから分かるさ」


 だが、その問いかけに俺は半端な答えを返す。

 一つ息をついてから、銃の中にある残弾を確認した。カチャリ、と小気味の良い音。たった1発のそれを見て、また仕舞う。

 これからの勝負のためには、心細いものだった。

 それでも、変な動きをすれば計画が破綻するのは目に見えている。


「それに、俺が命を張らないで――誰が張るっていうんだ」


 残り1週間を切った寿命。

 どんな策を練っても、それが増えることはなかった。

 だとすれば俺の命はやはりそこまで、ということ。それまでにミレイを取り巻く環境を変えなければならなかった。きっと、それが俺の命の意味。


「なぁ、アカネ? 一つ、いいか」

『なんですの?』


 そう思って、俺はアカネにこう声をかけた。



「アカネ。俺がいなくなっても、ミレイの友達でいてやってくれるか?」――と。



 瞬間、電話口からでも彼女が息を呑むのが分かった。

 しばしの間を置いてから、明らかに涙ぐんだ声が聞こえてくる。


『――もちろん、ですわ。それを貴方が望むなら』

「ありがとうな。アカネ……」


 酷なことを言っている自覚はあった。

 それでも、アカネがそう答えてくれたことで、憂いはなくなる。何故なら彼女は『裏切り者』ではないのだから。友人として、信用に足る人物だった。


 だとするなら、いったい誰が『裏切り者』なのか――。


「そろそろ、動くかな」


 それを考えて俺が、小さく漏らした時だった。


『ミコト、今――』

「あぁ、聞こえた――動き出したか!」



 一発の銃声が、スマホ越しに。



 俺は自身の予想が的中したことに、幾ばくかの悲しみを覚えた。

 だけども、それに浸っている暇はない。


「――ミレイ!」


 愛しい女の子の名前を口にして、俺は御堂邸へと駆け出した。



◆◇◆



 ――数分前。

 ある部屋に一人の男性が現れた。

 その人物は、目的の相手――ミレイがそこにいないことを確認して、舌を打つ。おそらくは騙されたことへの苛立ちだろうか。

 しかし、そこまで悲観しているわけでもないらしい。

 すぐに切り替え、部屋を出ようとした。


「――――動くな」


 そんな男性に銃口を向ける者があった。

 彼は静かに、感情を殺したような鋭利な声をかける。人情深い彼ではあるが、今ばかりは冷徹にならなければならない。

 何故なら、目の前にいるのは敵なのだから……。


「本当にお前が『裏切り者』だったんだな」


 淡々とした口調で、いつもとは違う声色で。

 それがきっと、マフィア――『イ・リーガル』としての彼だった。

 しかしそんな彼に、相手はなにも応えずに振り返る。そして無言のまま、銃を取り出した。二人は互いに銃口を向け合いながら、静かに呼吸を重ねる。


 沈黙が続く。


 それを打ち破ったのは――。


「どうして、だ……」


 後から入ってきた者による、こんな問いかけだった。

 相手は静かに、同じく静かに一言。


「さぁ、ね」――と。


 小さく、笑った。

 そして次の瞬間――。





 一発の銃声が、鳴り響く。





「が――!?」


 それはきっと、一瞬の気の緩み。

 微笑みがあまりに思い出深い、それだったから。

 だから『アレン』は、即座に反応することができなかった。


「本当に、甘いわね。――アレン」


 うずくまる彼を見下ろしてから、もう一人は部屋を出て行った。

 最後にそんな言葉を残して……。



 アレンは一人となり、苦々しい表情を浮かべてこう言うのだ。






「どうしてだ。『ダース』……ッ!」――と。




 


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