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アングレカムの花言葉  作者: 豆大福
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ベルフラワー

※主人公視点

 片道、約2時間かけて歩いてきた僕はようやく宮殿の入口とも言える門の前にたどり着く。


 柵状になっている正門は大体僕が縦に三人並んだくらいの高さだろうか。

 僕が170cmないくらいだから、おそらく高さは5mほど。


 清潔感を感じさせる真っ白な宮殿と同じく正門も白で彩られ、ところどころに金で模様が入っているのが特徴だ。

 あえて白と金で統一しているのだろうか。

 建物にはあまり他の色は使われていない印象がある。


 その大きな正門の両端には見慣れた門番さんの姿があり、建物が白いこともあってキッチリと着こなした上下紺色の制服は遠めでもわかりやすい。


 だが、ふと疑問に思うこともある。

 いつどんな時に来ても服装が変わっていないが、暑い日なんかは大丈夫なのだろうかと。

 日がな一日突っ立っているわけではないだろうが、それでもぶっ倒れたりしないだろうかと少しばかり心配にもなる。

 仕事とはいえ、立ってるだけっていうのも大変だな。



「お疲れ様です。」


「あっ!おはようございます。毎週毎週遠いところ大変っすね。」


「否定はできないかな。さすがに片道2時間歩きっぱなしっていうのは大変だから。」


「でも音を上げずに頑張ってるじゃないですか~!

 やっぱアレっすか!?これも愛がなせるわざってやつっすか!?」


「えっ!?!?」



 僕から見て左側に立っている門番のアルマーノさんは僕とあまり年齢が変わらないのか若々しい見た目をしている。

 人懐っこい性格で気さくに話しかけてくれるので、この世界で同世代の友達があまりいない僕にしてみたら数少ない気軽に話せる相手の一人だ。


 思えば最初の頃も国王陛下や王妃様から宮殿に通う許可を貰ったとはいえ、やはり大丈夫だろうかと不安に駆られていたものだが、アルマーノさんのおかげで僕の不安はどこかへ行ってしまった。

 彼と話していると勇気付けられるというか、大丈夫な気にさせられる。

 そんな不思議な青年なのだ。



「アルマーノ、そんなズケズケと踏み込んだことを聞くもんじゃないぞ。」


「でも先輩も気になるっしょ?出会いが出会いとはいえ、なかなかあるもんじゃないっすよ。

 貴族でもない一般人が姫様と頻繁に会えるなんて。

 素直に羨ましいっす!!姫様可愛いっすから!!!」


「はぁ~…俺は陛下から許可を貰ったのがお前じゃなくてホッとしたよ。」


「どういう意味っすか!?!?」


「耳元で騒ぐな!!こんな落ち着きのないやつを病弱な姫様に会わせるわけにはいかんだろう。」


「ええええええええぇええええええええぇぇええええ!!!!」


「うるさいぞ!!!お前は少し落ち着くということを覚えたらどうだ?」


「先輩が年の割りに落ち着きすぎなんすよ!あと見た目と実年齢が一致してないっす!!」


「・・・・・・・」



 僕から見て右側に立っているのがタンツィオさん。

 若々しいアルマーノさんとは対照的に大人びていて、いつも門の前でどっしりと構えているので妙に安心感がある。

 アルマーノさんが”先輩”と言っていることからわかるように僕や彼よりも年上だ。


 だが、何故だろう。

 アルマーノさんの言うように見た目と実年齢が一致しない。


 最初の頃、タンツィオさんの年齢を聞いて目玉が飛び出るかと思うくらいの衝撃を受けた。

 それくらい彼には年相応に見えるだけの若々しさが全然ないのだ。

 肌つやはどう見ても僕らとそう変わらないのに、ガタイの良さや落ち着いた性格から滲み出ている雰囲気、そして何よりも本人には口が裂けても言えないがまだ20歳前には見えないほどの老け顔。

 これらがタンツィオさんの実年齢と見た目との不一致をより強調していると言ってもいいだろう。


 こうなんというか、数多の困難を乗り越えてきたかのような歴戦の勇者感が漂ってきているというか。

 兎に角、貫禄がありすぎて一回りも二回りも上に見える。


 それと意外にも傷つきやすいらしく、アルマーノさんに実年齢と見た目が一致しないと言われてだいぶショックを受けているようだ。

 背後に黒い靄がかかっている見えるのはおそらく気のせいではないだろう。

 今にもキノコを栽培しそうなほど落ち込んでいる。


 やっぱり老け顔だってことは死んでも言えない。



「えっと・・・、大丈夫ですよ!!そのうち全然気にならなくなるでしょうから!」


「そうっすよ!実年齢が見た目に追いついてくれば全然問題ないっす!!」


「お前ら慰める気ないだろ・・・」



 嗚呼、更に落ち込んでしまった。

 フォローが下手で大変申し訳なく思う。



「おっと!こんなところで立ち話してる場合じゃないっすね。

 先輩のことは放っておいて大丈夫なんで早く姫様のところに行ってあげたらどうっすか?」


「えっと、じゃあお言葉に甘えて・・・」


「それにしても縁くんが決まった時に来てくれるようになったんで、僕らが宮殿内に知らせに行くこともなくなったっすね~。」


「あー、今までどうもお手数をおかけしました。」


「いえいえっすよ。ただ・・・そのおかげで門の前から動ける機会が減っただけっすから・・・」


「・・・・・・」


(やっぱりただ突っ立ってるだけってのも大変なんだな・・・)


「あっ、縁くん!!」


「はい、なんですか?」


「今日は多分大変だと思うから頑張ってくださいっす!」



 アルマーノさんの言葉に僕は一瞬考え込んだが、嗚呼とすぐその言葉が意味することを理解した。


 少し振り返ってアルマーノさんと項垂れているタンツィオさんに軽く挨拶をしてから宮殿内へと足を踏み入れた僕は直前にアルマーノさんに言われた”大変”の意味を目の当たりにすることになる。


 今日は”どんな話をしようか”どころではなさそうだ。

ベルフラワー ≪楽しいおしゃべり≫

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