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アングレカムの花言葉  作者: 豆大福
12/59

ヤブランⅡ

※主人公視点

※サブタイトルを修正しました。

「着きましたね。」



 しばらく無言を貫いていたマリエッラの言葉でこの国を統べる王族の住む宮殿に着いたことを知らされる。

 真っ白で何階建てなのだろうと思うほど高い高い建物は町から少し離れた静かで広大な土地にその存在感を構えていた。

 緑に囲まれ、すぐ傍にある透き通った湖には大きな宮殿が上下反転して映し出されている。

 僕はそのあまりにも立派な建物になかなか言葉が出てこなかった。



「面倒なので気を失ったりはしないでくださいね。」


「っ!?しませんよ!!」


「そうですか。それでは国王のもとへご案内いたします。」



 ああ、今まではそれほど感じてこなかったが、一気に自分が場違いな人間である感覚が押し寄せてきた。

 実際、場違いであることは間違いないのだが。

 せめて粗相の無いようにしなくてはならない。


 宮殿の中に足を踏み入れると外観とはまた違う意味で衝撃を覚えた。


 外と同じく辺り一面真っ白な建物の中は掃除が行き届いていて眩しいくらいキラキラしており、綺麗に磨かれた床は先ほど見た湖のように建物の中のものを映し出している。

 中は広く、廊下だけでも僕が日本で住んでいた家の広間と同じくらいかそれ以上の広さがあるのではないだろうか。

 廊下でこれなら、各部屋はもっと広いはず。

 天井も高く、脚立を使っても手が届かないほどだ。


 それに物語の世界でよく出てくるようなメイドが当たり前のようにそこにいて、マリエッラと僕の姿を見つけるや否やペコリと頭を下げられる。

 メイド喫茶で見るような短いスカートではなく、踝丈の真っ黒なロングスカートに真っ白なエプロンと頭にはホワイトブリム。

 リアルなメイドさんに僕の心は躍った。



「…物珍しいのかもしれませんが、あまりキョロキョロしないでいただきたい。

 貴方を連れている私までおかしい人と思われるでしょう。」


「キョロキョロしてるのは否定しませんが、僕の扱いさっきから酷くないですか!?」


「仕方ないでしょう、変人なんですから。」


「はああああああ!?」


「うるさいですよ。」


「誰のせいで騒いでいると…」


「とにかく国王様や王妃様の前で変な態度は取らないでくださいね。」


「むしろ緊張で何も出来なくなると思いますが。」



 最初こそ初めて見る宮殿の中に興奮していた僕もこれから会う人たちに緊張しないほど鈍感ではない。

 マリエッラに案内されるままに宮殿内を歩いている間も少しずつ迫るその時に緊張して胸が締め付けられるかのような感覚が巡る。

 手がひんやりと冷たくなって、体のあちこちも固まってしまったかのように動きが鈍くなるのを感じた。

 踏み出している足もプルプルと震えが止まらない。



「はぁ~……」


「緊張しますか?」


「当然でしょう。こんな経験したことないんですから。

 僕の国で言うなら天皇陛下や総理大臣に会いに行くようなものですし。」


「まあ、この国に住む国民だってこんなことはまずありませんから緊張しても仕方ないですよ。

 あっても感謝の手紙かお礼の品をお送りするくらいでしょうか。」


「ですよねー。

 けど、どうして今回はそうではなかったのでしょう?」


「それは……

 あっ、着きましたよ。この部屋で国王様と王妃様、それに姫様がお待ちです。」



 マリエッラが何か言いかけたような気もするが、彼女は結局最後まで理由を話さなかった。

 今回に限って僕とエルベルトさんが呼ばれた理由はなんなんだろう。


 本当はマリエッラに話の続きを聞きたかったが、その前に目的地に着いてしまったので僕は聞くタイミングを失ってしまった。


 また後で聞けばいいだろう。

 そう思って僕はアンが待つ部屋の扉が今まさに開かれようとするのを眺めていた。

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