表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

西の街の魔女を捕まえたい

「西の街に魔女がいるらしい」


 そんな噂を耳にした。


 こんなド田舎の街に、魔女がいるとは到底思えない。


 しかし、自分の好奇心を抑えることはできなかった。


 小さめのリュックサックに、魔女を捕まえるための装備を詰め込む。


 コンビニで買ったオカルト雑誌、ダンボールカッター。十字架のネックレス、あとスーパーで買ったニンニク。


 魔女を捕まえる装備のはずが、ドラキュラにも応用が効きそうな装備に仕上がった。


 満面の笑みを浮かべながら、家を出る。


 先月購入したばかりの自転車へ乗り込み、力強くペダルを漕ぐ。


 西の街までは、十分ぐらい。

 田んぼの脇道に沿って真っ直ぐ進み、公道にでたら左折して、また真っ直ぐ進めば到着する。


 なんてイージーな経路だ。魔女がいるとは到底思えない。


 ところが、そう簡単に辿り着くことはできなかった。




 自転車を漕ぐ足が止まった。


 田んぼの脇道に、モンスターがいたのである。


 シーバー犬、戦闘力200。必殺技は「吠える」


 モンスターの攻撃のせいで、ピクリとも動けない。


 ダメだ。こんな所で立ち止まる訳にはいかない。


 恐る恐る近づき、道のセンターを陣取るシーバー犬から逃走を図る。



 ワン。



 ダメだった。怖い。


 オドオドとその場を行ったり来たり。


 これでは、どちらがシーバー犬かわからない。どうしよう。


 その時、田んぼで作業をしていた女神(65歳)が、シーバー犬に鉄槌を下す。


 怒られたシーバー犬は、女神に抱きかかえられ、大人しくなった。


「ごめんね〜、この子も遊びたいだけなのよ。さっ、今の内に通って」


 クリア。田んぼの脇道の番人を突破した。


 さっきよりいっそう力強くペダルを漕ぎ、前へ進む。




 自転車を漕ぐ足が止まった。公道へ出たのだ。


 左か右か、さあ、どっちへ行けばいいのか。


 その時、公道の端に標識が立っていることに気づく。



『←西の街 東の街→』


「......の......の............っ」


 読めない。漢字が多くて読めない。


 その場でじっと標識を見つめ続けること五分。


 公道をトラクターで駆け抜けてきた、村人Aに遭遇。


「何してるの? あ、読めないんか。どこに行きたいの?」

「に、西の......」

「西の街か。それじゃあ、ここを左に行けばすぐ着くよ。頑張ってね」


 アメをもらった。最大の難関を突破した。


 ミルク味のフワフワしたアメを食べながら、より一層力強くペダルを漕ぐ。




 ついに魔女の館に到着した。


『西の街公民館』と書かれた表札が、でかでかとそびえ立っている。


 長かった。通常だと十分で着く場所なのだが、既に三十分は経過している。


 自転車を降りて、魔女の館のドアを開く。


 そこには魔女が......いた......いっぱいいる。


 なんならドラキュラもいる。


 良かった。装備は間違ってなかった。


 たくさんいる魔女の中の一人に近づき、ローブの端をちょこんと捕まえる。


 それに気づいた魔女は、ニコっと笑って目線を合わせるように腰を落とした。


「と、とりっくとりーと」

「よく出来たね。はい、お菓子」


 魔女を捕まえた報酬に、お菓子をたくさんもらった。


 さて、まだ魔女はいっぱいいるし、報酬もたくさんもらえるだろうから、あの小さなリッュクサックでは到底収まりきらないだろう。


「あ、ママ。袋持ってきてくれたの? やったー」


 明日からの『お片付け』と言うクエストの報酬を、今の内に集めなければ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ∀・)心温まるお話ですね。最後の台詞にほっこりしました♪ [気になる点] ∀・)ちょっぴし読み解く必要あり? [一言] ∀・)はじめてのおつかいみたいなお話だと感じました。面白い短編作品だ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ