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星間のハンディマン  作者: 空戸之間
4th Verse Promise Land
303/304

Promise Land 22

「すまないけれどヴィンセント、よければケータイを貸してもらえないかな? レオナの事を見ていたら、僕も無事を伝えたくなってしまって」

「アズィズにか。この中で独り身は俺だけだもんな。……ほいよ」

「ありがとう……!」


 興奮気味のマイケルの背中を見送ると、ヴィンセントは野っ原に座り込んだ。


 空は蒼く、空気も綺麗


 ここに煙草がないのが残念に尽きる


 手持ちぶさたな彼は穏やかに流れていく風に目を瞑り、ただただ時間を潰していた。きっとこれも、ある意味では贅沢な過ごし方になるのかもしれないが、どうしたって便利屋の性なのか、気配には敏感に反応する。


 車のエンジン音だ。

 瞼をうっすら開けてみれば一台の黒いセダンが近づいてきていた。


「なにあの車……? ヴィンセント、起きな」

「まさか追手ってわけでもないだろ。――……おい、マイケル。一応後ろにいろ」

「あぁ分かった」


 草原に轍を刻みながら走るセダンはかなり異質だった。四駆とかならばまだしも、見たところ普通の4ドアセダンだ、どう考えたってオフロードを走るような車ではなく、その異様さにはヴィンセント達の警戒心は自然と高まる。


 サバノヴィッチの部下からかっぱらってきた武装はあるが、さてどう出迎えるべきなのか。銃の安全装置を外した状態で三人が佇んでいると、そのセダンはゆっくりと減速して彼等の前で停車する。


 目配せ一つでヴィンセントが前に出て、レオナはマイケルを背中に隠して警戒態勢。

 するとセダンのドアが開き、二人の男が降りてきた。

 どちらも黒いスーツにサングラス。黒豹の獣人と初老の人間だが、服装は完璧にお揃いときていて、どこかで見たような既視感がヴィンセントにはあった。


 でも、疲労のせいか思い出せない。

 しかし、これだけはハッキリしている。明らかに怪しいという点だ。


「どちらさんだい、お宅ら」


 銃爪に指をかけたままヴィンセントが問うと、背の低い初老の男が答える。

 じつに紳士的な態度だった。懐の膨らみ具合からして脇に銃を提げている様子だが、抜こうという意志が一切感じられない。


「我々は地域警備員だ、武器は必要ないから下ろしなさい」

「警備員?」

「そう。この丘一帯は私有地でね、何者かが侵入したと知らせを受けて調べに来た。我々としても出来ることなら穏便に済ませたい、キミ達はここでなにをしているのかね」

「あぁ~……、ピクニックを。土地勘無くて迷ってしまって」

「ふむ。それにしてはなんと言うべきか、物騒なアクセサリーに見えるがね」


 なにしろ突撃銃を提げた二人がいるのだ。言い訳にしても苦しすぎるが、初老の男はそれ以上突っ込んではこなかった。


「事情はどうであれ、早急に立ち退いてもらえるとありがたいのだがどうかな。敷地の外に出てもらえれば済む、よければ我々の車に乗ってもらえまいか」

「いやぁそれはちょっと。もう少しだけ大目に見てもらえねえかな、知り合いと待ち合わせしてるんで、そうしたらすぐに出て行くから」

「……そうか知り合いが来るのか。では、仕事が増えるな(・・・・・・・)


 違和感が、きた。

 それはくらりと揺れるめまいのようで、ヴィンセントは視界が歪んだのを感じた。


「――ッ⁈ これは……ッ」

「ヴィンセント……! こいつら、なんかしてやがる……ッ!」

「この感覚、は『彼』のと同じ……、僕たちは、これを、知って――……」


 一人、また一人とヴィンセント達は意識を失い倒れていく。せめて動けるうちに反撃を試みるが、身体が脱力してまともに動けず、ついに三人とも眠るように野原に倒れ込んでしまった。




 ――シード星人絡みは肝が冷えるな 下手をすれば太陽系毎消えていたかもしれん


 ――こいつ等はどうするんだ? オレみたくスカウトするのかい 人材不足なんだろ


 ――いいや 彼等は有能だが粗暴すぎる エージェントには向かんよ

   いつも通り宇宙人絡みの記憶を修正してから解放するとしよう

仲間がいると言っていたから そっちにも同様の処置が必要だな


 ――電波で記憶操作ってのは何回見ても良い気分に慣れないんだよな オレ

脳に障害出たりしそうだし


 ――これまでに数万件の使用例があるが後遺症は認められていない

   なによりも宇宙人の存在を知るのに人類は若すぎる

   隠しておいた方が世のため人のためだ その為に我々がいるのだからな…………



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