Promise Land 13
あまりにも唐突な出来事に、その場にいた誰もが驚いたことだろうが、唯一ヴィンセントだけは爆発の直前になにが起きたのかを目視していた。
あの輸送機は撃墜されたのだ、地上から放たれた一発のロケット弾によって――
そしてその射手、地上にて発射器を担いでいるレオナは、爆発する輸送機を見上げながら「ざまあみやがれ」と吼えていた。
「いっちょ上がりだぜ、ベイビー! アタシに喧嘩売って五体満足で帰して堪るかってのさ!」
輸送機の動きからしてサバノヴィッチを回収に来ていたことはレオナにも分っていた。山道を追い回され、挙げ句崖からダイブさせられた恨みは大きく、これでようやく溜飲が下がるというものであるが、一発で木っ端微塵ってのがちょっと不満な部分ではあった。
だから、そういう点から考えると、彼女の望みは叶ったとも言えるだろう。
「……あン?」
レオナの眉間に、深い皺が寄る。
先程撃墜した輸送機の残骸、そいつがいつまで立っても空中から落ちてこないのだ。爆発によって機体は千切れ、燃料に引火したために炎に包まれている。にも関わらず、あのスクラップは爆散した座標に留まっており、レオナは状況を知るために空に向かって目をこらしていた。
「…………なんだいありゃあ」
輸送機の残骸が、まるで生き物のようにうねりながら一つの形を成していた。木っ端となった金属片までもが引き寄せられて融解し、そして融合して塊となったそれは、次第に形を変えていき、レオナが異変に気が付いてから一〇秒ほど経った頃には、空中に人型のパワードスーツが完成していた。
「しぶとい野郎だよ……」
直感的に、アレのヤバさを認識したレオナは恨めしそうに呟いている。宇宙人の技術だとか、難しい話はさっぱりだが、肌に感じる驚異を間違えることはありえない。だからこそ彼女は、パワードスーツが右腕を指向するのと同時に、木々の中へと駆け込んでいたのである。そうしていなければ、機関銃から降り注ぐ弾雨によって彼女の身体は血煙と変わっていただろう。
「クソッタレがッ!」
「フハハハッ! 汚らわしい獣人が、精々獣の如く逃げ回るがいい!」
狩りでも楽しむかのように、サバノヴィッチが吼えている。負傷は癒え、まさに絶好調といった具合に、奴は機銃弾でレオナを追い回した。
「実に素晴らしいぞ! この力さえあれば何者も私を止めることなど出来まい!」
「調子くれやがって、チキショウが!」
闘志こそあれレオナには反撃する術がなく、逃げ回るのが精々だった。この不利をひっくり返せる可能性があるとすれば、それは彼女の側にはなく――
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