Promise Land 9
「……これは、一体なにが」
「俺が知るかよ。だが、どうやら仲間同士で撃合ったみたいだな」
床に転がっている兵士達の死因が銃撃であるのは明かだった、しかも隣同士で撃合ったらしい悲惨さである。
「最初の一人が仲間を撃って、そこから連鎖して撃合ったようだがよ……、こんな銃撃戦のあとは初めて見るぜ。反乱とか、そういった類いのものじゃないな、なんつーか異様だ」
「サバノヴィッチは?」
「いねぇな。……先に進もう」
と、ヴィンセントが言い終えた矢先に、またしても銃声が聞こえてきた。今度は先程よりも大分近く、二人は駆足で廊下を進んでいった。
「この扉の向こうだな。マイケル、開けたら壁に寄れ」
「分かった」
合図で開かれる扉
それと同時にヴィンセントが突入するが
彼の構えた突撃銃が火を噴くことはなかった
と言うよりも、銃爪を落とすかどうか迷ったのだ
その部屋の中には二人の兵士がすでにいたのだが、突入してきたヴィンセントには目もくれず味方同士で取っ組み合いのナイフファイトを演じており、ちょうど馬乗りになっていた方が、組み伏せた仲間の心臓に刃を突き立てた所であった。しかも、刺した方は刺した方ですでに撃たれていたらしく、仲間を殺した姿勢のまま動かなくなってしまう。
「ここでもか、こっちとしてはラクでいいが気味わりぃぜ」
「……ヴィンセント」
気まずそうにマイケルが呟く。
「どうやら、これが遺物の防衛機能らしい。『彼』がそう言っている」
「どういう意味だ」
「生物を操るんだ。『彼』の宇宙船が生物を操り遺物まで導かせるって話は聞かされているだろう? それと同じ原理で、この遺物内に侵入した者には一種の催眠電波が照射されているらしい。一種の幻覚を見せて精神を破壊する、と……」
「じゃあ――」
「いや、僕たちは平気だ。中に入る際に『彼』が僕たちを登録してくれたおかげでね。サバノヴィッチは鍵こそ持っていても、どう使うのかまでは理解しきっていないのだろう。ましてや遺物の内部機能に関してなど、知る由もないだろうし」
「そういう大事なことは先に言え、馬鹿野郎。――今のはあんたじゃなく、スライムに言った」
「分かってる、僕も同感だ」
マイケルは苦笑いで答えた。
「『彼』と知識や思考を共有しているとはいっても、すべて理解できる訳じゃなくてね。説明してもらわないと分からないことだらけなんだ。それに――、え? あぁ分かった、あの台座に触れればいいんだね?」
「急にどうした」
「あぁすまない。キミと会話しながら脳内の『彼』と話していると混乱してしまって……。とにかく、『彼』がそこにある台座に手を置いてくれと言うんだ。そうすれば遺物内の状況がより詳細に掴めるらしい」
「ならさっさと始めてくれ。俺は見張ってるから」
だが、マイケルが台座に触れようとしたときである。二人は僅かながら床が揺れている事に気がついた。地震とは違う、細かな衝撃が伝播してきているようだった。
「ヴィンセント、この揺れは?」
「……遺物が揺れてるっていうより、遠くで何かが爆発した振動だな」
「じゃあつまり――」
「レオナの方も始まってる。マイケル、急いでくれ。俺たちには時間がねえぞ」
マイケルが改めてその両手を台座に置くと、部屋全体が光り始めた。
「……やっぱり、レオナ君のことが心配かい?」
「心配だって? レオナのことが? いいや。森の中のあいつはジャバウォックといい勝負さ。むしろ相手にする連中の方が気の毒だね」
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