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星間のハンディマン  作者: 空戸之間
4th Verse Promise Land
283/304

Promise Land 2

「いま、なんて言った?」


 マイケルの告白から数秒経ったのち、ヴィンセントは祈るように聞き返していた。むしろ他の言葉が思い浮かんでこなかったと言うべきなのかもしれないが、とにかくドッと疲れたように感じたのは確かである。


 しかもマイケルの方は平然としているから余計に性質が悪い。

「まだ耳に水が詰まっているのかね? ではもう一度言っておこう、ワタシは宇宙人だ」

「OK、訊き方がわるかったな。言葉を変えてやる、お宅正気か?」

「勿論正気だとも、君たちが助け出してくれたおかげでな」

「成程、イカれてるのがデフォって訳か、最高だな……」


 心底一服付けたいところだが、ヴィンセントが胸ポケットにしまっていた煙草は、川にダイブしたおかげでゴミに変わっており、彼は仕方なく手近にあった棒でたき火を突いて、この先のことについて考える。


 目下の問題は、どうやってMLA自治区から脱出するかだ。


「レオナ、荷物はどうなった?」

「全部ロストした。衛星電話にライフル、予備の弾薬、その他諸々ぜんぶね。手元にあンのは弾が少しと、ケータイくらいのモンさ」

「電波は?」

「入ってたら苦労してないでしょ」

「それもそうだな。えーと、ちょっと待てよ」


 ヴィンセントは煤けた棒をペン代わりにして、石の地面に簡易的な地図を描いていった。脱出方法を探すにしても、まずは現在位置が判らないことには動きようがないのだ。


「ヴィンセント、この地図って合ってンの?」

「船で周辺の航空写真は確認したからな、大まかだけど近いはずだ。それで、ウォーロックのキャンプがこの辺りにあって、そこから山道を西に進んだ。飛び込んだ渓谷がここで、地図通りなら南に流されて、着いたのが大体山の麓って感じだろうから、まぁこの辺りか」

「うむ、誤差はあるが位置情報は正確のようだね」


 現在位置にヴィンセントが○印をつけてやると、感心したようにマイケルが口を挟んできた。運び出されるまでは色んな意味でお荷物なので、出来れば黙っていて貰いたいがそうはいかないようである。


「ところでヴィンセント君は、ワタシを連れ出すつもりなのかい」

「ああ。陸路で国境越えは難しいから西のある海を目指す。近くにある街まで行けばケータイも通じるだろから、アルバトロス号に連絡入れてダンかレイに拾ってもらえばいい」

「なぁ、AI操縦の戦闘機に任せて平気なワケ?」

「大丈夫だってレオナ、レイは俺から飛び方を学習してるんだぜ」

「だから不安なンだっての」


 とはいえ、さしあたり向かう方角は決まった。まぁ肝心な移動手段については徒歩以外の選択肢がない現状ではあるが、それでも指針が決定したことは大きい。

 はずだったのだが、そんなヴィンセント達の考えを裏切るように、マイケルがぽつりと溢す。


「なにか勘違いをしているようだがヴィンセント君、ワタシは行かないぞ」

「……なにを言い出してんだ、お前」

「ワタシにはやらねばならない事がある、だからここに残ると言っているのだ。事情についてはすでにレオナ君に話してあるのだがね」

「だからアタシにゃあチンプンカンプンだって言ってンだろうが」


 とレオナも辟易した様子だが、説明を求めるヴィンセントの視線は彼女の方へと向いている。


「……えっとさぁ、マイケルが言うにはこいつが宇宙人ってのはマジで、超技術的なモンもマジであるンだと。ほんでそいつがサバノヴィッチの手に渡ると、火星どころか太陽系もヤバイんだって」

「勘弁してくれよ、お前までそんな馬鹿げた話信じてるのか? それとも俺はまだ気絶してるのかもな、もしくはお前の頭がおかしくなったかだ」

「アタシだって信じてなかったさ。でもさぁ、あんなモン見せられちゃあね……」


 レオナは顔をしかめて言い淀む。基本的に歯に衣着せぬ物言いしかしない彼女にしては珍しく言葉を探しているようで、どうやら彼女の理解を超えた何かを見たらしいことだけは伝わってくる。


「ってかアタシが話したコトで信じられないだろうし、見たほうが早いよ。――マイケル、ヴィンセントにも説明してやって」


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