prologue ★
長らくお待たせいたしました ようやくの更新です!
仕事をするなら夜に限る、昼夜逆転の生活にもすっかり慣れてしまった。遠く――窓から眺めるネオンサインに思いを馳ながら、男はため息をついた。蛍が瞬くほどにその明かりは儚く羨望と鬱憤ばかりが募るのだった。
静かな夜だ。
だが、どうにも落ち着かない。
なじみ深い喧噪まみれの街から離れているからなのか? 確かにそれもある。しかしそれとは別に、明らかな不安要素が頭の片隅に居着いてることは否定できなかった。その証拠に、男は数分ごとに時計を確認しては無線機を手に取り、銃の在り処を確かめている。日が変わってからもう何度目になるだろうか、一々状況を知りたがる自分には、仲間もさぞ辟易していることだろうが、そんなことを気にしてなどいられない。
男は自分が最も注意するべき点を重々理解していた、それから当然ファミリアのボスが裏庭の収穫量と同じくらい気にかけてるビジネスの重要性も。この二つに比べれば下から聞こえる不平不満など便器の染みほどの価値もなく、神経質になるくらいが丁度いいと言えるだろう。
「――異常はないか?」
こう確認するのも何度目か、そして中々応答が無いのも何度目か。送信ボタンを押すたびに苛立ちは募るばかりで、すぐに応える程度のことがどうしてこうも難しいんだ? と思わずにはいられない。ところが――
「無線の持ち主には暫く眠ってもらっている、次は御主の番だ――御免ッ!」
知らぬ声音に瞬間、男の右手が銃把へ飛ぶが、何者も掴むことは無かった。




