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PROLOGUE

18禁指定はしておりませんが、一部性描写を含みます。

(露骨な性描写はありません)

それをご承知の上でご覧ください。宜しくお願いいたします。

 上半身を起こし、紫煙を燻らせる彼の背中を見つめながら、私は床に脱ぎ捨てた服を身に纏う。

 彼は窓の外の景色をぼんやりと眺めている。それを私は、彼の背中越しに眺める。


 外はまだ暗い。

夜明けまではまだ間があるのは、部屋の光を反射して鏡のようになった窓を見れば一目瞭然だった。窓硝子は、物憂げな表情の彼を映し込む。

 ……身支度を整え、鏡と化した窓硝子を使って髪を軽く手櫛で直すと振り向きもしない彼に向かって、硝子越しに微笑みの表情を作る。

「じゃ」

 彼は、何も言わない。

 ただ、残り少なになった煙草を灰皿に押し付けた。

 返答を期待することなく、私はコートを羽織ると彼の部屋を後にした。


 マンションのエントランスを出ると、外は身を刺すほどの冷気。

身震いして私は歩き出す。

彼の温もりは、歩き始めた瞬間にすぐに消え失せた。むしろ寒さはいや増した。

身を縮め首を竦ませて歩きながら、私は泣いた。

涙は熱く、しかし頬を伝うと氷のように冷たくなって、ますます体は冷え固まっていくようだった。




――私は、体の中に融けない氷を持っている。

 それは少しずつ大きくなり、融けた氷は涙となって瞳から溢れ出す。しかし零れた涙はまた、氷となって体内に凝る。

 その、繰り返し。

 負の螺旋を描きつつも私は「そこ」から抜け出せず…いや、抜け出すつもりもなく、虚しさを募らせるだけだと分かっていて尚、彼との情事を繰り返す。

 肌を合わせても温もりも得られず。

 体を重ねても、ココロを重ねることもできないまま。

 それでも。

 私は彼を求める。

 彼が私を求めていなくても。



 ――ホームに滑り込んできた電車は、ゆっくりと減速をする。

 終電間近で僅かに混雑した車内に乗り込み、閉まるドアに寄りかかった。

 MP3をコートのポケットから取り出して、イヤホンをつける。

再生ボタンを押すと、短い前奏の後、聞き慣れた「声」が耳に届いた。

彼の声。彼の歌声。

甘く、切なく、強く。

彼は歌う。

 その歌声を聴き、私はまた少し泣いた。

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