誕生日
「この袋の中身そんなに知りたいか!?」
「真…きっと聞かなくてもお前なら分かるぞ…」
気だるそうにクールな勇哉が答える。
「そのまさか…とは、思うけどその2つの袋の中身って
コロッケパン?」
ハッハッハーと高らかに嬉しそうに英傑が笑い出した。
「祝い事と言えば、コロッケパンだろ!今日は、コロッケパンパーティーと真の誕生パーティーだ!」
何やら大男が大声で、変な事を叫んでいるので周りの人達の視線が集まりとても恥ずかしくなる2人だった。
「いくぞ、真」
「あぁ、勇哉」
2人は、足早にその場を去ろうと足を進め始めた。
「2人とも待ってくれよーーー!」
続いて、後ろから英傑も走ってやってくる。
「とりあえず何処に行くよ?」
後から追いついて来た英傑が2人に質問する。
「俺の家で、いいだろ?どうせ両親は、仕事で帰って来ないし一軒家だから多少騒いでも大丈夫だしな」
「おっ、勇哉ん家か!久しぶりにあの屋敷に行くな!なら、勇哉ん家で俺の特製コロッケパンケーキを2人に振る舞うぞ。もちろん、誕生日の真はコロッケパンケーキと別に俺の新しい新作コロッケパンンナコッタをご馳走してやるからな!」
「いや、結構です(きっぱり)」
「とりあえず、英傑。俺の家のキッチンを実験に使うのは、やめろ。真、コンビニで胃に効くドリンクを買うぞ」
2人は、どこか諦めたように英傑の作る料理に挑む気である。
買い出しを終えて、勇哉の家が見えてくる。
とても高く長い白い壁を伝いに歩いてくいくと大きな門があり勇哉が自分専用のICカードをインターホンの溝に差し込むと自動で巨大な黒い門が開く。
門は、内側に入ると勝手に閉まる仕組みになっており3人が入り10秒程すると静かに門が閉じた。
歩いて、1分ぐらいで勇哉の家のドアが見えてくる。
ガチャン、ギィィィ
「お邪魔しまーす」「お邪魔しまーす」
「別に俺達以外誰も居ないから言わなくていいぞ?」
リビングにつくと勇哉が英傑に頼まれていた大量のコロッケパンが入ってる袋をテーブルに置く。
「ありがとう、勇哉。じゃ、2人共俺はコロッケパン料理を作ってくるからゆっくりしとけよ」
親指を立てて、張り切ってキッチンに両手に抱えた袋を運んでいく英傑の姿を見送る2人。
「よし、カップ麺作るか」
と真は、コンビニの袋からカップ麺とコーラを2個ずつ取り出し勇哉と分けウォータークーラーからお湯を注ぎ入れてカップ麺を作りズルズルと完食した。
その30分後に2人がいるリビングまで、濃厚なソースの酸味の匂いと凄く甘ったるい匂いが何とも言えないハーモニーを醸し出しながら近づいてくる…。
「2人共待たせたな!腹減っただろ?存分に食ってくれ!」
ゴクリ。
(ついに来てしまったーーー!)
と2人は、心の中で叫んだ。
「では、18歳になった真!誕生日おめでとう!」
「おめでとう、真」
「2人ともありがとう」
人生とは、よく出来ている。嬉しい事の後には、いつか必ず嫌な事も巡ってくる。しかし、今回この嫌な事はあと数秒後に起こりうるのだ…。それは、英傑のコロッケパン料理を食べる事…
見た目は凄くいい、でも何処からどう見てもコロッケパンの原型がこれでもかというぐらいに残っている。
2人は、恐る恐るコロッケパンケーキを口に入れるとただの甘いコロッケパンであるがソースとメープルシロップが駄目な方向に向かって合わさっているのが口の中で分かり2人は、青い顔になりながらトイレと洗面所に走った。
その様子をとても幸せそうにコロッケパンケーキを食べていて気づかない英傑は、やはり大物である。