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天国から追い出されて不老不死  作者: ラムネ便
7人の姫達
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ニュータイプな姫

2月分が出来上がっていたのですが上げるのを忘れてました。

 

 クラセフトでの一件から5日後。迎賓館で何をしていたのかといえば自作のCADを使い基地の全体像を設計したり交流・視察といった形での仕事なので政府機関の仕事を見させてもらったり騎士団とうか軍隊の訓練模様などを見ていた。連邦政府なので一部の国の軍隊ではなく所属している国同士により人員が出される。いわゆるEUの欧州合同軍のようなものだ。戦争による派遣実績はないらしいが、時折発生する魔物の対策などに従事していると聞いた。もし俺の騎士団ができたら合同訓練を申し出たいところだ。騎士団と呼べるレベルまでの規模が形成できればの話だが。


「小型ミサイルサイロはともかく…対熱核バンカーバスター用要塞ともなると表面装甲を考える必要があるな…」


 まさかそんな、などと侮るなかれ。異世界はあくまでも異世界。科学が通用しないことなどごまんとある。念には念を入れるべきだ。

 もし手を抜いてしまって某新世紀の名前を冠する人造人間アニメに出てきた10体目の奴みたいに目からビームだけで特殊装甲板が溶かされてセントラルドグマやターミナルドグマに侵入されたらたまったもんじゃない。もし出てきたら出てきたで布みてぇな腕をちぎって肉は焼肉にして食べてやる。

 ともかく俺が作る要塞は必然的にある程度自律制御で迎撃可能な無人要塞となる。詳細な設計はまた別の時点でやるとして、今は簡易的な設計のみを考えている。

 ぼんやりとモニターを見つめていたら扉がノックされ、担当の使用人の声が聞こえてきた。


「ハインド様。御客人でございます」


「あぁ…少し待ってくれ」


 隠せそうなものはさっさと隠して不可思議は魔力化して消滅させ、くつろいでいたマリを起こして用意させる。


「いいぞ。入ってくれ」


「どうぞお入りください」


 入ってきたのは、これまた少し気が強そうな姫様だった。ドレスも外向けに綺麗なものだ。ただ…彼女を見ていると不思議な感覚に襲われる。まるで自分の考えてることは全て見透かされてるような気がしてならない。こんなにプレッシャーを分かる形で放っているのはルンレイ達以来か。

 だが、俺の考えとは裏腹にその姫様は笑って砕けた感情で話を切り出してきた。


「おはようございます。私はエンデヴァー国のルーモルトです!よろしくお願いします!」


「え、あ、あぁ。よろしく…」


「私はマリ。よろしくね。えっと…」


「ルーモルトで大丈夫です奥様。お恥ずかしいのですが私こういう固いのが苦手で…優しそうな御夫妻で助かりました!」


「元気だなぁ」


「健康なのは大切ですから!」


 んー?なんだ?こんなに元気でスポ根みたいでとても良い性格なのにプレッシャーを放っている。マリは気付いてないのか?いやまさか…こんなプレッシャーを気付かないわけがない。普通距離を取るだろう。


「ルーモルトさん。今日は挨拶で来てくれたんでしょ?ごめんね。忙しいのに…」


「大丈夫です!元々仕事は…」


 同年代っぽいのかマリととても話が合う。メイドが茶と菓子を出してくれたところで俺は用事があると言い残してメイドと一緒に外を出た。


「…ちょっといいか?」


「なんでしょうか?」


「ルーモルト…彼女はどんな人物なんだ?」


「とても元気でカレン様とは今も昔も変わらない親友なんです。私達使用人にも砕けた話し方をしてくれて人気なんですよ」


「なんかこう…威圧感とか感じることは?」


「ないですねぇ。むしろ可愛げがあってそこはカレン様にも見習ってほしいかな…なんて」


「ない、か。ありがとう」


 他にも何人かの使用人に聞いてみたがどれも同じような返答が返ってくるばかり。クラセフト姉妹による警備網突破みたいなことをしているわけでもない。カレンとは親友。俺に敵意を向ける理由は今のところない。というかああいうタイプは感情豊かだから隠すのは苦手なはず…。たしかに例外は幾つだってあるけれど。

 ならあのプレッシャーはどう説明する?まさか知らず識らずの内に出してるのか?待て待て。情報が少なすぎる。そもそも…俺が感じたのは本当に威圧の類なのか?俺が感じた『プレッシャー』は全く別の何かである可能性は否めない。本当にそうなのかどうか。調べてみる価値はある。

 直ぐに引き返して客室に戻り、マリと会話しているルーモルトを見た。未だに謎のプレッシャーは感じる。だがまずそれが何なのかを知りたい。


「そこで私はその場で使節団のリーダーをはっ倒したわけですよ!あんな最低な男を使節団に加えてるなら貿易や平和条約の一つや二つ捨てて戦争してもいいって思いましたね」


「私だったら多分その人生きて返さないかも」


「私もはっ倒した後に生きて返そうか考えたんですけどね?父上が『ルーモルト。もっと賢くやりなさい』って言うんですよ。まあそのあとその国に色々今までの仕返しも込めて無理難題押し付けたんですけど」


「お話の途中ですまない。ルーモルトさん。聞きたいことができた」


「私が答えられることならなんでも答えますよ?」


「…魔法が得意だとかそういうのはあるか?」


「いや普通ですね」


「最近頭が冴えてるとかは」


「これといってないです」


「…直感がよく当たるとかは?」


「ありますあります!自慢になりますけど私の直感ってよく当たるんですよ?」


 あぁ…これだったんだ。プレッシャーの原因は。正しくはプレッシャーというより彼女が敏感に反応するようなオーラが出ているに過ぎなかっただけだが。そんなオーラに圧倒されかけた俺もいるわけだが…。

 ここで俺は一つの考えに到達した。これほどのオーラを発し、更に超常的な直感力を持つルーモルト。もしかしたら…彼女の脳波を解析すれば技術向上に役立つのではないのだろうか。常人でもAIの手助けで持ち前の脳波や空間認識能力で更に戦闘の幅を広げられるようになるのではないか。バイオニクス義肢などの開発に役立つ可能性だって捨てきれない。


「ルーモルトさん。今日、この後時間は大丈夫でしょうか?」


「え?まあ大丈夫ですけど?」


「マリ。ちょっと手伝ってくれないか?」


「いいよ。何すれば良いの?」


 マリに手伝ってもらいながら生成した西暦4000年代の新型の脳波測定機に加えて様々な実験用器具を用意して小型のイオン式発電装置に繋ぎ電力を確保。全ての準備が終えたところでルーモルトに腕を動かしてもらったり問題を出して考えさせたり直感力を試すために外で何が起きてるか感じさせたりととにかく調べ上げられそうなものは全てデータを取ることにした。


「これ凄いですよ!星がバァーって光ってます!あ、敵見っけ」


「ケイ君…ルーモルトちゃんの反応速度がおかしすぎるんだけど…」


「超能力者みたいなもんだしなぁ…」


 360度を囲える全天周VRシアター装置では宇宙を再現して簡単なロボットゲームをしてもらったのだが、ルーモルトが慣れてきた頃にはレーダーに表示されるよりも速く対象を破壊していた。レーダー上で表示されるにはラグが存在するとはいえ、もはや常人が行えるようなスピードではない。それこそニュータイプでもない限りできない。後ろを向いたまま同時に敵を4機撃墜するとかどこの撃墜王なのか教えてもらいたいほどだ。

 だがこれだけの行動をしていながら、彼女に何をしたかと聞くと返ってくる答えは大抵…


「あっちから来そうだったから照準を向けただけですよ?」


 この一言に尽きる。彼女の脳内がどうなっているかを調べることはできないが、少なくとも俺が考えているよりも遥か先のなにかを見ているのだろう。俺が見ていいものではないようだ。

 それから4時間ほど経ち、昼食を機にルーモルトは帰宅することになった。本来なら年単位で取るべきデータをたった数時間で入手できた俺は礼を言って帰っていったのを見送った。帰り際、ルーモルトはVRゲームを大層気に入ったらしくまたやらせてほしいとまで言いだしたのでもちろん喜んで承諾した。ふむ。実験のデータ取り中に作った適当なゲームだったんだがな。今度俺もやってみるか。

 部屋に散乱した実験器具を全て魔力化し、マリに脳波装置を取り付けてデータを元に簡易的にAIを創り出して試してみた結果、離れた義手に脳波装置との通信だけで動かすことに成功した。もちろんだが実験段階。大した成果でもない。だがこのデータは貴重だった。未だどこの並行世界でも成功していない『機械との擬似的神経接続』ができるのかもしれないのだから。


「凄いよケイ君!こんなことができるなんて!」


「まだまだなんだけどな。それでもこのデータは興味深い…」


「これなら離れたところからでも楽に仕事とかできそうだよね〜」


「危険地域なんかはそうやってロボットを使ってるのさ。まだ実用化には難があるみたいだけどね」


「危険地域?」


「地雷とかそういうのだよ」


「地雷…あの足元に仕掛ける爆弾のこと?」


「そうそう」


「へぇー…ロボットって凄いんだねぇ〜」


 マリの知識がどんどん増えてくなぁ。喜ばしいことなんだけど俺としては無垢なままでエロいことだけ覚えてもらった方が…おっと本音が出た。

 だがルーモルトにはこれだけ拘束しておいてただ一言礼を言って終わりというのも気が引けた。とても明るくて実験に協力してもらったのはありがたいのだが、流石にこれだけの貴重なデータをもらっておいて俺は言葉だけというのはまずい。


「…謝礼にアレをプレゼントしてみるか」


 夕食が終わってシャワーを浴び、マリと3ラウンドしたところで不可思議を開き設計を開始。ルーモルトにはとても良い謝礼を渡そう。それこそあの反応速度や直感力を生かせるようなものを。何かあれば俺があとで遠隔回収すればいいだけの話だ。だからこそ…本当に役立てそうなものを送ることにしよう。


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