マグノリアvsローディー
かなり遅れました!待っていてくれた皆様!申し訳ありません!
ウェスター伯爵の屋敷にある屋内グラウンド。結界が48層に渡り施工され、その周囲に6基配置されたハインド特製のアンプ。
これらの防御装置を設置してなお、溢れ出る魔力を抑えきれないとなると人工妖精が如何に強力な兵器であるかが理解できよう。
グラウンドの中心に立っているのは、二人の人工妖精。マグノリアとローディー。実戦率が高いローディーに勝ち目がありそうなものだが、未知の兵器を搭載しているマグノリアも敗北するような気配は全く感じられない。
「ローディーさん。お先にどうぞ。ボクはあとから行くよ」
「別にいいわ。貴方から来なさい。私が全部防ぎ切って、その高くなった鼻をへし折ってあげる!」
「分かった。三次元全方位多重飽和攻撃プログラム起動。システムユグドラシル、オールグリーン!」
マグノリアの背中から出て来たのは、幾つかに別れてそれぞれが独立・分離して稼働している無人小型攻撃兵器。
ロボットアニメだけのものだった夢のオールレンジ攻撃を、未来の技術者達は可能にしていたのだ。ちなみにこの兵器の正式名称は『弍型誘導自立無人小型攻撃兵器』である。
愛称はリヴェル。日本から欧米各国に技術的に対抗する意味を込められている。
この兵器は日本パワードスーツ産業の大御所とも言われる企業、旧暗左が作り出した遠隔操作兵器自立稼働プログラム『トランペット』を流用したものであり、脳波と機械による補助を組み込んだ画期的なシステム。
そこにハインドがこのシステムで妖精サイズに合うようにリサイズと改良することで完成した。その名も『システム・ユグドラシル』。
三次元全方位多重飽和攻撃プログラムは、システム・ユグドラシルを起動する際に必要な基礎プログラム。これがなければ、システム・ユグドラシルは起動すらできない。
「ちょっ!こんなの聞いてないわよ!」
「防ぎきれるなら、防ぎ切って見せてよ!これがボクの全力だ!」
20にも及ぶリヴェルがローディーを襲う。
だが一つ一つに小型の充電式荷電粒子砲を搭載されており、シールド魔法を展開したところで、ガリガリ削られて行くのがオチだ。
しかしローディーは違った。見たこともない未知の兵器を相手に、シールド魔法だけでなく攻撃魔法を使って応戦を始めた。更にリヴェルの攻撃パターンを見切ったのか、少しずつリヴェル自体の破壊に行動が移っていた。
だが、こんなことは俺の想定内。逆にこの程度の攻撃で負けるなら、ローディーは本当にただのかませ犬になっていただろう。
マグノリアに搭載されている武器は、リヴェルだけではない。
《マグノリア。残りのリヴェルは自立稼働モードで。次の兵器の実験と行こう》
「イエッサー!」
マグノリアが起動した第二の兵器、それは背中にセットされている新型のビーム兵器。組み立てることでスナイパーライフルのようになる。
理論値ではマグノリアの身体が扱える大きさでM1エイブラムスを確実に撃破できる兵器だ。いや、ビーム兵器というのは間違っているかもしれない。
マグノリアの新型兵器は熱線で対象を焼き切ったり溶かしたりする兵器ではない。発射される物体は確かに加速装置による高温を持つが、その温度は副産物に過ぎない。発射される物体は、対象物を『物理的に損壊』させる兵器でありビーム兵器ですらない。
その実態は、オルローグ粒子と呼ばれる、加速装置で加速することで硬化しつつも重量が一切変化せず、その状態で酸素に触れると巨大化するという特異な宇宙線を利用した加速実体粒子砲とも呼べる兵器。ただし発砲後は威力が減衰し、ただの粒子に戻る。
宇宙線とはいうが、人間には害がない放射線であり、故に使い道も考えられることはなかった。
この世界にその宇宙線は飛来してこない。ならば宇宙線を作り出せばいい。これも魔力により宇宙線を作り出す装置を小型化、搭載することで可能にした。
「加速装置起動。オルローグ粒子、 チャンバー内にて正常に加圧中」
《マグノリア。12秒後に第1宇宙速度に到達する。威力はリミッター下で更に下げろ》
「イエッサ」
チャンバーに当たる部分からは煙が立ち始め、マグノリアは専用のゴーグルを装着。引き金に手をかけて新型の光学式照準を覗き、エネルギー効率モニターを見ながら次の指示を待つ。
「オルローグ粒子、第1宇宙速度に到達!」
《エネルギー伝導を確認。耐ショックシステム作動確認》
「回路解放!エネルギー効率異常無し!」
《撃鉄を起こせ。セーフティ、解除》
「発射カウント、頼みます!」
《発射5秒前。4、3、2、1》
「撃ち方!始め!」
マグノリアはその一言と同時に引き金を引く。マズルかは放たれるは明るい黄緑色をした、硬化した粒子。目掛けるはリヴェルに苦戦中のローディー。
今回の戦闘に対し、マグノリアとハインドはリヴェルを全て破壊してでもローディーを撃破することに主眼を置いていた。無論、殲滅するわけではないので、それなりに出力を下げた上で兵器実験も実行している。
だが二人は、先に起動し数多の実戦経験を積んでいるローディーを少し甘く見ていたのかもしれない。目の前にいる敵は知能を持っている。それもとてつもない学習速度を保持した上で。
「それを待っていたのよ!シールド魔法展開!」
シールド魔法が展開され、加速実体粒子砲が激突した瞬間シールド魔法は1秒にも満たない内に破壊され、砕けちった。だがそこにローディーはいない。彼女は、マグノリアの上にいた。
「貰った!」
「パージ!ウィング・シールド!」
マグノリアは自らの羽をシールド魔法代わりに使って、ローディーの羽による斬撃を防ぎ切り、地面を蹴って防御に回さなかった羽の推進力で一時的に距離を取る。
人工妖精に使われている羽はマジックブレードが使われている。だがマグノリアはそれを攻撃に用いるのではなく、推進と防御に回していた。これはハインドの戦法を使っているが故に発生した弱点。羽を防御に回す分、推進力が下がり回避行動が難しくなるのだ。
だが、それが強みでもある。実はこの防御と推進にのみ使用するということは、二つ同時にできることを意味している。ローディーもレムレムも、こんな羽の使い方はしない。
一部の羽を推進に使い、残りの羽は防御に回す。一見すると大したことではないが、推進に使うか攻撃に使うかの二択しかなかった選択肢を増やし、新しい方法を見出した妖精である。
「私の不意の一撃を防御して瞬時に回避行動。こんな羽を使い方をするなんて。貴方、本当に人工妖精?」
「だからそうだって!ボクの羽はボクのもの!使うのはボク次第なんだから!」
私には出来ないこと、か。今まで無いと思ってたけど、私にも出来ないことはあったんだ。羽をあんな風に使えるなんて。せいぜい飛ぶか切るかの二つしかないと思ってたのに。
それと私が切りかかった時に彼女が切り離していた変な武器。アレでもそこに居るって思わせる為にかなり強めにシールド張ったつもりだったんだけど、一撃で破壊された。
中々面白いじゃない!
「マジックブレード、最大出力!私を楽しませてくれた御礼よ!受け取りなさい!」
《マグノリア。防御プランに変更だ。一応聞いておくが・・・防ぎ切れるか?》
「大丈夫だよご主人。任せて。防御プランαを発動!アルウァドラ、起動!」
『拘束術式解除。アルウァドラ、スタンバイ』
マグノリアの羽が巨大化して10枚になり、全ての羽を自分の前に展開して防御モードへ入る。その前面に更に第3の兵器である5層エネルギーシールドを展開した。
本来なら回避行動を起こすべきなのだが、今までまともに回避せず、受け止めて来たローディーのことを考えれば、回避行動はしないべきだとマグノリアは考えたのだ。
防御プランα。これはある意味で最強の防御プラン。本来回避すべき強力な攻撃を受け止めるという条件下故に、高度な防衛システムがハインドによって構築されている。
第3の兵器であるエネルギーシールドはマグノリアの魔力ではなく、マグノリアの背負っている4つのバッテリーパックから電力供給されている。バッテリーなので内部電力が切れればパージされる使い捨てのようなものだが、バッテリーパック1つで5層シールドを使用できる。
システム的にあり得ない話ではあるが、理論上では計20層のエネルギーシールドを使用可能でありバッテリーパックも後から簡単に、それも弾薬のように補充できる。
「地獄の炎よ。我が身にその力を委ね、今ここに顕現せよ!インフェルノ・マジック・ブレード!」
「受け止めるっ!」
炎を纏うローディーの羽がマグノリアを襲う。
マグノリアもエネルギーシールドで受け止めるが、直ぐに突破されて本体へと辿り着く。しかしマグノリアの羽は地獄の炎を通さない。
雷と炎が爆発を起こしながら交わる中、2つ目のバッテリーパックに切り替わり、エネルギーシールドが復活。少しずつ魔力を失いつつあるローディーを押し返して行く。
「まだまだァ!これが、私よ!」
「エネルギーシールドが・・・⁈」
押し返していたはずのエネルギーシールドがいきなり5層を一気に貫通され、再び羽が受け止めて火花が散る。
しかしローディー自身、魔力をかなり失っていた。あの一言で魔力を全て解放したからだ。
対してマグノリアはアルウァドラを起動している故に魔力は消費しているが、エネルギーシールドが中々いい役目を果たしていた。バッテリーパックが3つ目に切り替わり、マグノリアの羽にシールドが張られる。
しかしローディーも負けじと最後まで魔力を振り絞り、エネルギーシールドを貫通してマグノリアの魔力を削り始めた。
そして遂に4つ目のバッテリーパックに切り替わった時、タイミング悪くローディーは攻撃を完全に弾き返されマジックブレードが消滅。体が宙に浮いて、身体を地面に叩きつけられる。
「防ぎきったか・・・。バッテリーパック4つ目でタイミング良くローディーの魔力切れとは。中々ギリギリの戦いだったな」
叩きつけられたローディーは魔力切れしているにも関わらず、眼を開けて天井を見ている。敗北、魔力切れ、敵の高度な羽の使い方。彼女の頭の中には、そんなことが渦巻いていた。
「私の負け、か。でもまあ、面白いものを見せて貰ったことだし。あまり気にしないけど」
「ローディーさん・・・?」
「悪いけど起こしてくれない?少しは残したつもりだったんだけど、足りなくて」
マグノリアの手を借りながら立ち上がるローディー。敗北した割に、その顔に張り付いていたのは悔しさでも絶望でもない。ましてやマグノリアを否定するものでもない。好敵手。ライバルを手に入れた、明るい顔であった。
「マグノリア。楽しかったわよ。また、いつか戦いましょう」
「いつか、ねぇ。共闘の方がボクは展開的に好きなんだけどなぁ」
「共闘?なら私が回復してから一狩行く?」
「一狩行こう!」
何かマグノリアが謎の会話をしているが、そこはそれ。彼女達の間に入るのは無粋だというもの。男が入ってはいけない。
それに俺は知ってるのさ。女子の会話に投げ込まれた後の事後処理が如何に面倒かを。
「先生。これじゃあローディーとの模擬戦は抜きですね」
「ああ。悪いなレムレム。また別の機会に」
「先生。戦いましょう」
「・・・俺と戦うと?お前にも言ってはいると思うが、俺は」
「知ってます。ゴミカスにも劣るパンチとキック。しかも全力で殴って複雑骨折、でしたね」
「複雑骨折なんて言った覚えはないんだが」
「折角ならルールを決めませんか?」
「ルール?」
「はい。先生は実弾銃を私に向けて撃つわけにはいきません。なので弾倉を空にして、私の頭に突きつけた上でトリガーを引いた時点で先生の勝ち。私は先生の体の一部を吹き飛ばしたら勝ち。どうです?」
「俺にかなり分が悪くないか?それ」
「その代わりと言っては何ですが、賭けの要素も入れます。先生が勝ったら、父の開発途中の術式。私が勝ったら、マグノリア達と一狩行く。これでどうです?」
「ふっ。レムレム。俺を甘く見るなよ!」
なお、俺が開始3分でロリータサイズのレムレムに惨敗を喫したのは言うまでもない。
次の投稿は4月15日を予定しています!
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