超機神レムレム
「ウィンド・ネット!」
「超電磁クラッシュ!」
捉えようとする風魔法に対し、雷の力を発揮して強行突破するレムレム。接近して近接戦に持ち込んだ瞬間に再びウィンド・ネットが発動。完全に捕らえられたかと思われた。
「超電磁トルネード!」
その言葉の後に魔法がかき消される。レムレムは両手に槍のようなものを持ち、一本は針のように小さくなって収納したあと右手の一本で再び接近戦へと流れ込む。
身体が小さいからと侮っていた使用人は、一点に集中させたシールド魔法を展開。しかしレムレムはその予想をはるかに上回る結果を出した。
それは今まで考えられなかった方法。何と小学生くらいの身長にまで巨大化。使用人の足元に雷の攻撃を仕掛けてから転倒させて、首元に槍の棒の部分を近づけて投降させた。
「何⁈人工妖精は巨大化できたのか⁈」
「いえ。単に父から教わった術式を利用しただけです」
「さすがだウェスター・・・!我がライバルとだけある!」
「いやアンタ専門人工妖精でしょうが」
次の相手は火属性でガンガンと攻撃してくるタイプの使用人。比較的攻撃的な人間らしいのだがまさかそれが69歳のダンディオジサンだとは誰一人思わなかっただろう。
しかしこんな相手にも対応させるのが俺の仕事だ。俺が今まで使ってきた技も覚えさせてある。もちろん新技も。
「ライトニングストライカー!」
「むうっ⁈」
レムレムは火属性の絶え間ない攻撃を回避や受け流すどころか、先ほどのウィンド・ネットの時のように大量に飛んでくる火の玉を迎撃し始めたのだ。
ライトニングストライカーは、一つ一つが槍のように細く雷の魔力だけで造られている。雷の魔法は基本的に魔力が切れると消えてしまうが、逆に言えば常に魔力を与えれば消えずに残る。
そこで魔力の塊を槍とイメージして、そこに雷属性を付与することによりライトニングストライカーが完成した。
更にウェスター伯爵が研究中の雷魔法専用の追尾魔法。いわゆるホーミングシステムを構築していたおかげで、無断ではあったがエーキル伯爵の手を借りた上でハインドが完成させてレムレムに使わせている。
つまりライトニングストライカーがホーミングすることで敵の魔法を迎撃することが可能になる。
ちなみにこのホーミングも含めて本当のライトニングストライカーである。
「雷の槍に追尾させ、攻撃魔法を迎撃させるとは。ハインド公爵。流石です」
「エーキル伯爵の手を借りたからですよ。まあ、あとで怒られるでしょうけど」
ハインドの考え方としても、このホーミングシステムの構築がされているのは心強かった。攻撃魔法を迎撃できるかどうか、これを教えてくれたのもまたウェスター伯爵だった。
攻撃魔法は基本的に放たれた魔力に対して同等、或いはそれ以上の魔力で迎撃しなければならない。
当たり前のようで、それはかなりの重要事項だった。そう。攻撃魔法は攻撃魔法で『迎撃可能だという事実』があるだけでハインドの構想段階だったものが一気に実現段階へと加速させることに貢献したのだから。
「しかし・・・何故ああも簡単に攻撃魔法を確実に迎撃できるのです?術式に魔力に反応するよう改良したのですか?」
「俺にそんな頭はありませんよ」
俺も最初は思った。ホーミングシステムが搭載されたところで指揮統括を行う術式が無いと意味がない。だがそんなものを一から構築できるのはウェスター伯爵だけ。だから、アレを持たせた。
俺がいた世界でも最大ロックオン数200を誇る神の盾を冠するシステム。その名もイージスシステム。アレの内部プログラムをライトニングストライカーと同時に起動し、かつシステムの有効関連を感知魔法とライジングストライカーのみにイジッておいた。
それと最小レベルにまで小型化した上で機能もかなり削減。結果、妖精の腰に引っ掛けられるくらいまで小型化に成功した。
これらの改造によって、ロックオンされた攻撃魔法は全てライジングストライカーによって確実に迎撃される。
「やりおるな」
「そちらも!」
「レムレム。終了だ。続行は認めん。次の訓練相手と変われ」
「はい。ありがとうございました!」
残りの13人の訓練は、割とあっさり終わってしまった。しかし、まだニチアサ中真拳と名付けた魔法の集大成を完全に教え切るにはちょうどいい時間が残ったので俺としては好都合だった。
だがレムレムは物足りなさそうな顔をしていた。まあ無理もないか。あの火属性の使用人が難易度のピークだったからな。
彼と戦っている時、やけにイキイキしていた。
「レムレム。早速だが、ニチアサ中真拳の技を教える」
その後、プラズマドライバーやら電光雷火などの俺が昔考えていた厨二感溢れる必殺技を教え込んでいった。名前だけなら聞こえはいいかもしれないが、本当に魔法の世界でやらかすと大変なことも起きる。これに関しては割愛しよう。
ともかく必殺技の数々を教えては実行を繰り返していった結果、俺がネタ切れ寸前になるまでレムレムは覚えてしまい、しかも使えるようになってしまった。
ここまでくるなんて、予想だにしていなかった。ネタ切れに30分もかからないなんて、小説家か漫画家でもない限りないだろう。
そこで俺は、今までの技は全て普通の技である、とレムレムに訂正した上で俺の脳内ネタ帳にある最後の数個を奥義として伝授することにした。
高校になってから考えたネタはこれ以上はないが、俺が中坊の頃に考えていた奥義ネタがある。中坊の頃のネタはRPGで言うなれば魔王レベルに匹敵するものばかりだった。
ほとんどバランスブレイカーでした。ハイ。
「まずは、ニチアサ中真拳の奥義その1。その名も『魔切神斬剣』だ」
「魔切神斬剣・・・」
「魔を切り、神をも斬り伏せる。剣を使う必要があるが、剣をイメージするだけでいい」
「剣技は必要ないのですか⁈」
「ああそうだ。レムレム。まずは目を閉じて俺の言う通りにイメージしろ」
「はい!」
自分は暗闇の中に一人いる。自分の姿だけが見える。その暗闇はお前を惑わす神か魔だ。お前はここから脱出する必要がある。
次に自分で雷の剣を用意しろ。そしたら『魔切神斬剣』をイメージするんだ。どんな感覚でも構わない。魔を切り、神をも斬り伏せるためには何が必要だ?自分でイメージして出てきたものこそがレムレム。お前の『魔切神斬剣』に他ならない。
「私の、魔切神斬剣・・・」
雷の剣。それに私の考える魔切神斬剣。ここは私を惑わす暗闇の中。なら私が本当に信じられるもので・・・いや、違う。
考えなおせ!私は何のために産まれた?私は何のために先生に教えを請い、何のために力を発揮する術を手に入れた⁈
・・・暗闇、か。暗闇は私を惑わせる。これを斬らなければ、私は魔切神斬剣を手に入れることなんてできない。そう。暗闇・・・。違う。暗闇が私を惑わせるんじゃない。私を惑わせる為に私が暗闇を産み出した!なら、この暗闇は私自身。神も魔も、それは私自身に他ならない!
魔を切り、神をも斬りふせる。それは、自身の心であり、己の善悪の観点であり、自分。
私は・・・暗闇は私の心そのもの!こんな空っぽの心じゃ、何もできるはずが無い!
光、雷光。私に与えられた、神ではない父上と母上からの贈りもの。これは、私に込められた光。
「心の、光・・・」
目をかっと見開いたレムレムは、右手を上に挙げて雷を発生させる。その手には剣のようなものが見える。あまりの雷光にハインドも手で光を遮りながらでないと見れないほどの発光。
「マジかよおい・・・。魔切神斬剣、こんなやばい代物なんて予定は無かったんだけどねぇ⁈」
神でもなく、魔でもない!私は私であり暗闇に光る一筋の雷光も私。暗闇が不安にさせるなら、私が暗闇を照らす光となる!暗闇に包まれるなら、私はいつだって光となり大地を叩き打つ!神から与えられた光に頼りきり、自分の意思の光を遮ってはいけない!
そしてようやく気づいた。人間も妖精も亜人も、心を持つものなら誰しもが魔となり、神になる。そしてそれを魔として滅するも、神として崇めるのもまた同じ心をを持つ者達。神を魔として見るも、魔を神として見るも変わらない。
そんなことは分かり切っていたんだ。最初から。
「なら私は雷となり、大地を揺るがし、敵を戦慄させよう!そしていつしか、必ず魔を切り神をも斬り伏せよう!魔切神斬剣!」
レムレムのその詠唱のようなものが終わった直後に、青白い発光と共に雷が空に発生。雲ひとつないというのにどこからか呼び出した雲から雷を吸収し、光の柱を創り出す。その形はまるで剣。
仮にこれがそのまま振り下ろされるとするならば大口径の超収束した荷電粒子砲をそのまま剣のように扱える。被害はとんでもなくでかいだろう。
うん。なんかどっかで見たような光景だな。特にテレビの中で。
「レムレム!ストップ!マジヤバイから!それだとライ◯ーソードになるから!軌道エレベーター助けるわけじゃないから!」
「軌道エレベーターって何ですか先生!」
興味が別のものに移ったのが幸いしたのか、レムレムの魔切神斬剣は緊急停止するように雷の柱がすぐに消えて放電していく。だが呼び出された雲は残って雨を降らせた。
レムレムが目をキラキラさせながら聞いてくるので俺は仕方なく雨宿りできる場所へ移動して現実世界でも考えられていた軌道エレベーターについて話すことにした。
ついでにスキルの忘れ去られた智慧を使用して軌道エレベーターが実用化された技術を見つけ、レムレムに雑学として教え込んでおいた。
話してる途中、どうしても気になったのはエーキル伯爵。一緒に途中まで部屋に戻ってきたのはいいが、ずっとブツブツと言っていたのが心に引っかかる。大丈夫だろうか。
「それで⁈軌道エレベーターは完成したんですか⁈」
「ああ。それである日月までいけるっていう計画が浮上して・・・」
一方、エーキル伯爵は部屋に篭り資料を漁り人工妖精の論文を書いていた。まるで人が違うように。
「ハハハ・・・!そうか、そういうことだ!やはり俺の見立ては間違っていなかった!古代魔術師達の記録、人工妖精、古代魔法の喪失、ウェスターの調べていた古代文明の魔法!全てつながったぞ!遂に私の推論が確信になった!学会の老人どもが!ザマァないぜ!ハハハハハ!」
人工妖精はやはり主人に従順になる為に創り出された訳じゃない!そんなものはただの制御用に過ぎない!
人工妖精そのものが古代文明の魔法と技術全てを注ぎ込んで作成された一種の記録装置!アルウァドラはその記録装置の解放を手助けする術式に他ならない!
「いやまてよ?だとしたら、人工妖精の拘束制御術式を全て解放したら、どうなる?」
エーキルの頭によぎったのは、古代文明崩壊のイメージ。なぜ滅びたのか。それは人工妖精も原因があるとする説は前からあった。だが拘束制御術式は簡単には外せない。それこそ、人工妖精を創り出したオリジナルの存在があるはずだ。
人工妖精自体のコストは物凄く高い。だがそんな代物を量産する意味はあったのだろうか?たかがそんなことで古代文明が崩壊するわけがない。
「違う・・・。俺の見立て通りじゃないぜコレ」
人工妖精は確かに記録装置だ。だが仮にその記録装置がその魔法を発揮できるとして、拘束制御術式をかける意味が分からない。
使える魔法は雷ならその一属性のみ。普通のタイプでも古代魔法は膨大な魔力を必要とするから、仮に使えても数える程度だ。従順に創り出したのも、オマケではないとすると怪しいな。
レムレムの魔法は、文献にあった古代魔法に似ていた。だが恐らくそれは少ない魔力でも使える独自のイメージに過ぎない。
何のために記録装置とされ、何のために従順に創り出されたか、まだまだ調べることが山積みだ。
学会の老人どもを黙らせるのは、また別の機会にするか。間違った論文を出しても、恥をかくだけだしな。
そういや恥をかくといえば・・・あ。
「爺さん。アンタの説、もしかしたら・・・」
次の投稿は4月3日を予定しています!
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