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天国から追い出されて不老不死  作者: ラムネ便
人工妖精の力
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レムレム教育

 

「は、はい、はいと?」


「違う違う。ハインドだよ。ハ・イ・ン・ド」


「はんとい!」


「ご主人・・・」


「マグノリア。諦めるな」


 話は数時間ほど前に遡る。

 帰ってきてからコレンに反乱軍と共闘したこと等を全て話し、エヴィロイドの解放に成功したことを伝えた俺はついでにウェスター伯爵にも報告しようとした。

 しかしロアによると伯爵はジュリアさんと一緒にユーロンで行われている学会の論文発表に行ってしまったらしい。


 仕方なく一度自分の部屋に帰って一休みした後、エヴィロイドの国交締結の打診の為に一度王都へ73式小型トラックで向かい、城にある外交室と呼ばれる外交関係の全てを担うところへ行った。

 というか、外交室でエヴィロイドの話をしていたらアルス王が通りかかり連行された挙句、二人きりで事情聴取。


 仕方なく王に全てを話した結果、誰にもバレてないということでお咎めは無し。ただし、バレてしまった場合を考慮して行動をしろと注意を受けた。王曰く、自分も昔は同じようなことをしていたので分からなくはないらしい。

 エヴィロイドの国交締結には、前向きに考えると言われたので大丈夫だと信じよう。


 で、王都から再び屋敷に帰ってきて昼食を食べている時にエーキル伯爵からウェスター伯爵に任されたという伝言が伝えられた。


 それはレムレムを頼む、とのことだった。


 学会にレムレムを連れて行かせるのは、どうも不安が積もるということで、エーキル伯爵や使用人に任せて屋敷に残した。

 ウェスター伯爵が行ってしまった時には永久の別れのような名シーンがあったらしく、最近はずっとウェスター伯爵の部屋にあるベッドで一人で寝ていて、誰とも話していないという。


 食事はしているが、遊び相手がいないのでつまらなかったのだろう。ある意味で生みの親であるエーキルも心配してしまうほど、テンションが下がっていた。


「ご主人!労働環境の改善を要求します!賃上げだよ賃上げ!」


「春闘にはまだ早いぞ。賃上げつったって何をどう上げる気だ?」


「武器の新調!」


「武器ならICBMだろうが戦車だろうが希望してくれれば何だってやるし、いつだって修理してやるよ」


「え、じゃあ意味ないじゃん」


「意味ないっておま・・・」


「せめて教育方針くらい決めないと。ご主人」


 教育方針か。そういやマグノリアを教育した時も決めてたな。ボクっ娘とか火力馬鹿とか色気とか何か沢山。

 ただ一般常識を教えても微妙だし、人格形成と一緒にやらせた方が覚えもいい。だけど勝手にやったら伯爵とジュリアさんに怒られそうだしなぁ。


 いや、まあ何となく考えてはいるんだよ。ただマグノリアの時と同じで、人工妖精の学習能力はあり得ないほど高い。丸一日かけてやればマグノリアのようにボクっ娘で火力馬鹿で、色気あって俺に一途にさせることも可能だ。

 だがそんなことをした暁には伯爵に怒られるなんてレベルで済まない。


 ならば仕方ない。口実を作るしかない。


「マグノリア。レムレムに聞いてみてくれ。ジュリアさんや伯爵を守りたいかって」


「分かった。レムレムちゃん。ジュリアさんを守りたい?」


「じゅりあさん?ママ?」


「そうだよ。ママを守りたいよね?」


「何から?」


「例えば、ママを泣かせる悪い人だよ」


「ママ、泣かせる人、ダメ」


「でしょ?」


「ママ、守りたい」


「ご主人。誘導完了したよ」


「ご苦労」


 口実は作った。あとは教えるだけだ。


「まずは魔法のイメージから頑張ろうね」


 こんな感じで俺はレムレムに技やそのイメージを教え始めた。同じ雷属性だけあって俺が教えた技はかなり理解できるらしく、その上に人工妖精由来の学習能力の高さがきてるので教えるのに苦労することはなかった。

 小学生レベルから高校生レベルまで、俺が理解できている分野のみになってしまうが一般常識も教えた。社会のルールも教えて言葉遣いも直した。


 途中、人工妖精の研究の為にエーキル伯爵がマグノリアの様子を見たいということで、グラウンドで召喚した雑魚モンスター相手に攻撃させていた。取り敢えず言えるのは、グラウンドに鉛玉が大量に散らばって消えたのはいいが、地面が穴だらけになった、ということだけか。


 夕食を食べてからもレムレムの勉強は終わらず、逆にヒートアップした。寝た時は22時を超えていた。人工妖精といえども体力には限りがある。夢中になるのもいいが、寝る時は寝ないと。


「ご主人。大丈夫?」


「何だ、アレだ」


「アレ?」


「・・・」


「ご主人寝ちゃった。ボクも眠たくなってきたし・・・誰も見てないよね?」


 そっとハインドの頰にキスをしたマグノリアは、自分のベッドに戻って顔を赤くしながら寝た。


 しかし翌日、朝日を浴びて起きたハインドは何となく覚えていた。人工妖精であり、教え子のような存在であるマグノリアにこんなことをされるのは初めての経験。ハインドにとってもにやけてしまうほど嬉しかった。

 そこに扉を派手に開けて来たのは、昨日まで勉強をしていたレムレム。


「先生!今日もご指導の程、よろしくお願いします!特に聞きたいのは、私の使う技の集大成であるとしている、あの流派についてなんですが」


「ああ。ニチアサ中真拳か。分かっている。直ぐに教えよう」


「よろしくお願いします!」


 レムレムは失礼しました、と言って静かに扉を閉めて出ていった。あんな風になっている時点で、もう怒られることは必須だが、ここまで来てしまってはもう手遅れだ。やれるところまでやってやるさ。

 ただ、マグノリアが俺を見てボーッとしているのを見ているので言っておいた。


「安心しろマグノリア。俺もお前が大好きだ」


「ひっ⁈」


 あ、気絶した。別に俺だって友人としてかと言われると微妙なところなんだが、一途に恋するような性格にしたからな。そこの責任は取ろう。

 その後、食堂で朝食を食べた俺はレムレムにグラウンドに行くよう命じて、気絶したままのマグノリアにはユアンさんに頼んサンドイッチとオレンジジュースを部屋に置いといた。


 グラウンドには護身術を練習している使用人がおり、その中に朝食の時に呼び出したエーキル伯爵もいた。


「エーキル伯爵。今回はよろしくお願いします」


「いえいえ。人工妖精の生態をこの目で見ることなど、そうありませんから。ところで昨日頼まれました、アルウァドラについて資料の中から判明しました」


「で?アルウァドラとは?」


「人工妖精に搭載された拘束制御術式です。これを解除することにより、人工妖精本来の力が出せるかと」


「つまり、今まではセーブされていると?」


「そういうことになります。それと、このアルウァドラについては、妖精が本能から解除が可能なようです」


「ピンチの時とかに発動するのか」


「そのようなイメージでよろしいかと」


 中々面白そうだな。待てよ?だとしたらあの初めてマグノリアが戦った時、何でアルウァドラは発動しなかったんだ?マグノリアが起きたら、あの時のことを聞いておくか。


「よし。じゃあやるかね。全員!注目!」


 使用人達が一斉に俺の方に向いて、話を聞く態勢になったところで俺は本題に入る。


「これより!人工妖精のレムレムと模擬戦闘を行う!レムレムの練習だから本気ではやるなよ!やりたいやつは前に出て来てくれ!」


 15人ほどが前に出てきて、目の前のレムレムを見て大丈夫なのかなとボソボソと話し始める。人工妖精を甘く見るなよ。まあ伯爵のだから怪我をしない程度でやらせるけどな。


「よし。他にレムレムの練習に付き合ってくれる奴はいないな?では始める!」


 一人の使用人のみ前に残り、レムレムと向かい合う。レムレムは謎の構えを出して、手から雷を発生させる。


「超電磁!ストリーム!」


 使用人は瞬時に風属性のシールド魔法を展開。何とか防いだが、そこには電車跡が残った。

 レムレムの技自体は防がれたが、それは並のシールド魔法では押し出されてしまうほどの威力を持っている。だが重要なのはそこではない。


「ああ。ちなみに今の超電磁ストリームは、レムレムの使う技の中でも一番弱い技だ」


 それを聞いた使用人は冷や汗をかき始める。


「練習相手、ありがとうございます!」


「え?あ、はあ」


 しっかりと頭を下げて礼を言うレムレム。だが志願しているしていないに関係なく、使用人は全員こう思った。


 敵に回したくない!と。

次の投稿は3月31日を予定しています!

いつも沢山のPV・ユニークをありがとうございます!

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