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天国から追い出されて不老不死  作者: ラムネ便
雷魔法と不老不死
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草原を駆けるトラック

 草原を颯爽と走る一つの影。その影は普通の人間とは全く違う速さで巨大な影を追いかけている。


「こんのぉ!止まりなさいよ!」

「ブモォォォ!」


 猪らしき魔物を弓矢で攻撃していく女性は追いかけるのを一度やめて弓を引き詠唱を始めた。


『我が矢は炎の矢。獲物は絶対逃がさない!ホーミングフレイム!』


 火属性の魔力を纏った矢は走る猪らしき魔物へと一直線に向かっていく。その矢は猪の背中にクリーンヒットした。

 しかし毛皮は一切燃えずそれどころか炎魔法が鎮静化されてしまった。


「嘘⁈あれ『水猪』なの⁈かなりのレアものじゃない!他のハンターに横取りされる前に仕留めないと!」


 女性は再び水猪を追いかけ始める。

 水猪自身は火属性の魔法によるダメージよりも今まで撃たれてきた矢のダメージが蓄積していた。それでも同じ生物。走り逃げる。

 だがそれは叶わなかった。謎の男が変な乗り物に乗り自分目掛けて何かを放った。それは魔法でも弓矢でもない金属の破片。

 水猪は脳天を撃ち抜かれてその場に倒れた。


「お。でっかい猪だな。つかこれ食えんのかな」

「ちょっと!横取りしないでよ!それは私の水猪なのよ!」


 女性は水猪を仕留めた男の前に走って抗議する。


「うん?ごめん聞こえなかった。もう一回」

「それは!私の!獲物なの!」


 女性は男にイライラしていた。

 ぼさっとした髪型にいかにも誰かをいつも騙していそうな若いキザな悪人顔。

 しかも変な革の装備に身を包み股下には召喚獣でもテイムした獣でもない変な乗り物に乗っている。

 腰には弓矢でもボウガンでもない魔術大砲を思い切り小さくしたような筒をさしている。

 どう見ても怪しい。辺境の国の人間とは思えない。


「あー君のだったのか。ごめんごめん」

「ふん!分かればいいのよ!」

「じゃあ譲る代わりに聞きたい事があるんだ。この辺に国とか無いかな?」

「アンタ・・・別大陸の人間?」

「まあそんなところかな」


 一瞬女性は考えた。レアな水猪をあっさり渡して貰い見返りとして何を言われるかと思えば近くの国を教えてくれという。

 あまりにも見返りが安すぎるが別大陸の人間というのだからおかしくはない。


「そうね。私が滞在している『アルス王国』が近くにあるわ」

「お、ありがとう。ところで行き方分かる?」

「ええ。案内してあげましょうか?」

「お願いします!」


 男は変な乗り物から降りると服を少し直して自己紹介を始めた。


「俺はすぎ・・・ハインド。ハインド,ウォッカだ。君は?」

「私はアリス。アリス・クランシーよ」


 ハインド・ウォッカとは杉田が考えたこの世界での名前だ。いくらなんでも同じ名前で活動するのはつまらないので名前的に好きな酒と好きなロシア軍のヘリからとった。


「ところでその猪どうすんの?」

「ここで解体するのよ。まあ本当ならアイテムボックスがあるのだけれど今日は忘れてしまったし仕方ないわ」

「アイテムボックス?」

「アイテムボックスっていうのはハンターランクD以上に給付される魔法の鞄よ。ランクが上がるごとにアイテムボックスがグレードアップしてくのよ」


 アリスが水猪を解体しようとするとハインドはいつの間にか巨大な馬車のような乗り物を出していた。

 実はハインドはアリスに会うまで二日間バイクで走っており、その間猪や鳥を仕留めて生成した軍用ジッポライターで火をつけ、丸焼きにして満腹になるまで食べ続けていた。

 故に現在、彼の魔力は完全回復。

 大型車両を生成することなど造作もない。ただし頭痛は毎回くるので覚悟しなければならない。


「何よそれ?新しい馬車?馬がいないじゃない」

「まあね。それよりほら。その猪乗っけるから手伝って」

「仕方ないわね・・・」


 ハインドが出したのは73式小型トラック。

 73式とはいっても制式化から除外された最新型の車両の方で1/2tトラックと呼称されているAT車。

 KLX同様に民間車両がベースといえども軍用なので、ところどころ出力が大きい。

 あと大人の事情により本来から邪魔なエアコンを廃止するはずがバリバリ付けてある。エアコンが無いモデルが自衛隊に納入し始めているが、科学が発達していないこの世界ではとても貴重なものである。

 ちなみにハインドは4分間の頭痛の間に後部座席に猪を入れてもらっている。


「入れたわよ。どうすんの?」

「痛ぇ・・・ふう。終わった・・・」

「ちょっと!聞いてんの?」

「ん?ああ。じゃあ俺の隣に乗ってくれ」

「はいはい」


 アリスが装備品を猪の上に置いてドアを閉め、ハインドの隣にきた。


「ここからはどんなルートで?」

「このまま直進。歩いて一時間だからそう距離は無いはずよ」

「ありがとうっねっと」


 アリスから見えない位置でバイクを魔力化するとシフトレバーを動かしてアクセルを踏んだ。


「凄い・・・馬車がひとりでに動いてる」

「馬車より早いと思うけどな!」


 アクセルを踏みぬき時速100kmまで加速するハインド。

 そんなに悪路ではない草原を走り人の歩く道を見つけてからは更に速くなる。

 歩いて王都に帰ろうとしている連中を追い抜き物資を輸送している馬車を出し抜いて漸く到着したのは大きい壁と橋と扉。アリスはトラックから降りて近くの兵士と何やら話し戻ってくる。


「ギルド前の広場なら空いてるらしいわ」

「入っていいのか?」

「ええ。話はつけてあげたから感謝しなさいよ」


 扉が開きトラックを進めていくと近くに馬車を停める為のターミナルみたいな広場へと兵士に誘導され巨大な建物の側についた。

 アリスは後部座席から水猪を取り出すと建物の中に入って行く。

 ハインドがエンジンキーを抜いてアリスの後を追いかけていくと、そこには様々な人種が集まった酒場のような景色が広がっていた。


「おう。アリスちゃんじゃないか。依頼は?」

「こなしてきたわよ。あとあの猪。普通のじゃなくて水猪だったわ」

「み、水猪⁈変異種かよ!」

「さすがはC級期待のハンターね。飛び級でA級になればいいのに」

「やめてくださいミネさん。あとあの男。ハインドって言うらしいんだけどハンター登録お願い出来るかしら?」


 ミネというギルド受付の女性はハインドを呼んでハンター登録させた。

 彼はこの国の言語を知らない・・・はずだったが何故か書けていた。さりげなく名前欄にウォッカ・ハインドと異世界の言葉で書いた時には無意識だったので気づいたのはかなり後である。


「ではハインドさん。ギルドの説明を致しますので分からない箇所があったら遠慮なく質問してくださいね」


 ミネは笑顔でそういうと説明を始めた。


「ハンターランクは下から順にFランク、EランクDランクCランクAランクSランクEXランクに分かれています。EX以外で昇級したい場合は各ランク毎月2度試験が行われていますので奮って参加してくださいね」

「あの・・・EXランクっていうのは?」

「EXランクというのはランクを付けるのが馬鹿馬鹿しくなる人達のことです。弱いとかじゃないんですよ?」

「じゃあ何が基準に?」

「今までいないので前例はないのですが・・・そうですね。ギルドの例にならうなら不老不死とかですね」


 ハインドは一緒硬直した。質問が出せなくなり言ってることもあやふやになり始める。


「どうしました?具合でも悪くなりましたか?」

「い、いや?別に問題なんて?僕は病気になんかならない不老不死ですから・・・あ」

「・・・フフッ」


 ミネはその言葉を聞いて不敵な笑みと共に登録用紙にEX-Fと書いた。


「貴方のランクは一応Fランクからです。まあEXランクの人がこの世に存在するなんて思いもしませんでしたよ。これはギルドが占有するしかありませんねぇ」

「いや今の嘘ですから!違いますから!」

「残念でしたねぇ。わたくし、実は過去に敵兵士の尋問とかもしていましてね?魔法で心拍数を測って嘘ついてるのか真実を知っているのかすぐ分かっちゃうんですよ」


 不老不死の男、ウォッカ・ハインドはいきなりやらかしてしまった。しかも尋問に詳しい女性ギルド受付嬢に。


いつもPV・ユニーク、ありがとうございます!

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