火力を揃えろ! 1
屋敷に到着した俺は、トラックを魔力化するのも面倒になったので屋敷敷地内の何もない場所に入れておくことにした。魔力化してもいいんだけど、ワザワザやらなければならない訳でもない。出しておいた方が後々使いやすい。
扉を開き、使用人と一緒にロビーへ入る。いつも見る正面に飾られている時計は10時34分を示していた。時間的には問題ないな。
部屋に戻り一息ついた俺は、仮面屋に連れて行かなかったせいでふて寝しているマグノリアを宥め、食堂で甘いクッキーでも作って貰えるよう頼んでやる約束を取り付けられた上で仲直りした。
「鑑定スキル起動!」
アップデートが終わった鑑定スキルを開き、説明欄を見てから追加されたシステムの自動修理を選択して、早速KLXとレミントンの修理を開始した。所要時間はKLXが2時間。レミントンが15分。
使用魔力量については計算されていたが直ちに影響が出るほどのものではないので、無視した。
その間にやれることと言えば、反乱軍に協力する為に必要な武器の調達だな。
まず何と言っても必要なのはスナイパーライフルだろう。長距離からの射撃に優れ、その初速も洒落にならない。
ただ俺が今使える銃は、ショットガン・リボルバー・サブマシンガンに限られている。スナイパーライフル自体を使ったことはない。
マグノリアにアサルトライフルやスナイパーライフルの使い方を教えたのは確かに俺だ。
しかしあいつは別次元の『ゲート』を通して使ってる。原理はよく分からないが、俺の魔力と完全に同じものが妖精にあると、ああなるみたいだ。
それでいて火器を手を使わず反動無しで使用可能。挙句には複数の火器を完全に使いこなせる。備品は生成出来ないが、俺を通しての武器の供与はできる。
どこの世界の慢心王だよ。サーヴ◯ントじゃねぇんだから。
「でもなぁ。新しい武器をポンポン出すもんじゃないと思うんだよなぁ。浮気は考えもんだし」
レーゲンベルグはマグノリアの件でかなり使えることが分かっている。弱点と言えば、充電の時間がどうしても掛かってしまう点か。加速器は瞬時に撃てるほど高性能だから問題はない。
改良プランでも作れればいけそうだ。だがレーゲンベルグは水色のタングステン荷電粒子を放つ。
実弾を放つ現代兵器は発見される危険性を考えたとして、敵が得るソースは音・気配・光・発射角となる。音はサプレッサを使えばそれなりに抑えられる。光も消そうと思えば消せる。気配も俺のスキル『抹消迷彩』を使えば隠せる。ただ発射角はバレるだろう。
レーゲンベルグは威力こそ高いが、光や独特の発射音がどうしても隠せない。発射角なんて現代兵器より丸分かりだ。
「そうなると・・・やっぱ現代兵器か。スナイパーライフルといえばSVDとかあるけど・・・いや、俺は古いやつより新しいのを選ぶ!鑑定スキル!スナイパーライフル『L115A3』を生成開始!弾薬は338.ラプアマグナム!あとギリースーツとサプレッサも!」
《生成 開始》
鑑定スキルの文字と共にフリーサイズのギリースーツとサプレッサ、L115A3が光の粒子から出てくる。そしてその隣には悪魔の弾薬、ラプアマグナムが既に生成されている。
5分後、全て生成されたのでL115A3を触ってみたが頭痛は全く来ない。これもやはりあの魔術原基のおかげなんだろうか?まあ今はそういうことにしておこう。
ギリースーツを着て、サプレッサを銃先に装着。そしてラプアマグナムを箱を左手に持ちマグノリアを肩に乗せて伯爵の部屋にいってグラウンドの使用許可を貰いに行く。
途中、ロアとリリスに怪しまれたがマグノリアのおかげで俺ということが証明された。
階段を降りて直ぐの所にある伯爵の部屋。ノックして入ると、頭に包帯を巻いてるにも関わらず作業を進めていた。そこには人工妖精学者のエーキルさんもいて、せっせと論文らしきものを書いている。
「伯爵!怪我は大丈夫なんですか⁈」
「ハインド君。この程度でこの私が作業を止めるわけがないだろう!雷の魔法の研究はまだ始まったばかりなのだからな!」
「急にやり出すんです。そりゃ俺も驚きました。なので俺は心配なので暫く残ることにしました。しかしウェスター・グロムメントってのはこういう男です。気にしないで下さい・・・ってなんという服を着てるんですか公爵様」
「それこそ気にしないで下さい。エーキル伯爵も論文頑張ってください。人工妖精の件は今日話しますから。なら邪魔は出来ませんね。話はまた今度・・・」
「待ちたまえ!今の私は最高にハイになっている!頼み事があるなら今話せ!」
「・・・ウェスター伯爵。一人の公爵と伯爵の間柄として、お願いがあります。自分のスキルを簡易的に使えるようなものを作っていただきたい!」
「ほう・・・?」
俺は奇怪なギリースーツのまま、俺の『たった一人の機甲師団』を無意識下でも使えるような道具を作って貰うよう頼んだ。
この世界にスキルという概念はある。それを無意識下で使うというと難しいかもしれない。ただ、俺が頼んだのは少し特殊で、弾薬補給と修理だけを同時に行えるよう、自動的にするものだ。
最初は無理だと思っていた。だが伯爵の答えは全く違っていた。
「可能だな」
「そうですよね。できませんよね・・・え?できる⁈」
「まあな。そういうのは冒険者学校でスキルの一部のみを使いたいという者の為に補助道具としてよく使われるものだ。仮に解毒と回復のスキルを身につけていたとして、解毒のみ使いたいと思えば解毒だけできるようになったりな」
「術式は簡単ですし、そのスキルの一部を選ぶ権限は装着者にありますからね。魔力の省エネ化にもなりますし。選んでおいて勝手に作動しないよう精密な設定もできますよ」
なんてこった・・・。これは頼むしかないな。
「じゃあお願いします。形は深い緑色のバンダナで、バイアス折りにして、額にあたる部分に無限マークの刺繍をお願いしたいんですが・・・」
「承知した。ではバンダナと刺繍はジュリアに頼んでおこう」
「ありがとうございます。あとグラウンドを使いたいんですが・・・」
「ああいいぞ。時間も良さげだしな」
「ありがとうございます!あとはお願いします」
「ああ。任せておけ」
俺はラプアマグナムとL115A3を握りしめて伯爵の部屋をあとにした。
「・・・良かったな。ウェスター。良き友が出来たじゃないか。昔のお前はもっと暗かった。それこそロアとジュリアがいないと尚更な」
「ふっ。まだまだ私もやれる。友人の一人も作れないようでは未熟者だ」
「そうか。それよりどうするんだ?」
「何がだ?」
「ジュリア。あいつ二人目できてるぞ。お前と同じ魔力だしジュリア自身が不倫するとは思えん。お前にぞっこんで幼馴染だったしな。 その年齢でよくヤれたな」
「・・・」
「そうか・・・一時的に若返りのを使ったか。アレにドラゴンの逆鱗があれば完成するんだがな」
「・・・ロアには黙っておいてくれないか?」
「さて?どうしようかなぁ?ククク・・・」
次の投稿は1月21日を予定しています!
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