任務完了
3トン半トラックが光と共に現れるシーンは、まるで映画の中の話のよう。映画ではないな。本当に魔法だったわ。
生成できたら住民の家財をトラックにドンドン詰め込んでいく。軽い宝石のようなものから怪しげな、トーテムポールみたいなやつまで様々な家財があった。
しかし、最終的には大した量にならなかったので住民達を荷台に乗せて一気に撤収する作戦に変更になった。
帰り途も、行きにバイクで通ったとき、悪路ではなかったので家財が破損する可能性は低いだろう。ジャンプしたのは単に坂を猛スピードでスタントマン並みに使っただけだし。
「それより愛しのKLXがエンジンブローしちまったから修理してやらないとな・・・。シラルでやるか」
「公爵様。今日は頭痛がないのですか?」
「え?あ、ああ。そうだな。今日は大丈夫みたいだな・・・。コレン。住民達を先に荷台に案内してやってくれないか?」
「承知しました!」
そういえば頭痛がない。いつもなら使い方を一気に叩き込まれるから、脳に流れてくる情報が半端なくて数分くらいは立つ事もままならないというのに。
トラックに触れても何も起きない。まさか能力がなくなったのではないかと一瞬不安になったが、運転席に乗っても何ら問題なくエンジンを点火してシフトレバーを扱うことができた。使い方も十分理解している。
それでも気味悪さは取れない。
だって普通そうだろ。今まで鬼軍曹にあらゆる技術を数分単位で叩き込まれてきたようなもんだぜ?
いくら頭痛になれてきたからって頭痛を感じなくなるようじゃ、俺の脳神経と脳細胞も終わったな。
脳神経外科にでも受診しに行くか。この世界にあったなら、の話だが。
「公爵様!住人を全員収容しました!」
「ありがとな。助かった」
「いえ!それが俺の仕事ですから!」
「それにしても、なんかここは蒸すな・・・。伯爵に借りたワイシャツが張り付いてくる」
第3ボタンまで外しシャツを仰いでいると、コレンが固まっていた。あいつは命令を出すまで基本的に動かないが、様子がおかしい。
何かブツブツいいながら身体を見ている。別に俺の体格は何ら変わり映えしない、腹筋も割れてない普通の体のはずなんだが。
ふと腹辺りを見てみると、何か黒い血管のようなものが俺の心臓辺りから派生していくように刺青のような形で発生していた。
長袖のシャツだったので腕を捲くってみると、そこにも血管に沿うように出てきている。腕部に出てきているのは手の甲までで、身体の方は背中あたりまで、きていそうだ。
「なんだこれは・・・」
「呪いの類でしょうか?」
「呪い⁈」
「いえ、俺の推測ですので気になさらず・・・」
「うわぁ。マジでなんなんこれ。伯爵に聞いてみるしかないか・・・」
「そうですね。それにしても、面妖な魔術原基だなぁ・・・」
「魔術原基?」
「魔術原基を存じ上げないのですか?」
「ああ。全く分からん」
「簡潔に説明するとですね、寄生虫みたいなものです」
「寄生虫⁈」
「寄生虫みたいなってだけです。埋め込まれると、宿主の魔力に従って変化していき、最終的には一体化して影響を与えます。本来は恩恵を与えるもののようですが、呪いとして付与される場合しか聞いたことがありません」
「要するに俺は今、呪いに食い殺されている真っ最中ってわけか」
「推測があっていれば、の話ですが」
簡単な呪いなら教会かなんかで某RPGみたいに祓って貰えそうなんだけどな。
だけどこいつは少々厄介そうだし、やっぱここは専門家の有識者会議でも開いた方が良い。この魔術原基が何なのか、調べる必要も出てきたし呪いなら解除したい。
死にはしないが、バッドステータスを負ったまま生活するのだけは勘弁だ。
「ま、何とかなるだろ。とりあえず帰る。そこのドアを開ければ乗れるから」
コレンと俺はトラックに乗って輸送を開始。トラックに揺られながらの街への帰り道になった。
背後の荷台の中では何やら話し声が聞こえる。世間話か、何の話かは分からないが楽しそうだ。
コレンは隣の助手席でいつの間にか寝ている。
忠犬も寝ればかわいいものだが、その腰に差してあるロングソードだけはどうしても怖い。何せ鞘にも血がついてるのだからな。
「頼もしいというか、怖いというか・・・」
おそらく、ここに来るまで敵を倒しながら来たのだろう。
俺がレイデールを倒してリビングデッドの根元を完全に潰したとはいえ、それ以外のモンスターは普通に襲い掛かる。住民たちを誘導するにはコツもいる。
まあ、どう捻ったところでコレンがどこぞのロボットゲームみたいに敵を無双しながら斬り裂いていくイメージしかないが。
そんなことを考えながら道なりに16分。
街の西門が見えてきた頃、トラックが着くと同時に巨大な扉が開かれた。
瓦礫が片付け終わった兵舎の前にトラックを止めて、荷台のカバーを外し先に住民たちを出す。コレンは寝ていたので寝かせておいて俺は俺で家財の搬出を手伝うことにした。
「軽いものは女子供に運ばせて重いものは男手がやる。運べるもんからガンガン運べ!人のものを盗んだらどうなるか、分かってないわけではないだろうな?」
「大丈夫です!」
「公爵様の前でそんなことは流石に・・・」
「私達はそこまで生活に困ってるわけではないの。そんなことしないわ」
「ならいい。さあ、始めるぞ」
家財を荷台から降ろしていく俺達。
まず軽いものから女子供に広場に運んでいってもらい、監視は兵士長に頼ませるよう命令しておいた。タンスのような重い家財は男5人が運んで安全な場所にまで運び、あとで各々が回収することになっている。
「後ろを持てっつってんだろ!」
「馬鹿!こっちは重いんだよ!下側に寄せろ!」
「馬鹿はお前だ!左だ左!詰まってんだから早く降ろせ!」
「ママー。これは?」
「じゃあそれは兵士さんがいる場所に置いてきてちょうだい?」
「うんー!」
俺が幾つか運搬している間にも住民達は自分で何とか運び出そうと協力している。やはり地域の繋がりほど隣人同士で協力的になれるものはない。
一瞬、部活で荷物の運び出しをしていたことを思い出した。
この後、足首をくじきましたァッ!という住民が出るはずもなく、無事に運び出しは完了した。
「よし!運び出し完了!と、なると・・・任務完了だな!おっと、その前にやることをやらないと」
兵舎までいき、補修できるかどうか調べたが建築に詳しい町長曰く、いっそ建て替えたほうがいいとの結論が出た。結局兵舎に関しては修理は不可能。
よって経年劣化によるリフォーム代ということで領収書を国の会計監査に出すことでケリをつけることにした。
次に武器を貸し出してくれないかと兵士長に提案されたが、流石に扱いを知らない兵士達に銃器を与える訳にはいかないので拒否した。
代わりに通常武器の供与をすることを約束した。ちゃんとした防具や武器を渡さなければ可哀想だからな。
最後に町長の家で飲んだ美味しいコーヒ豆を買いに行ったのだが、リビングデッドと家財の運び出しのお礼ということで5袋ほど貰ってしまった。
ここは貰うことにした。給金もらうの忘れてたからどうせ買えなかったし。
そして帰り際、コーヒ豆を積んだトラックに乗り正門で色々な人達に手を振られながら俺達はシラルの街を後にした。
「いやぁ疲れた!こんなに大変だなってことくらいは分かったし、早く屋敷に帰って寝たい。ゴロゴロしたい」
「ん。ん⁈」
「お、起きたか」
「こ、公爵様!すいません!寝てしまいました!すぐ住民達の家財を・・・」
「もう終わった。色々と終わらせて、今は屋敷への帰り道だ」
「申し訳ありません・・・」
「いいさ。気にすんなって。人間、疲れてる時に起こしても悪いからな」
「本当にそうだぜ。健康管理くらいしっかりしろよ。騎士団長様」
「はっ!次から気をつけ・・・は?誰だお前⁈」
荷台の方からさりげなく聞こえた声。コレンが荷台の覗き窓を見ると、そこには笑いながら酒を飲んでいる青年がいた。
人の顔をしているその頭には、何故か耳がついている。
「お前、獣人族か⁈」
「おうよ!俺の名前はリリス・グィネヴィア!まあ気楽にリリスとでも呼んでくれや。つーわけで騎士団に入れてくれ。ハインド公爵様よぉ」
「よし。許可する」
「公爵様!」
「話が分かって有難いねぇ!迎酒だ!騎士団長も呑むか⁈」
「要らない!」
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