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015 光明と工夫


シャルルの一言が切っ掛けで、俺の実験が再開する。色々な角度とデーターを集めてみると、確かに魔術師で無い者も剣技のスキルは持って居る。俺の周りに居る女神達はヴァジム様が選抜した優秀な女性達なので、魔術も使えるが、興行所に居る低ランカー達の中にもスキル持ちは居た。但し、彼等は魔術は発動しない。オマケにライラやクレオの様な魔術に長けた者でもスキル発動で魔術が上乗せされるケースは少ない事が過去の訓練でも実証されている。


「後は、何色に染めて実験を重ねるかですね」

「いや、それだけでなく、腕自体も更なる鍛錬が必要なのでは?」

「エイジス様なら、それは問題ないでしょう」

「魔石をどんな形で、どう持つかも考えなくては!」


「属性なんだけど、俺って全属性持ちなんだよな!?だったら、中身より濃さが重要じゃないか?」


「なるほど、それもアリな考え方です。因みに人口魔石の純度を上げる方法は既に調べてあります。魔力を注いだ精純水と供に空石に熱を加えて行く事で良いそうです。一旦熱を加え、自然と冷ます事で、より多くの魔素が空石に染込むと過去の研究者が文献を残し、実証されています。但し、落とし穴も在りました。有用期間が更に短いと言う事です」


「短いのか……先ずは、俺にスキルが発動するかが先だな」


この数日間、女性陣に魔石つくりを任せ俺はヴァジム様の下で、武術の基礎を叩き込んで貰っていた。それなりにお墨付きを貰ったが、やはり剣技のスキルは発動しなかった。ここで、俺の魔素不足の可能性が高くなる訳だが、其れを補う事が魔石で出来るかが、今日の最終実験だ。これで失敗すれば、当面実験は延期しなければ成らない。『陽の刻大会』の開催が迫ってきたからだ。


「じゃ~取り合えず、首から紐でブラ下げて行う実験から行うぞ」


スキルは相手が居なくても技を繰り出していけば、自然と発動体勢が整うらしい。だから、俺は運動場で1人皆の前で剣舞を披露し始める。


「綺麗!」

「うん。正に舞いだな」

「やっぱり、エイジス様は御強いわね」

「あの動き、滑らかさ……真似できないな」

「はぁ~溜息しかでないわ」

「兄貴……惚れ直したぜぇ」

「むむ。中々の舞じゃな」


周囲の声が聞こえなくなるほど、俺の中でも気持ちが昂ぶって来た。久し振りに広々とした場所で、独り剣を振り回すのも気持ちが良い物だ。流れる汗が気持ちイイと感じたのは何時以来だろう。


観客と俺自身が満足する剣舞を行ったが、結局スキルは発動しなかった。実験は失敗した。それでも女性陣からは善かった・綺麗だった・惚れ直したと、声を掛けてもらう。落ち込まないように気を使わせたなと俺は考えてしまう。実験が終わり固唾家に入ろうとした時、一本の剣が運動に投げ込まれてきた。柄に穴が開いた独特の形をした剣だ。と同時に以前見かけた青い羽の鳥が舞込んで来る。


「エイジス!それアリッサからの剣よ。魔石を填め込めって指示が書いてるわ」


ヘレンが小鳥から届いた手紙を握ったまま俺に向って叫ぶ。運動場に突き刺さった剣を抜き取り、柄の部分の開いた穴を見つめる。腰に下げたナイフを取り出し首から下げていた魔石を穴の形に合わせ巧い具合にカチっと填め込んで見る。


『コレで駄目だったら……諦めよう』心で呟きながら俺は深呼吸を繰り返し、心を静める。そして、ゆっくりと右足を引き払いながら、腰を沈め一気に息を吐いた。


『ハッ!トゥー。ヤァー!!』掛け声を重ね、剣を振りかざし、飛び跳ねながら左右に動き回る。剣と交互に蹴りやパンチを繰り出しながら、動きは次第に加速を増し、やがて一つの舞が形づく。

 片付を始めていた面々も俺の新たな試みに脚を止め再び運動場の周りに集まりだす。俺は、先ほどの剣舞よりも注意を払いながら、力を込める。一振り一振りにキレが伝わるように!慣性で剣先がズレ無い様に注意を払う。一つ一つの動きに無駄を無くし流れを止めず、繋がるように動き続ける。


「さっきより綺麗」

「キレが一段違うな」

「息を呑むとは、この事なのか」

「凄い」

「……」


『タァー!』絶頂を迎えた瞬間。俺は、力を放つかのように声を張り上げ、剣先を正面に突き出した。すると視線上の先、運動場の柵を越えた所に生えていた大木が『バキッ!ズゴッ!!』と轟音と供に穴が開いてしまった。


「「「うぉー!」」」

「すげぇ~兄貴!!」

「恐るべし破壊力」


幹廻りが大人の両手で囲んでも届かない程の太さの大木に、人の頭程の穴が貫通している。外で見ていた連中も流石に驚いて、大木を囲み始めていく。


「仮説は取り合えず、実証されましたね。成功おめでとう御座います」


シャルルが真っ先に俺に賛辞を述べてくれた。続けて女性陣も、俺を囲い皆笑顔を向けてくれる。


「今回もアリッサに良い所を持って行かれたわ。エイジスおめでとう。……でも凄い破壊力ね。貴方の体は大丈夫なの!?」


ヘレンが、驚きと喜びが入り混じる顔をしながら、声を掛けてくれた。


「あぁ~今回も彼女のお蔭だ。体も全然問題なさそうだ」


幾つかの問題点と改良点は山済みだが、俺でもスキルが使える事が判り安堵する。

後は任せてくれとシャルロットが胸を叩き、この先の改良は彼女に託した。

 俺達は、差し迫った『陽の刻大会』に向け最終調整の訓練を再開する事にした。

とりあえず、今夜は後片付けも早々に、集まった皆で祝いの席を設ける事になる。



「アレから判った事を報告します」


数日後、予想より早い段階で、シャルルが俺とヘレンを前に人口魔石とスキルについて報告をしてきた。


「スキル発動は、武術の鍛錬に左右される。その動きに魔素が反応しスキルが発動すると考えるのが望ましい」

「魔素とスキルの関係性について、過去の例に炎の刃、凍てつく突き、雷の拳と云った属性に大きく関わるスキルが存在した。と同時に魔素の属性に問わないスキルは多数存在している」

「魔石の強度と純度について、純度を上げる方法は先日報告した通りである。強度に関しては調査中。但し、空石に変わる鉱石が存在したと文献に記載アリ」


「と云った具合です。ですから、空石に変わる鉱石を探す事と併用し、今のままで人口魔石を作っていけば、エイジス様はスキルを使うことは可能でしょう。凡庸のスキルだけを使うならば、属性を考えずに人口魔石を作れば良いと思います。此処には魔力に長けた女性達が多く居ます。皆の力を集めれば、独り独りの負担が減り、製作も容易になるでしょう。有用時間の短さは、それで解消出来ます」


とシャルルが報告を纏め、俺達に方を見詰直す。


「それって、属性専用のスキルが存在するって事と耐久性の在る鉱石が過去には在った。そして、凡庸スキルだけならみんなの力を借りれば、容易に人口魔石は作れるって事で良いのかな?」


「ハイ。そうです」


「じゃ~私の方は剣の他にも武器を用意すれば良いのね。ソッチはアリッサに連絡を入れておくわ。彼女の事だから、既に製作に走ってると思うけど」


ヘレンが苦虫を浮かべながら俺に伝える。


「俺の方は、もっと武術の腕を上げるって事か」


「「ですね」」


お目付け役二人が揃って、首を縦に振った。




陽の刻大会を再来週に迎えた頃、ヴァジム邸に三度俺達は脚を運んでいた。


「ヴァジム様。今日の集まりは何でしょう?」


「完成お披露目会じゃ」


目を爛々と輝かせて老人は、歳を忘れて息を弾ませている。なるほど!爺の興奮度の理由を察知して、俺の鼓動も上がる。


「出来ましたか」


「うむ。金を出したのはワシなのに奴等は見せもせぬのじゃ!せめて、お主と同席なら。と、許可を貰えてのぉ~こうして呼付けた。序に、当方で着る予定の娘達も一緒じゃ。当然デザイン等はソッチとは変えて居るから安心してくれ。総勢七人のお披露目だからの~楽しみじゃわい」


爺が嬉しそうに俺に報告する。つまり、爺の興行所『ヴァジム』から覆面闘獣士は女性三人組が出場するらしい。


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