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014 出会いと閃き


女性陣が週毎に代わる代わる俺の宿舎に通いだして約2ヶ月が過ぎた。最初は興行所内で騒ぎが起こって居たが、ヘレンの『鶴の一声』で騒ぎは収拾。序に女性陣から不満の声が上がり、常駐だったクレオも入れ替えサイクルに戻される。今日から一週間俺の宿舎には、獣人娘の二人マギーとアデルが泊る事に成っていた。アデルはイヌ科の娘である。戦い方はオーソドックな剣で正面からの正攻法。対してマギーは、身軽な動きを生かした戦法だ。どちらかと言えば四人の中で尤も俺の戦い方と似ていると言えるだろう。但しマギーは俺と比べて体重が軽い。必然的に手数が多い訳だが、彼女もまた『剣技』を持って居る。その差が俺達の体重差を埋め、今の所攻撃力は彼女の方が高いと言えるだろう。


「やっぱり!エイジスと居ると、どの娘もスキル発動率が高いわね」


「ええ。明らかに魔素に何らかの影響は与えているのでしょう。試しに彼女達にソロで試してみると明らかに攻撃力は普通でした。エイジス様の影響は確実です」


ヘレンとシャルロットが俺達の訓練風景を観ながら、分析を進める。


「う~ん。良くも悪くもの結果ね。チームとしての戦力が上がるのは良いけれど、コレではどっちが主役か判らなくなるわ。個人としての異世界人がこんな形で、埋もれるとは予想もしなかったわ」


「何か、打開策は無いモノでしょうか?」


「アリッサにも連絡を入れておくわ。貴方も図書館で文献でも調べておいて」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


今日は久し振りの休みだ。正確に言えば、体を動かすのが休みであって、休日ではない。代りに俺は、ヘレンと在る場所へ向かって歩いていた。


「此処よ。広さは約十二Acエーカー判りやすく言えば、ドーム一個分ね。個人経営の興行所で持つには十分の広さだわ」


「おいおい、幾らなんでも広すぎるだろ。これって今の所の1/3って所か?要らないぞぉ~こんな広さ!大体そんな金も用意できないしな。もっと、こぢんまりとした広さで十分じゃ無いか?」


「そう?後から拡張するのって大変よ。今は選手枠は貴方を入れて五人だけど、私とアリッサ・シャルルが加わると八人でしょ。それに使用人が加わると屋敷だけでも、この土地の一/四には成るわよ。これに施設や運動場を考えると、これ位あると丁度良いと思うんだけど」


「どんな豪邸を建てさせる気だ!?それにヘレンは今の家が在るだろ!」


「なら、次を観てみる?」



……何軒か、ヘレンと供に土地を観て回るが、日本育ちの俺にはドレもピンと来ない。正直デカ過ぎるのだ。ウサギ小屋産まれの俺としては、デカイ家広い土地は、遊園地や施設にしか見えない。自分が住む等、想像出来ないのが本音だった。散々歩き廻ると、流石に嫌気と違う疲れが出てしまう。休息にと一軒の茶屋へ立ち寄った帰りに、ふと目に留まる店が在った。


「此処は何の店だ?初めて見る品ばかりだな。石?何かの鉱石かい!?」


「あぁ~これ!魔石よ一応鉱石って部類だけど、これには魔素が込められているの石の色が込められている魔素の元素を示しているわ。ほら、その赤い魔石は、火の魔素が固まって鉱石化したものよ」


「へえ~っで!何に使うんだい?」


「そのままでは使わないわ。貴方みたいな闘獣士や冒険者は武器や防具・アクセサリーに小さな欠片を仕込むの。一種のお守りね」


「なるほどね~」


ヘレンの声に応えながら、何気なくその魔石に触れようとすると、静電気の様な刺激が俺の体を走った。其れを眺めていた店主が驚きながらも感心している。


「ほぉ~珍しいの。お客人もしかして魔素量は如何程じゃ?」


「俺?殆ど空だよ。生活魔法も仕えなくて困ってる次第さ」


「それは誠か!?……変じゃの」


「オヤジさん。それどう云う意味だい?」


「その魔石は、純度の高い奴じゃ。普通のモノが触れても何の反応も示さんし、普通の魔石では、お嬢さんが言った様にお守りにしか使えん。しかし、純度が高い魔石は魔術に長けた者が、己の体内の魔素を増やす為等に使えるのじゃ。因みに高価じゃぞ」


「オヤジ!魔石って自分で探せるのか?」


「ソコまでの純度の高いものは、この国では採れんぞ。但し、精純水に大量の魔素を含ませて空石に染込ませれば、一時的には同等の純度は得られるが、一月足らずも持たずに、魔素が消えて無くなるがの~」


「……じゃ~その精純水と空石ってのは幾ら位するんだ?」


「それじゃったらタライ一杯分と拳大で金貨半分って値かの~」


「オヤジ!今その精純水と空石って在庫あるかい?」


その後、店主に『人口魔石』の造り方を詳しく聞き、宿舎に色々と道具一式を持ち帰った俺は、早速シャルロットに依頼する。彼女は戦闘に参加しない裏方職の割りに魔術師並の魔素を保有していたからだ。


「エイジス様・ヘレン様。コレは何事ですか?」


「まぁまぁイイから。シャルル悪いけど、この桶に魔力を注いでみてくれ」


「遊びに来て見れば、何事ですか……あぁ~人口魔石を作るのですね」


俺が買い物を済ませシャルルにお願い事をしていると、運良く最近仲の良くなったライラとクレオが二人伴って興行所へ顔を出していたのだ。


「おぉ~二人とも丁度良いトコに来たな。悪いけど、二人も少しばかりコレに魔力を注いでくれないか」


そう言って俺は別の桶を彼女達の前へ準備を始める。


「まぁ~我等エルフの流れを汲むものには、造作も無い事だが人口魔石等、使い勝手の悪いモノだぞ!知っておるのか?」


「一ヶ月で注いだ魔素が消えるんだろ!今回は実験だから良いんだ。悪いが頼む」


「実験なら、もっと水量を減らし空石を欠片にしてみたらどうだ?小一時間程で欠片なら魔素が注入されるぞ」



クレオのアドバイスで仕切りなおし、小一時間後に白・黒・赤色に染まった空石の欠片が出来上がった。


「あら、シャルルって赤でしたのね」

「うむ。行動を見れば、それも頷けるだろ」

「あら、普段の仕事捌きを見てたら緑でも可笑しくないわよ」


ライラとクレオの意見が対立しあうが問うのシャルルはそんな事を介さず俺に質問を投げ掛けてきた。


「それで、何の実験を成されるツモリですか!?」


「俺の魔術発動だよ!」


「「「「はぁ~!?」」」


「いや!だから、魔素の少ない俺が、魔石を利用して魔術が使えるかの実験さ」


「……エイジス。それで、店先であんなに真剣に話を聞いてたのね」


「残念ですが、エイジス様。今回の実験は思考の段階で失敗です」

「やはり、魔素関係の知識はお持ちでは無かったですね」

「……だな」


「良いですかエイジス殿。魔術とは魔術士が長い年月で訓練し会得するものです。魔素が多く保有してる者程、資質が在り会得も早いと言われています。元々魔術に必要なモノは『魔素』では無く『魔力』なのです。魔術師とは、体内の魔素を魔力に変える力を会得した上で成り立つのです。私共が人口魔石を作る為に注いだ力は『魔力』ですが、出来上がった石には膨大な『魔素』しか御座いません」


「エイジス私言ったよね!普通の人にはお守り程度だって!!」


「あぁ~……聞いたかな!?」


「大体!何でこんなこと考えたの?」


怒り心頭なヘレンと呆れ顔のライラとクレオを前に俺は恥ずかしさを隠しながら、頭を掻いて応える。


「ほら!訓練中に皆がバシッ!とスキルって言う決め業使うじゃん。俺もアレが出来ないかって考えててさ、そしたらさっきの店で、純度の高い?魔石が『ビリッ!』って反応しただろ!……だからだよ」


俺の言葉に女神達が押し黙った。彼女も俺も俺の力不足を内々に感じていたのかもしれない。沈黙がこの場に漂い始めた。


「魔術でなくスキルなら……」


沈黙を破ったのはシャルルだった。


「古い文献の一文だけですが、スキルは体内の魔素に反応すると記載があります」


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