表彰式?
「そ、そこまで!」
一瞬の静寂の後、最初に声を挙げたのは流石と言えるだろう。キャッチーマンだった。
「武器の使用は大会で禁止されていますので・・・ルドルフ選手の反則負けとし、洋平選手の勝利です!!」
観客達は予想外の出来事に時が止まっている。だがその静寂を破りセリーヌが大きな声を出し拍手をする。
「よくやったのにゃ!」
その拍手に賛同するかのように徐々にではあるが拍手が大きくなり次第に大歓声へと変わる。
「あーやっちまったな・・・」
ルドルフは少し落ち込みながらも封炎剣を手にしている。
「いつの間に封炎剣を?王様の所にあっただろ?」
「俺もわかんねーけど、こいつは呼べば来る気がしてな。まぁあのまま魔術を食らってたら結局負けてただろうし、怪我も無く終われたんだからいいんじゃないか。」
「共鳴ってやつか。アルキュリオスと戦ってた時も勝手に飛んでったからな。当然と言えば当然か。封炎剣もルドルフを持ち主と認めたんじゃないか。」
ルドルフは笑いながら封炎剣を大会の運営の人に渡した。どうやらこのまま表彰式が行われるらしい。俺の本当の戦いはここからだ。ルドルフとの戦いでかなり消耗したがまだまだ魔術は使えるがそれでももう一度ルドルフと同じ戦いは出来ないだろう。本来は少しの休憩を挟むらしいのだが、俺はピンピンしているのでそのまま表彰式が行われる事になった。
「見事な戦いであった。優勝者にはこの封炎剣を授けよう。」
表彰式が始まり、王の大会の感想を長々と述べた後、俺が呼ばれ王の元へ行き、封炎剣を受け取る。
「ありがとうございます。」
「ふむ。実際優勝して見せるとは今大会は過去に例を見ない程高い水準であったにしろ見事である。そなたの活躍はワシの耳にも入ってきておる。旅の風の団の壊滅や魔物と意思を通わせる等、やはり本物の精霊の使いのようだな。」
「それで一つお願いがあるのですが・・・」
「火の試練か?」
「はい。闘技大会で優勝。ギルドに貢献。精霊の使いの願いです。」
「なるほど。そなたの願いはわかった。前向きに検討しよう。何しろ民の命がかかっているのでな。」
「それじゃダメなんだ!今すぐ許可してくれ!」
「何・・・。民の命を預かる身として簡単に許可は出来ないだろう。そなたも賢き者であるから理解は出来ると思うがの?」
「本当に民の命が大事なら許可は出さないだろう?」
「核心を突くな・・・。まぁその通りだ。試練の内容が変わるまで待つがよい。」
「わかった。もう頼まない。勝手にやってやる!」
「王の命に背くとは反逆罪に問われるぞ?」
「もし何か起きても、今この場には民のほとんどが居て最強の戦士達が揃ってるんだぞ。今じゃないとダメなんだ!王は王としての役割を果たせばいい!俺は反逆罪でも構わないから行くぞ?」
「そんな事を言われてただで行かせると思うか?」
「それでこそ王様だ。」
俺と王の間に静かな火花が散っている。俺は観客席に目をやりセリーヌの隣に座っているリンセを見つけ、目と目が合う。そして上を向き、その場に居た準優勝のルドルフを見る。
「洋平・・・。」
「ルドルフ。とりあえずこれやるよ。」
俺は封炎剣をルドルフに手渡す。
「いいのか?」
「あぁ。俺よりルドルフのが使えそうだしな。持ち主が武器を選ぶ事もあるだろうが武器だって持ち主を選びたいだろうさ。」
「ありがとな。」
「じゃあ俺は行くから後で捕まえに来いよ。ルドルフじゃないと俺は捕まらないからな。」
「本気なんだな?」
「あぁ。俺はこの国だけじゃなくこの世界を救う。」
俺とルドルフのやり取りを見て王が痺れを切らしたのか大声を挙げる。
「こやつを捕らえよ!ルドルフ!お前も手伝うんじゃ!」
「んな簡単に捕まってたまるかよ!」
俺はルドルフへと向かい飛び上がり、ルドルフにしか聞こえない声で囁く。
(そのまま俺を蹴り上げろ。)
(了解)
俺はルドルフに蹴られ上空へと舞い上がる。下で王の声が聞こえる。
「ルドルフよくやった。落ちてきた所を逃す出ないぞ!」
俺は蹴り上げられここから落下すると言う地点でリンセに捕まった。
「ナイスキャッチだ!」
「ん!」
「よっし!リンセ!あの山の頂上へ行け!」
「ん!」
リンセはそのまま猛スピードで闘技場を後にした。
「よっへよっへ。」
「どした?」
「ん!」
飛行を続けながらリンセから手紙を受け取る。手紙はセリーヌからだった。手紙でも語尾ににゃーにゃー付いて読みにくいが火の試練について書かれていた。要約すると、火の試練の内容が変わったのは最近の事らしい。家に雪が着く前の時期の事だ。試練の内容としては過去に例を見ないらしい。そして風の試練と土の試練の内容も同時に変わったという。
「なるほど。最近試練の内容が変わったと言うなら、しばらく変わる事は無さそうだな。やっぱやるしか無いな。他の試練も同時に変わったと言うなら何かしらの意思が関わって来るな。雪が降る前ってーとー・・・。アイヴィか・・・。水の試練を俺が解いた時と同じ位か・・・。水の封印が解けて神の封印も弱まって神が試練の内容を変えたって事でファイナルアンサーだな!」
「にゃ!」
リンセの肯定も受けた所でスピードはドンドン上がって行きついに火口へと到着した。




