決勝戦
「皆さん!お待たせ致しました!ついに!ついに闘技大会決勝戦です!」
俺は今ルドルフと舞台の上に立ち大歓声を受けている。
「ミカトレアの王子にして妖精の力までを取り込んだ。我らが英雄ルドルフ!」
「精霊の使いにして、なんとセリーヌ様のお弟子でもある。その力には底が見えない洋平!」
昨日の戦いで俺に対するブーイングはもう無くなっていた。大歓声が二人を包み込む。
「果たして封炎剣はどちらの手に!勝利の女神は一体どちらに微笑むのでしょうか!決勝戦!始め!!」
開始の鐘がなりいよいよ決勝戦が始まった。
「ようやく洋平と戦えるな。」
「いいから早く俺に勝ちを譲ってくれ。」
「全くどこまでいっても洋平は変わらないな。」
「どうゆう意味だよ。」
「準決勝とか洋平の戦いを見てきたが普通にやれば魔術を使えない俺なんか楽勝だろ?」
「あぁ。あれな。実はクリストに結界を無効化する靴を作って貰っててな。隠蔽の効果もついてて普通の人じゃ見破る事は出来ないって訳よ。」
「・・・ずるじゃねぇか。これを言えば俺の勝ちだろ。」
「言わないだろ?」
「まぁ・・・そうだな。」
「ルドルフを信じてなかったらこんな事言わないぞ。」
俺がクリストに頼んでいた物は結界を無効化させる靴だ。これはクリストが作るのに渋っていたが、リンセと一緒にお風呂というのを餌に頑張ってくれた。クリストの力を注ぎ込み普通の隠蔽効果よりはるかに優れている物を作ってくれた。
「今はその靴履いてないから安心しろよ。」
「嘘だろ?」
「どうかなっ!」
俺はルドルフに向けて氷の弾を打ち出す。ルドルフはそれを避けずに右手を前に出してそれを打ち消す。
「なに!?」
「妖精の力を取り込んでから普通の魔術なら使えるようになったのさ。まぁまだまだ練習が足りないし結界の中だからあまりうまく出来ないけどな!」
今度はルドルフも炎を飛ばしてくる。威力はそこまで強く無い。俺はそれを水の弾を打ち、相殺させる。
「まだまだ行くぜ!」
再びルドルフが炎の弾を打ち出し俺がそれを相殺し、小さな爆発が起こりその中からルドルフが飛び出してきた。炎の弾を打ち出すと同時に飛び込んできたようだ。そのまま真っ直ぐ俺に向けて拳を振るう。俺はそれをギリギリで両手でガードしたがその勢いで5メートルほど後ろに下げられる。
「いい戦い方わかってんじゃねーか。」
「もし魔術が使えたらって考えてたからな。洋平が相手だし、楽しくてしょうがねぇ!」
「こっちは楽して勝ちたいだけなんだけどな!」
俺からルドルフに向かって飛び上がり蹴りを放つがそれは片腕で防がれた。そのまま俺の足を掴み宙へと放り投げる。俺は空中で氷の足場を作り再びルドルフへと向かう。
「8連アイスランス!」
空中で氷の槍を8本作り出しルドルフへと放出する。ルドルフはそれを躱し俺へと飛んでくる。空中で二人の拳がぶつかり弾け合う。
「いってぇ・・・やっぱ正面から殴り合うのは厳しいか。」
「俺と互角の力か・・・洋平強くなってるな!だが速さでは負けん!」
ルドルフがギアを一つ上げ物凄い速さで俺へと突っ込んでくる。息をつかせぬ連続攻撃だが、俺はそれを全て防いだ。
「速さではルドルフが勝っても俺には見え見えだ!」
「ならばもっと早くなるぞ!」
ルドルフの体が赤く光り出し、さらに速度が上がる。俺はギリギリで防いではいるが、一撃一撃が重く徐々に押されているのがわかる。俺は一旦距離を取る為に後ろへ飛ぶがすぐにルドルフが飛び込み距離を詰めて来る。
「・・・アイスウォール」
ルドルフと俺の間に氷の分厚い壁を作り距離を取る事に成功する。ルドルフは氷の壁を直ぐに壊しさらに俺へと真っ直ぐ向かって来る。
「ダイダルウェイブ!」
手から放たれた大量の水がルドルフへと迫る。だがルドルフはそれを避けるが水はその勢いのままルドルフを追いかけまわす。
「アイスバレット!」
ルドルフを水が追いかけまわしている時にさらに氷の弾を複数発射する。いくつかは水に飲まれ、水の中を泳ぐ。無数の弾は少しづつではあるがルドルフに命中していく。ルドルフは水を避けながら氷の弾を避けるのに苦労し、こちらへ近づく事が出来ていない。その中でさらに水に呑み込まれた氷の弾が水の勢いを受けて速度を増し、水の中からルドルフの死角からルドルフへと命中する。バランスを崩したのか、ルドルフは立ち止まり残りの水を一気に浴びる事になった。
「そのまま潰れろ!ウォーターロック!」
水を圧縮しルドルフを潰しに行く。俺の精神力を存分に使いどんどん水の面積を小さくしていく。ルドルフは苦しもうともせずに目を閉じ体を小さくしている。
「このまま場外・・・何!うぁっ!!」
俺の魔力を突き破りルドルフが水を霧散させた。
「あぶねーな。俺じゃなかったら死んでるぞ。」
「殺す気でいかねーと負けるからな。」
再び激しい戦いが起こる。俺は魔術でルドルフは肉体で、お互い決定打を与えれないまま時間は過ぎていく。
「ったく。加護者ってのはどうしてこうも強いのかね。俺も加護者に生まれたかったぜ」
「好きでなってる訳じゃないけどな。俺は洋平みたいに魔術が使いたいぜ!」
「こんな結界さえ無ければ楽勝なんだけどな・・・」
「本当に履いてないのか。」
「ルドルフがそれだと納得しないだろ。」
「俺だってあの剣さえあれば洋平なんて真っ二つなんだけどな!」
「剣やるから負けろ!」
「嫌だ!」
「くっそ!ちょこまかと!ブリューナク!進め!!」
会話しながらもお互い戦いの手は休めていない。俺は氷の龍を作り出しルドルフへと向かわせる。だが魔術を作るのに少し手間がかかったのかその隙を逃さずにルドルフが肉薄する。
「そんな大技は隙だらけだぜ!」
「ふっ・・・計算通りだけどな!」
わざと魔術で隙を作りそこにルドルフを飛び込ませる。そして向かって来たルドルフに向けて俺も飛び込みカウンター気味に上へと打ち上げる。だがルドルフは瞬時にガードしていたようだ。
「あっぶな・・・」
「空中なら身動きとれんだろ!食らえ!全弾発射!フルバースト!」
俺の手や周りから龍やら槍やら弾やらカッターが無数飛び出し一直線にルドルフへと向かう。ルドルフは空中では避ける事は適わずそれを全て食らう。
「うぉぉぉぉぉぉ!」
ルドルフが氷の魔術達に囲まれ雄叫びを挙げている。俺はそれを見上げていると瞬時に恐怖に包まれる。今すぐここから離れなければと頭が警告しているが、体が動かない。見上げていた氷の魔術から光が目の前に落ちて来る。
「俺の勝ちだな。」
目の前には封炎剣を俺の首に当てているルドルフの姿があった。
「さすがにそれはずるいだろう・・・」




