洋平VSリンセ
闘技大会6日目。いよいよ今日から本戦が始まる。今日は一回戦と二回戦が行われる。一回戦の相手は・・・
「よっへ!よっへ!」
「お、おう。おはようリンセ。」
「よっへ!たたかう!はやく!」
「まぁ待て待て。俺達は一回戦の一番最後だからまだまだ先だ。」
俺は会場に入り、本戦出場選手だけが入れる観客席に行くとリンセが飛びついてきた。
「よっへ。かつ!ずっといっしょ!」
「あぁ俺も負けないからな。」
「よーへー。正々堂々戦うのにゃ。そして封炎剣を・・・にゃ」
「にしても凄い面子だよな?」
「にゃ。まさかガーディニアとウィルゴーが出て来るとは思わなかったのにゃ。」
「その二人も古代魔術師か。」
「そうにゃ。封炎剣の情報が欲しくて相談に乗ってもらったのにゃ。」
「なるほど。まぁなんとなくわかった。他のSランクの情報は?」
「にゃ?よーへーはリンセに負けるから必要ないにゃ。」
「どんな卑怯な手を使っても勝つからな。」
「それでリンセが納得するならいいのにゃ。」
「むぅ・・・。心が読まれてる気がするのは気のせいか。」
「よーへー対策はばっちりなのにゃ。」
どんどん不安になってくる。その間にも本戦はどんどん進んで行く。ルドルフはミネルバを全く相手にしなかった。一瞬で勝負は着いた。その後も顔見知りの試合は進んで行く。ファングは双剣使いのテイブルが相手だったがテイブルが土魔術で剣を二つ作り上げそれでファングに攻撃していたが、全く効いている様子は無かった。盲目の古代魔術師ガーディニアは結界の中でも不自由せずに魔術を使い勝ち抜いている。セクターは普通に負けていた。相手はドワーフの国、ドルドフスの騎士団の団長だった。さすがはSランク。その後もSランクの人達は順調に勝ち抜いていく。ライラはエルフの剣士に負けてしまった。手刀で風の太刀を打つのはかっこよかった。武器は持ち込み禁止なのだが、みんな武器を魔術で作り出したり、平気で魔術を打つ人ばかりだ。物凄いハイレベルな戦いばかりで俺は目を奪われていた。すると順番が近づいたから控室に入るように声をかけられた。リンセと一緒に控室に入る。控室の中には俺達の前の試合をする二人が居た。どちらもSランクだ。二人で仲良さそうに話をしている。知り合いなのだろうか。南の古代魔術師ウィルゴー。踊り子のキクノス。ウィルゴーはドワーフの男性であり、キクノスは美しい女性である。
「おや、噂をすれば本人の登場のようだ。」
「あら?洋平様ですね。初めましてキクノスと申します。」
「あ、はい。洋平です。」
「ウィルゴーだ。セリーヌ様からお話は聞いている。洋平殿と戦える事を楽しみにしているよ。」
「よろしくお願いします。」
二人と自己紹介を交えながら握手を交わす。
「よっへ!まけない!ずっといっしょ!」
「あぁ・・・」
リンセとも握手をする。
「おや?この子は加護者だな。海神の加護か。なるほど。セリーヌ様の言ってたのはこの子の事か。いやはや。わざわざこの大会に参加した価値があると言う物だな。どちらが勝っても楽しくなりそうだな。」
「あら、ウィルゴー。自分が勝つような事を言ってますけど、私も負けませんよ。」
「あの海神って?」
「セリーヌ様から聞いていないのか?海神ってのは・・・」
そこで前の試合が終わったらしく舞台へと向かって行った。
「続きは次の試合のお楽しみにしておこう。」
俺は頭の中を整理しながら次の試合の為のボディチェックを受ける。リンセはこの時の為にセリーヌに服を買ってもらったようだ。白く、フリルが沢山ついた輝いている服だ。俺もいい服にしてくればいいかなと思いながらボディチェックを終わらせる。
「いよいよだな。」
「ん。」
「頑張ろうな。」
「ん!」
リンセの体が青白く光を放とうとしていた。
「お、お手柔らかにな・・・」
「よっへ。かつ。」
もうお互いに言葉はいらなかった。というか俺からは声をかけれなかった。なぜならリンセの体は完全に青白く光を放っていたからだ。一体どれくらいの時が経っただろう。一瞬のような長い時間を二人隣で過ごし、ついに声がかけられる。遠くでキャッチーマンの声が聞こえる。俺はゆっくりと歩き出した。
「それでは皆さんお待たせしました!予選一回戦最後の戦いとなります!伝説の4勇者セリーヌ様の弟子にして!可愛いは正義!リンセ!!」
会場は激しいリンセコールに包まれる。
「それに対するは、予選200人を一人で一瞬のうちに片づけた驚異の実力者。精霊の使いと言うのは嘘か誠か!それが今明らかに!洋平!!」
会場からブーイングが巻き起こる。あぁそりゃそうなるか。そりゃリンセに賭けるよな。選手紹介で人気が跳ね上がったらしい。今ではサインも求められる程だ。リンセに賭けたお前ら覚悟しろよ。ダークホースになってやる。
リンセと舞台の中央で向き合う。
「それでは本戦一回戦第16試合始め!!」
鐘が鳴り響くと共にお互い一歩も動かず相手の動きを見ている。と思ったらリンセの姿が一瞬ブレた。その影を多いリンセの上段蹴りを左腕でガードする。
「やるな。だが俺も負けないぞ。ウォーターフォール!」
「ん!」
俺は飛びのきリンセに向かって滝を落とす。だがリンセはその滝を登り滝の中から飛び出し攻撃してくる。
「水はリンセの土俵か。だがこれも計算済みさ。アイスフィールド!!」
舞台が氷で覆われる。これでは踏ん張りが効かず力が出せないはずだ。俺は自分の魔力だから力が出る不思議な仕組みだ。
「よっへ!きれい!」
リンセの体の光が強くなり体を包み込む。青白い光がリンセの四肢に爪を宿す。そのまましっかり氷を掴んで俺に向かって来る。
「ひゅう!まだまだ行くぜ!!アイスバレット!拡散!」
俺の両手から100をも超える氷の弾が打ち出される。一撃の威力は低いがこれにはさすがのリンセも速度を落とさざるを得ない。
「そこだ!アイスハンマー!」
巨大な氷のハンマーを作り出しそれを振り抜くと同時に投げ飛ばす。無数の氷の弾に視界を取られているリンセには躱すすべが無く直撃しハンマーと一緒に吹き飛ばされる。リンセは吹き飛ばされつつも爪を舞台に刺しギリギリの所で舞台に残る。
「まぁこれくらいじゃ終わらないよな。アイスバレット!アイスランス!アイスカッター!!」
俺の氷魔術を複数打ち込み対処に困らせる。その間に俺は最後の準備だ。リンセは俺の魔術を避けたり打ち落としたり中々前に出れていない。
「これで終わりだアイスメイク!」
俺は氷で綺麗な球を作り出しリンセから見えるように舞台の外に投げる。球は太陽の光を浴びてキラキラと周りに光を放っている。リンセも例外では無くその球に飛びつこうとした。
「にゃ・・・」
だがリンセは舞台の寸での所で踏みとどまり外へは落ちなかった。
「いったとおり・・・」
「くそっ!セリーヌの入れ知恵か!」
「にゃ!」
リンセはすぐに俺に向き直り飛びかかって来る。ここからが本当の勝負って事か。だが・・・
「にゃ!にゃ!にゃ!」
リンセはツメによる攻撃をしてくるが俺はそれを全て避けている。リンセの攻撃終わりに俺も攻撃しリンセを吹き飛ばすがすぐにリンセは飛びかかって来る。
「まだまだだな。」
「にゃ~~~~~」
リンセの攻撃を全て避け続けて攻撃をし続ける。次第にリンセの動きが鈍くなってくるのがわかる。アルキュリオスと戦っていた時と同じだ。リンセの攻撃は単調過ぎる。俺も相手の動きさえ分かっていればある程度予想して戦う事が出来る。リンセの体から青白い光がついに消えた。
「スタミナ不足だな。これじゃあ一緒に戦うのは無理だな。」
「にゃぁ・・・」
リンセはついにその場にへたり込んで座ってしまった。俺はリンセのスタミナ切れを察し警戒を解き近づいていく。
「リンセ。力の違いはわかっただろう。これ以上リンセを傷つけたくない。」
しゃがみ込みリンセの肩に手を置く。リンセは俺の手を握りかえしながらそっとこちらを向く。目には涙が浮かんでいた。すると突然のキス。俺の思考は一気にショートし何も考えれなくなる。俺の体から力が抜けていく感じがする。この感じはどこかで
「制約の誓いか。あの馬鹿猫。余計な事ばかり教えやがって。こっちから忠誠心をもってしないとダメなんじゃないのか!嘘か・・・ドレインキッスだな。」
リンセは俺から離れ再び青白い光を纏う。
「そうゆう事ならもう容赦はしない。不意をつくと言うのは正々堂々とは言えないだろ。終わりにしよう。アイスプリズンビューティフル!」
リンセを中心に細い氷の柱が何本も現れリンセを球体状の檻に閉じ込める。細い氷の柱は透明度は高く太陽の光を反射しキラキラと輝いている。リンセは攻撃するのを躊躇している。
「その甘さがリンセの弱点だ。」
「ん!」
リンセは意を決し檻に攻撃してみるが傷一つ付かない。その檻は俺の精神力とリンクしていて。俺の精神力がある限りは壊れないようになっている。
「リンセの攻撃じゃ絶対に壊れない。」
「にゃ~~~~」
リンセは檻の中で怒涛の攻撃を繰り出している。俺も余裕ぶってはいるが精神力がガンガン削られているのがわかる。俺は少し焦りながらも余裕をもって檻を担ぎ舞台の外へ放り投げた。檻が舞台の外へ着くと同時にキャッチーマンが声を張り上げる。それと同時に俺は檻を解除する。
「そこまで!洋平選手の勝利です!」
会場から割れんばかりのブーイングが飛び交う。
「てめぇリンセたんに何しやがる!」
「ぶっ殺す!」
「ふざけるな!可愛いは正義が悪に負けるか!」
「お前は悪だ!」
「空気読め!バカ野郎!」
「いくら賭けたと思ってんだ!」
完全に悪者扱いになった俺は舞台から降り、落ち込んでるリンセを抱き上げそそくさと退場する。ブーイングがさらに大きくなっているのは気のせいだろう。俺は見事に一回戦を勝利した。
控室に戻るとセリーヌが待っていた。
「お疲れさまなのにゃ。いい勝負だったのにゃ。これならリンセも文句は言わないのにゃ。」
リンセは俺の手を離れセリーヌの元へと歩いていく。
「後は任せるのにゃ。」
セリーヌは俺が声をかける暇も無くリンセを連れて出て行った。扉の外に出ると大声で泣く声が聞こえた。俺はなんと声をかけていいかわからなくなった。
「あぁ。これで終わりじゃない。難関を一つ突破しただけだ。次の対戦相手はっと・・・」




