問題は山積み
「勝ったのか・・・」
俺はもうすでに起き上がる気力すら起きず倒れてしまっていた。そこへルドルフが来る。
「俺が負けるとでも思ったか?」
「ふ・・・そんな事思ったこともねーよ。」
「だろ?」
ルドルフに手を差し出されそれを掴み引っ張られるように起き上がる。
「っとととと。」
だが体に力が入らずよろめいてしまうがそれをルドルフがしっかりと掴む。
「勝ったんだしっかりしろよ。」
「本当に勝ったんだな。」
「あぁ。」
急に胸に熱いものが込み上げて来る。叫びたい。
「勝ったぞーーーーーーー!!!」
渾身の力を振り絞り声を出す。それに答えるように倒れながらもみんな拳を突き上げる。ロダントとカイネバルにやられそうになった時に助けてくれたリンセ。セリーヌとファングと言う最高の援軍を連れてきたクリスト。もちろんセリーヌとリンセが居なければこの勝利は無かった。だれ一人欠けてはいけない戦いだった。それに最後の一撃を決めたルドルフもまた皆に呼応するかのように拳を突き上げる。辺りはすでに明るみを帯びてきている。するとぞろぞろと警備兵が壊れて粉々になった闘技場に入って来る。
「これは・・・一体何が起こったんだ・・・」
警備兵の隊長らしき者が呟く。
「あーちょっと説明してくるわ。一人で立てるか?」
「あぁ。もう大丈夫だ。頼んだ。」
ルドルフは未だに赤い大きな剣を担いだまま警備兵達の所へ走って行った。俺は全員を起こしながらみんなで集まってルドルフの所へと向かう。
「ああああ!ゴーレムだー!みな戦闘準備!」
また隊長らしき者が叫ぶ。
「よーへー。」
「っと。サンキュ。」
セリーヌからポケットドラゴンを渡されファングの元へ行く。
「おいでファング。」
「オオセノママニ」
ファングはすんなりとポケットドラゴンに入って行った。俺は少しながらも石を出しファングに与えてやる。ファングは嬉しそうに食べ始める。
「だからさっきから説明している通り。ここで魔物が暴れて闘技場を壊したんだって!」
「ルドルフ様の言いたい事はわかりました。ではご一緒に王の元へと参りましょう。」
「ったく!みんなは疲れてるんだ!俺一人で行く!」
「いえ・・・ですがそれは・・・」
「俺も付いてく。」
「じゃあ僕も行くにゃ。」
古代魔術師のクリストとセリーヌが声を挙げた。
「クリスト様まで・・・。それにこちらの方は?」
「貴様!セリーヌ様を知らないと言うのか!伝説の4勇者が一人!セリーヌ様だぞ!お前達が軽々しく話しかけていいお方では無い!控えろ!」
クリストが怒ったように叫ぶ。まぁクリストにとっても師匠のような存在らしいからな。
「それは大変失礼しました!!」
「じゃあ三人で親父の所に行って来る。洋平は宿で休んでろ。」
「あぁそうさせてもらう。」
ルドルフとセリーヌ、クリストは警備兵と共に先に町へと戻って行った。俺はリンセと一緒に町へ戻り以前泊まった最高級ホテル龍の髭へと向かった。値段は高いが何も文句は無い。それほどの高級ホテルなのだから。そのまま倒れるように二人は眠りについた。
「よっへ!よっへ!」
「ん。ん~どした?」
「だれかきた。」
リンセに揺さぶられ眠い目を擦りドアに目をやるとドンドンと叩いている音がする。
「洋平様いらっしゃいませんか!」
俺は寝ぼけたままドアを開ける。
「あぁよかった!王様がお呼びです。すぐにご準備をお願いします!」
「んあ~今何時?」
「何時?」
あぁそういえばこの世界には時間と言う概念が存在しなかったんだ。俺は窓の外を見て太陽の位置を確認する。
「昼か。うっし。すぐ準備する。リンセ行くぞ。」
「ん!」
リンセはすぐに俺の背中に飛び乗ってきた。俺は特に何も準備するような物も無く、すぐにホテルを出た。そのままホテルを出て呼びに来た兵士と共に城を目指す。来た時は疲れて何も感じなかったが。リンセは町に興味深々のようでそわそわしてる。その度に俺はリンセの頭を撫でてやるとおとなしくなった。城へ着きどこへ寄るわけでも無くそのまま謁見の間へと通された。そこにはルドルフ、クリスト、セリーヌの三人が俺達を待っていた。そのまま三人と同じ列に並び。王を見る。
「また会えたな洋平よ。話は三人から聞いた。息子の話だけでは半信半疑だが、古代魔術師の二人も居たのでは信用するしかあるまい。それに伝説の4勇者までお目にかかれるとは。そなたは一体何者なのじゃ。」
「はぁ・・・何者と言われても・・・強いて言うなら精霊の使いでしょうか?」
「ほうほう。やはりそなたは只者では無いようじゃ。三人の話から聞くにそなたは獅子奮迅の活躍をし、吸血鬼王アルキュリオスを倒したと言う事でよいか?」
「自分一人の力で勝った訳ではありません。ここに居るみんなの力が無ければ負けていたでしょう。一人この場には居ませんが・・・」
「はて。もう一人とは?」
「お呼びしても構いませんか?」
「そなたらは国を救ってくれた英雄じゃ。その者にも褒美を与えねばなるまい。」
「ルドルフいいか?」
「まぁ大丈夫だろ。みんな!誰も攻撃するなよ!」
「そうゆう細かいフォローしてくれる所が好きなんだよな。出でよ!大地の力を体現せし者よ!究極召喚!ファング!」
俺のポケットドラゴンからファングが飛び出してくる。周りの兵士達は武器を取ろうとしたが、ルドルフの言葉を思い出し躊躇する。
「王の御前だ。控えろ。」
「オオセノママニ」
俺の言う事を聞いてファングが跪く。その一連の流れを見て王は驚愕の表情を浮かべている。
「魔物を使役出来ると言うのか?」
「かの地では魔物と心を通わせ共に暮らす種族も居ます。」
もちろん出鱈目である。その言葉にクリストもセリーヌもこちらを見る。心が痛い。
「ふむ。よろしい!では、そなたら一人一人に褒美を渡す!何なりと欲しい物を言うがよい!」
「俺は特に何もいらないな。」
ルドルフは軽く答える。
「俺も特に何もいらない。」
「同じくにゃ。」
「ワタシハナニモノゾミマセン」
クリスト、セリーヌ、ファング共に続けて言う。残るはリンセと俺か。
「リンセ。何か欲しい物はあるか?」
「よっへ!ほしい!」
「宝石が欲しいそうです!」
リンセの言葉を脳内で即、誤変換し王に言う。その言葉を聞き逃さなかったのかクリストの視線が突き刺さるほど痛い。
「ふむ。わかった。して洋平は何を望む?」
「えっと。火の試練を受けさせてほしいです。」
「む?」
王の表情が一瞬にして変わる。
「それはならん。民の命がかかっている問題なのでな。いくら民の命を救った英雄と言えども民の命を危険にさらす訳にはいかん。」
「闘技大会で優勝したら許可してくれますか?」
「それならば考えよう。だが闘技場は壊れてしまったし。次の開催はいつになるか・・・」
「じゃあ闘技場の復興をさせてください。」
「しかし英雄にそんな事をさせる訳には・・・」
「自分なら三日で完成させれます!みんなの力は必要だけど。」
「もちろん洋平がやるなら俺もやるぜ。」
「うんうん。」
「にゃ!」
「にゃー!」
「ガンバリマス」
王の顔がますます難しい顔になってくる。火の試練をうけさせてくれと言うのは断られる前提だ。闘技大会で優勝したらと言うのは認めるしかない。闘技場は壊れてしまっているのだから、開催は闘技場が出来てから。俺がこの町に居るなら闘技場を作らなければいいだけの事だ。俺の本当の目的は闘技場を作る事。壊した本人が言うのもなんだが・・・。
「むぅ・・・わかった。そなたたちにお願いするとしよう。だが闘技大会の開催は闘技場が完成してから決める。それでよいな。」
「ははー」
「よろしい!では宴の準備じゃ!」
その日は昼から飲み明かした。美味しい酒に美味しい食事。クリストは疲れたから寝ると言って先に帰ってしまったが。ルドルフは俺の武勇伝をみんなに言って回ってるし。セリーヌは勇者だからと言う事で色んな人の挨拶攻めにあっている。俺はファングの肩の上で誰にも邪魔されずにリンセと美味しい食事を楽しんだ。ファングは魔物だからほとんど人は近づいてこない。好都合だ。それを見てかセリーヌもファングの頭に飛び乗ってきたし、それを見たルドルフも加わった。戦いの疲れもあってか次の日は一日中城の部屋の中で爆睡していた。
「よし。まず問題を一つづつ整理していこう。」
宴が終わった二日後俺、ルドルフ、クリスト、セリーヌ、ファング、リンセの六人はクリストの家に集まって話をしていた色々と問題が山積みなのでそれを解決しなければならない。
「まずはリンセの問題だ。」
「ん!」
「これからリンセをどうするか。それとリンセの家っつーか洞窟なんだけどそこにある魔道具やらなにやらをどうするか」
「俺と一緒に住むってのはどうだ!?」
「やっ!」
クリストの告白は一蹴されてしまった。
「リンセは加護者だからそのままでもいいと思うのにゃ。ただ人から物を盗るのはいけない事なのにゃ。そうゆうことをしっかり教えないといけないのにゃ。」
「じゃあリンセはセリーヌに預けるって事で決定!」
「にゃに!?僕なのかにゃ!」
「アルキュリオスシリーズがあったように、カーテルサン。ラーテンソール。ザザビル。あと毒の短剣グリモアだっけか。どうだ?もしかするとこれ以上があるかもしれんぞ。」
「魅力的な提案にゃが・・・」
「よっへ!よっへ!」
「なんだ?」
「よっへ!すき!いっしょ!」
「どうやらお姫様はよーへーと一緒に居たいみたいなのにゃ。」
「じゃあ俺もお前が好きだ!一緒に暮らそう!」
「クリストちょっと黙ってろ。」
クリストの肩ががっくし落ちる。
「いや。俺はリンセと一緒には行けない。これから先どんな事があるかわからんからな。動きやすい方が色々と便利だ。」
「よっへ・・・きらい?」
「そんなことないぞー。リンセは好きだ。だけど一緒にはいけないんだ。」
リンセの目が滲んでくる。
「大丈夫。闘技場も作らないといけないし、今すぐって訳でも無いからな。」
「にゃ~~~~!!!」
リンセが家から飛び出して行ってしまった。
「リンセ!待てって!」
「しょうがにゃい。僕が行って来るのにゃ。」
「頼む・・・」
セリーヌがリンセの後を追いかけ家から出て行った。
「リンセはセリーヌで決定だな・・・となると次の問題は・・・」
「これか。」
ルドルフが赤く大きな剣を見せる。それをクリストがまじまじを見つめる。
「やっぱりこの剣は封炎剣だな。セリーヌ様とも話したが特徴共に間違いなさそうだ。性能も申し分ないしな。」
「詳しく教えてくれ。俺が見た図鑑には載って無かったぞ。」
「こいつは図鑑に載せれるような代物じゃない。もちろんランクもつけれない。伝説の武器の一つだ。昔のおとぎ話だが。太陽族というのが居てな。その王が家臣に裏切られ殺されたんだ。その時に自らの魂を近くにあった剣に封じ込め。その剣になり裏切りの家臣を倒したと言われている。」
「つまり意思があるって事か?」
「詳しくはわからんがな。その可能性もある。封炎剣の特徴は炎の力を封じ込める事が出来る。それと術者の火の魔術を強化する事が出来るんだ。ルドルフの左手の炎が抑えられてるのも封炎剣の力だろう。」
「今その剣を手放したらどうなる?」
「寝る時に一度外してみたが、左手から溢れて来るような気がするな。帯刀していればその心配は無いのだが。」
「なるほど。つまりその剣を手放さなければ問題は無さそうだな。闘技大会は武器禁止だろ?どうすんだ?」
「その時はまたいつもの封印の小手をして出場する予定だ。」
「左手だけ武装してれば有利じゃないのか?」
「まぁ王子だしな。それくらいはいいだろ。」
「ふむ・・・」
なるほど。封炎剣はランクも想像出来ない程凄い武器のようだ。まったくもってルドルフには勿体ない。だがそれほどの武器なら使い道はいくらでもありそうだな。そして闘技大会・・・
「よし!この剣を闘技大会の優勝賞品にしよう!」
「「えええええええ!!!」」




